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08-7 俺、やまぶきに取り憑かれる

ちょっと強引かな…

 俺と同じ動物型の闇…

 白と茶色の…ウサギの種類がよくわからないけど、下に垂れた耳…ミニロップだったかな?

 そんな形の兎が黒いやまぶきを引き連れ俺の目の前に流れてきた。

 正直魂の匂いがわからなかったら、黒いやまぶきの方が強そうに見える。


 ---お前か?私の体を奪ったのは---


 頭の中に声が響く。

 俺みたいに喋れないのか?それとも俺が特別なのか…

 そんなことはどうでもいい。

 匂いからしてもっと大きな動物だと思っていたのに、あの小さい体の中に大きな闇が詰まっている。

 そう思うと、体が硬直する…

 俺の闇は狼主に切られた。だから俺には切り札がない。

 でも…


 『お前が主浩さんを奪ったのか!子供に変えたのか!』

 ---失礼な、私の肉体、自在に操る、闇なら当たり前---

 ---我主、肉体は衰えていた。それを我主、力で最適な肉体と最適な魂に戻っただけ---


 そう言えばやまぶきも喋れるはずなのに、声は俺の頭の中から…

 闇はこれが普通なのか…

 それより…

 確かに俺が闇の力で俊夫くんを獣人に変えた時も俺は無意識に子供の姿に変えていたのを思い出した。

 やっていることは一緒…

 人の体を改造して操る…

 今までの自分の行為に言葉を失った。


 ---私の肉体を奪った罪、受けてもらう---


 その言葉で黒いやまぶきが俺に向かって炎の球を作って俺に投げかける。

 俺を始末しようとしているらしい。

 気持ちを切り替えることができなくて、反応が遅れた!

 やっと身体が動いたそのとき、俺の目の前に炎の球が広がった。

 

 しまった…逃げられない…


 飲み込まれた…そう思ったとき、それははじけ飛んで火柱を上げて燃え上がる。

 俺はその火柱の中で…あれ?なんともない…

 そのあと何個か投げられた炎の球は、俺がいるところから少し離れた所に着弾して、熱とともに燃え上がっている。


 なんで?


 考えようとしたけど次々と火の玉がやってくので歩いても無事な炎の中を使って逃げる。

 まるで俺の逃走経路を示しているように、そこに炎の球が当たらないと言っているように…


 火柱の熱さを我慢してそれを縫うように走っていると、炎の行き止まりが見えてきた。

 そこからはまた、奴らの視界に入るからここは一気に駆け抜けなきゃ…

 

 そう思って脚に力を入れて覚悟を決めた瞬間、今度は上から落ちてきた黒い霧に俺は閉じ込められる…

 なんだ?これは?俺の体が少しづつ消えていく…

 力が入らない…

 何だこれ?

 俺が消えていくような…幻術…

 これは俺の力じゃないよな…

 でもこの力…俺に敵対するような感じじゃない…

 なんなんだ?

 

 ---聞こえてマスカ?ブラウンさん---


 嘘か真か、俺の頭の中にやまぶきの声が聞えた。確かやまぶきはあの兎の闇に操られてるんじゃ…


 『何でお前の声が聞こえて…』


 ---喋らないで下サイ。思ってももらえバ、ボクにだけ聞こえるようにしてますカラ---


 え?え!どういうことだ?元に戻ったのか?


 ---残念ながらまだ操られてイマス。でも…---


 でもっておい、どういうことなんだ?

 この幻の炎はお前がやったのか?


 ---ボクは、ブラウンさんの従者です。そしてボクの得意は幻術…それをあいつは最初に触れマシタ。技には保険をかけてありマス。誰かがボクを乗っ取ったとき、ボクの幻術の力に触れると、自動的に被害を最小限にするように暗示をかけるヨウニ…---

 

 で、それはいいけど俺をどうするんだ?このままじゃ消える…

 幻術が体全体を溶かしていく…風に見えてるのか?


 ---これからしばらくボクがブラウンさんを操ります。---


 な、なんだって?どうやって?


 ---正確には…ブラウンさんがボクになりマス---


 ??


 ---ボクのご主人はブラウンさんです。そして、ボクは2番目のブラウンさんの従者---


 え、ああ…そうだっけ?そんなつもりで思ったことなんてあんまりないぜ。


 ---ブラウンさんはそのつもりでもボクはそう思って生きています。で、従者は主人に忠実デス。でも今は動けマセン。---


 すまん…俺の力がなくて…助けられなくて…


 ---そんなことは今はいいんデス。そうなったときにどうしたらいいか考えマシタ。どうしたらいいか、ソレハ…---


 そんな方法、あるのか?


 ---主人が、従者になれば、いいんです---


 へ?

 どういうこと?


 ---だからブラウンさん、ボクを助けるためにボクになってくだサイ---


 なんですと!

 何かの聞き間違いじゃないのかな…

 俺がやまぶきなんかになれるわけないじゃ… 


 ---闇の力が出ない今、あなたはただの犬、ここでは幻術がきれいに発動します。ボクのほうが力は上…---

 

 確かに…俺はいまここじゃ無に等しいほど戦力にならないのはわかってる。

 でもそんな方法、どうすんだよ。

 てか、そんな逆転の発想どうやって出来るんだ?


 ---ここはボクの幻術の中、ボクが出来るといえば不可能も可能にして見せます---

 

 そんな無茶な…

 そう思っていると幻術が俺を包んでくる。

 いつもやる側がやられる側に回る。

 抵抗する気持ちはよくわかる…けれど…

 俺はやまぶきを知っている。

 誰よりも一番…

 だから俺はお前を一番信頼して…そしてされている。


 でも俺を変えようとしてく幻術は、何故かやまぶきの…力を感じない。

 あいつの力はもっとこう…繊細で、だけどどんなものにも壊れない強い物を持っていて…時より計算されたしたたかさを感じるけれど、普段は俺を慕って柔らかい表情を見せる。

 そして、絶体絶命のときは何が何でも成し遂げてやるという強引さ。


 それを感じない…


 ---そう、それを知ってるのはあなたしかいない。だから…---

 

 そうか…そう言うことか。

 幻術自体、お前のじゃないんだ…

 あの兎の物か…


 ---それをボクのものに変えてほしいんデス---


 俺を取り囲んだ幻術を、少しづつ変えていく。

 やまぶきの意思をもったものに。

 それは俺が思いどおりに変えることができるようにやまぶきが細工をしてくれているようだ。

 俺が思うたび、やまぶきの心に囲まれていく。

 俺が知ってるどおりに直していけばいいだけだから簡単に変わっていく。

 その中で間違いを、正確に、そして素早く直していく。

 

 そう…俺が…やまぶきをあの兎から助けるタメニ…


 ---そうです、流石デス、---


 流石…それは山のみんなに言われるコトバ…

 俺が出なくなっても野良をまとめて…

 他の動物との争いも難なく解決するその行動力…

 それは…俺がしてきたから…俺に認めてほしかったから…

 単に声が聞きたかった?一緒にいると心が落ち着いて…

 優しい声をかけられたかった…

 褒められると何でも気がした…

 それは・・・今でも変わらない。

 ボクが…俺に…褒められるにためにするコトハ…


 ---そうデス、やまぶきになることです---


 ゆっくりと…俺の被毛の色が…薄くなる?

 茶色から…あいつの…山吹色に…


 そう、俺は…やまぶきになる…ンデス。

 ボクはやまぶき…この事態を収拾するにはボクしかイマセン。

 早く闇を退けて、本物を回収しなケレバ、俺に申し訳が立ちマセン。

 俺の体がボクより小さいカラ、少しなれまセンガ、なかなかの機動性デス。

 あの体と違って、ボクの幻術を制限する物はみあたりマセン。

 むしろ幻惑系は、俺の得意な洗脳系の力が干渉シテ、ボクの力を増幅して頂けソウデス。

 面白いことに俺の中にはまだ眠っているチカラがたくさんあるみたいデスネ。

 俺は開けそうに無さそうですケド、ボクはいくつか開けられそうです。

 あとは獣化さえできれば完璧なんデスガ…

 それでは俺の体を使わせて頂きマス。


 炎が燃え盛る中、ボクの幻術を使って心を消しながら反撃方法をどうするかを考えなければなりマセン。

 一番いいのは従者の出す炎がもう少し広がってくれればいいんデスガ・・



・ 炎はボクの本体から放たれてイマス。

 あの力は、ボクにとり憑いたギギのチカラ。

 ボクの身体はあまり操れなかったのデスネ。

  うまく力だけは調整できているようデスケド、俺にとどめを刺すニハ、コントロールが悪すぎマス。

 だからムラガ出来て…逃げるにはいいのデスガ、攻めるのニハ…こちらは奇襲をする立場とシテハ、隠れる場所が少ないのですが…

 炎の中も進めないコトハないのでしょうが、俺の体を貸して頂いていますノデ、無茶はできません。

 出来るだけ無傷に返却しないと申し訳ありませんカラ…と言っている場合ではないようデス。

 ボクの身体を使って炎の中へ入ろうとしてイマス。

 ボクの本体も出来るだけきれいに返して頂かナイト…


 それでは…


 脚に力を入れると、この体はグンっと加速することが出来マス。

 小さな炎の隙間を縫って、出来るだけ近くに…

 見つからないように…

 ボクの身体が炎のそばへ近づいてキマス。

 その場所時へ少し遅れるように近づいて炎の隙間を見つけマシタので、そこで体を反転させて…

 横向きになったところを、ボクの幻術で体を囲ってみまショウ。

 身体との相性は抜群で、いつもより簡単に発現させることができたのデスガ…

 この術はボクの身体に刻み込まれているカラ、すぐに術を解かれてシマイマシタ。

 その隙に…闇の兎の方へ駆け込みをボクの身体をすりよせて、闇の力を補充しているようデス。

 かなり消耗しているようで、ギギはふらふらと揺れ、兎からついたり離れたりしてマスネ。

 完全に補充させないためにギギが少し兎から離れた瞬間、補充に集中しているウサギの前を、うまくいけば幻を見せる幻術を施せるように力を発現させて横切った…のデスガ…

 上手く避けられてしまいマシタ。

 デモ、二人とも別れて後ろに下がってくれましたカラ、補充作業が中断した様デス。

 ギギは難なく避けたようデスガ、兎は尻もちをついてイマスネ…

 兎の方は動きが鈍いのもしれません。

 でもおかしいデスネ。

 いくら主が闇の力が強いといっても、肉体はそれにつられて強化されていくっていうノガ、ボク達の闇に対する常識のハズなんですケド…

 なんだかどんくさいような感じデスし…

 ボクの体当たりだけでも吹き飛ばせそうな…そんな気がしてキマシタ。

 ただ、力はだいぶ眠っているみたいナノで、不意な攻撃には注意しナイト…。


 ---主!申し訳ありません。大丈夫でございますか!---

 ---馬鹿か!補充作業のときは私を囲うように守れと言っておるだろう。---


 そう言って、兎は闇を作って…景色に同化して分らなくなってしまいマシタ。

 たちの悪いことに闇の力も全く感じなくなってしマッテ…

 参りましたネェ…これでは不意打ちされてもわかりませんし…逃げられたということも考えられマス。

 しかし…ギギに離れるなと言ったことを考えマスと、ボクの身体の後ろで、ギギに闇を補充するトカ…ボクの身体を代わりの依り代にする!トカ…


 うーん、いろいろ考えられマスネ。これではのんびりはしていられまセンネ。


 とりあえず、ギギの後ろにいると仮定シテ…ボクの身体を早く取り返さないと…

 攻撃系の術は2回見切られマシタ。とすると…効かないと考えた方がいいでショウネ。

 目先を変えて少し大きめの補助系の幻術…視界を少しずらして感覚をおかしくする術をつかいまショウカ…

 攻撃を重点に置いて攻めると思ってもらってイル間に、視点を変えて見まショウ。

 短時間で効果的で、打ち消す方法がない術は今はこれぐらいシカ、なさそうデスネ。

 せっかくいい体を借りているのに、攻撃系の大技で見切られているものが多すぎて…使えないなんて悔しいデス…


 こうしている間に、やはりギギの力が回復していきマス。

 左右どちらかにいるのかはわかりまセンガ、まとめているのがわかったのデスカラ、まとめていってみまショウか。

 さっきの反応を見てマシタら、補給中は兎の方はほぼ無防備のようデスネ。

 この脚なら…中央突入でも良さそうです。

 手が使えないカラ、ボクの尻尾に力を貯めて…悟られないように…尻尾から力がはみ出ないように…


 !!


 力が暴レル?ボクのいつもの尻尾じゃないですケド…急にチカラがあふれるように湧いてキマス…俺のこの体も扱いが難しいデス。

 チカラの流れ方が違うのが原因デスカ、これはばれマシタね…


 せっかく炎の後ろで隠れていたのデスガ、気づかれちゃいマシタね…


 半ばあきらめるようにどうにでもなって下さいとばかりにギギの所へ突入することになってしまいマシタ。

 ダッシュでギギの脚元へ近づいて攻撃するふりをしてアゲルと、不自然に左側に何かを隠すような仕草をシマシタ。

 これは…そこに兎がいるのデスネ。

 それではもう少し追い詰めて…二人いっぺんに幻術をかけてミマスか。


 トップスピードで通り過ぎた様に見せかけて、避けて目線を少し放してくれた時、身体に回転をかけながら急ブレーキをかけて尻尾に遠心力をカケテ…尻尾に貯めた力に遠心力をかけながらギギに投げつけマシタ。

 勢いよく飛んでいった力は、ギギがボクのターンに気づかないうちに…ギギに当たって欲しかったのデスガ、体の横をかすって…手に持った、見えない物に当たったような感じがシマシタ。



 ---馬鹿!私カラ体を離すなと言っただろうに!---

 ---申し訳ありません!---

 ---私だから良かったものの…でも、いざと言うことを考えて私を守るのが仕事でしょ?なんのために肉体を持たないのか分ってる?---


 ボクの力でうっすらと兎の影が見えマシタ。そのを吸収しながら、兎がギギに怒鳴ってイマス。

 いざとなったらボクの体は使い捨て…デスカ。

 それに…これは…吸収しちゃいマシタね…効いていない…様デスネ…

 どうしまショウか…

 とりあえず距離をとりまショウ。失敗したのデスカラ、もう一度力を貯めないといけマセン。

 ターンした方向に…また炎の中へ隠れるようにボクは駆け抜けマシタ。


 ((くそ!使えない奴ですね…あの訳の分らない力を吸収したから、また私の力が減っていく…ギギにも私の力を与えないと動けないし…私の力が衰えてきたからってこんなギギクズに守ってもらわないといけなくなったなんて…だからあの肉体をうまく私が復活できるようにほとんどの力を復活の鈴に送ってやって、やっと、やっと私が動かせる新しい肉体が手に入ると思ったのに!このクズのせい…いや、あの犬が邪魔しなければ、流れ狼と共に私のものになったはずなのに…))


 !!


 何でスカ?直接僕の頭に声が聞こえマス。この声は、あの兎の声デスネ!

 ギギ…従者の悪口を堂々と敵のボクの前で言うはずありませんカラ…

 何で急に聞こえるようになったのデスカ?


 ((あの犬が、隠れている間にギギの力を補給しないと…あんな変な力をあの子がまともに受けたら共倒れになる…早く補給をしないと…あの体が遠くなっていく。))


 …補給…デスカ。それが終わるまではここを離れられないみたいデスネ。

 と言うことはギギもまだ完全ではないようデスネ。

 それまでにボクの身体を取り返さナイト。

 今のうちに、早いうちにもう一度力を貯めて…ギギに幻術をかけてしまわなケレバ…


 改めて力を貯めようと、尻尾を大きく振ろうと…シタラ…


 何デスカ?この力ハ…


 尻尾を振るたびに、一緒にギギの手が揺れて…やめると止まりマス。

 偶然だと思いまシタが、何度も同じ様に動きマス。


 ---我主、我が悪いのはわかりますが、何故補給中に動くのです?我が力を受けとれません---

 ---わかっている。だが、勝手に体が揺れるの…我慢して力を受け取りなさい---

 ---そう言われましても…---


 ((なんで?なんで勝手に体が揺れるの…早くしないと追いつけなくなってしまうのに…))


 尻尾とあの兎がつながっている?

 急に思ったことが聞えタノト、尻尾と同調して揺れる身体…

 あの兎と…繋がった?


 それと同時にボクの中から何か黒いものが湧いてキマス。

 向こうからも尻尾を伝って同じようなものが伝ってボクの中に入ってイキマス。

 兎から来た闇はボクをぐるぐると囲って縛ろうとしてきます。

 ボクノ中から沸いたものは中でボクの心の中をまるで何かを探るように…そして外から来たものを守るように包んでイキマス。


 ((なんで…勝手に力が吸い込まれていくの…私はこの犬に乗り移るつもりはないのに…なんで…))


 乗っ取ろうとしていたのではないみたいデスネ…

 この闇達はどうしようというのでショウカ…

 というか…これをボクが何とかしろとでも言うのですか?

 ボクの幻術を使って…ボクは…


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