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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第5章更新中!
第5章 光の海と闇の海

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第168話 本気の怪物

 ――押し切る。


 誰もが、そう思っていた。


 ノー・アイズ。


 残る触腕は、二本。


「行くぞォ!!」


 バルバスが踏み込む。


 水流を蹴り裂き、

 真正面から叩き込む一撃。


 ドォンッ!!


 攻撃が触腕に直撃し、

 巨体がわずかに傾ぐ。


「今だァ!!」


 その背後。


 待ち構えていた影が――弾けた。


 アッシュ。


 トライデントを構え、

 一気に間合いへ滑り込む。


「――貫く」


 ズバババッ!!


 高速の連撃。


 正確無比に、

 同一点へ叩き込まれる突き。


 蓄積された衝撃が――

 限界を超える。


 バキィッ!!


 触腕が、根元から砕け散った。


「一本!」


 


 ♢


 

「……次」


 間を置かず。


 エクセイルが、動く。


 姿が、消える。


 踏み込み。

 加速。


 一直線に――懐へ。


「穿て」


 ズンッ!!


 槍が、深く突き刺さる。


 だが――


(まだ、浅い)


 その瞬間。


「任せなさい」


 横から滑り込む影。


 グレイス。


 その手には――巨大なハープーン。


 狙いは、ただ一点。


 触腕の“根元”。


「――外さないわよ」


 ドォンッ!!


 発射。


 重厚な一撃が、

 触腕の基部へと突き刺さる。


 拘束。


 そして――


「引き千切れッ!!」


 バルバスの声と同時に。


 グレイスが、引く。


 ギギギギ――ッ!!


 軋む。


 裂ける。


 そして――


 ブチィッ!!


 触腕が、強引に引きちぎられた。


「……これで」


 エクセイルが、静かに言う。


「全部だ」


 ――これで。


 完全に、四肢を奪った。


 はずだった。


 


 ♢


 

 一方――別戦線。


「右から来るぞ!!」


 ダインが叫ぶ。


 その直後。


 小型海魔の群れが、一気に押し寄せた。


「っ、数が多い……!」


 ネーレウスクランのダイヴァーが呻く。


 だが。


「慌てんな!!」


 ダインが前へ出る。


 武器を大振りに振り抜く。


 ドォンッ!!


 まとめて数体を吹き飛ばした。


「ライアン!左を抑えろ!」


「任せろ!!」


 ライアンが素早い旋回。

 海魔を迎撃しながら、前線を押し戻す。


「ジャンヌ!後衛の援護を!」


「わかってる!」


 ジャンヌのクロスボウの弾丸が乱れ飛ぶ。

 群がる小型海魔の動きが鈍る。


 さらに――


 ズズンッ!!


 巨大な白影。


 コロッサル・スクイード。


 残る三体のうち一体が、

 ダインたちの戦線へ迫っていた。


「デケぇな……!」


 ダインが獰猛に笑う。


「だが――止めるぞ!!」


 突撃。


 真正面からぶつかる。


 重い衝撃。


 それでも、退かない。


「おおおおッ!!」


 押し返す。


 その背後から、

 バニッシュクランのダイヴァーたちが一斉に攻撃を叩き込んだ。


 ズガガガガッ!!


 触手が裂け、

 白い巨体が揺らぐ。


「今だ!畳み掛けろ!!」


 援軍の到着。


 それは単なる戦力追加ではない。


 崩れかけていた戦場を、

 再び“戦える空気”へ変えていた。


 


 ♢


 

 ――だが。


 静寂が、来ない。


「……?」


 バルバスが眉をひそめる。


 ノー・アイズは――


 止まらない。


 むしろ。


 その巨体が、ゆっくりと“うねる”。


 腕を失ったはずの胴体が、

 波打つように歪む。


「おい……なんだ……?」


 次の瞬間。


 ――ゴォォォォォォォォォッッ!!


 圧。


 それまでとは、比べ物にならない。


 水そのものが、押し潰されるような重圧。


「……っ!?」


 グレイスの目が、見開かれる。


(違う……これが――)


 本来の。


 “本体”。


 


 ♢


 

 ブォンッ!!


 ノー・アイズの巨体が――しなった。


 次の瞬間。


 鞭のように、弾ける。


「なっ――!?」


 突進。


 触腕はない。


 だが――


 “体そのもの”が、凶器。


 ドォォンッ!!


 バルバスが弾き飛ばされる。


「ぐあっ!!」


 グレイスも、距離を取る。


 アッシュが即座に回避。


 だが――速い。


 軌道が、読めない。


「動きが……変わった!?」


 さらに。


 ――ブシュゥゥゥゥッ!!


 黒い“墨”が、大量に吐き出された。


 一瞬で、視界が塗り潰される。


「……視界が!」


「チッ……!」


 何も、見えない。


 気配すら、曖昧になる。


 そして――

 圧だけが、増していく。


 


 ♢


 

「くるぞ!!」


 ガンツの怒号。


 別戦線。


 コロッサル・スクイード。


 五体。


 そのうちの一体へ――

 ガンツとルキアが踏み込む。


「抑える!」


 ガンツが受ける。


 ドォンッ!!


 触手を弾き、

 軌道を逸らす。


「……行く」


 ルキアが滑り込む。


 最短距離。


 目を、撃ち抜く。


 ドゥン!!


 巨体が揺れる。


 だが――止まらない。


「……数が多いな」


 冷静に、呟く。


 だが動きは止めない。


 斬り、撃ち、削る。


 確実に――崩していく。


 


 ♢


 

「……来るよ!」


 ナナミが叫ぶ。


 目の前。


 コロッサル・スクイード。


 前に戦った、あの時と同じ。


 ――違う。


(人数が少ない。今はガンツさんとルキアさんがいない)


 五人じゃない。


 三人。


 だが――


「いける」


 ニーナが笑う。


「前より、私たち強くなってるんだから」


「……ああ!」


 ホープが盾を構える。


 ナナミも、槍を握り直す。


 恐怖は――ある。


 だが。


(もう、やられそうになった……あの時とは違う)


 触手が、振り下ろされる。


 ブォンッ!!


「任せて!」


 ホープが受ける。


 ドォンッ!!


 踏み止まる。


 完全には止められない。


 だが――


「流した!」


 軌道が、逸れる。


「ナナミ!」


「うん!」


 踏み込む。


 以前は、弾かれた。


 届かなかった。


 だが――


「通す」


 魔力を、調整しながら込める。


 ムーンライトが、淡く輝く。


 ズバッ!!


 触手の根元へ、深く食い込む。


「いける!」


 確かな手応え。


 ニーナが横から切り裂く。


 ズババッ!!


 さらに――


 ドゥン!!


 ボウガンで、目を撃ち抜く。


「今だよ!!」


 三人の連携。


 以前よりも、速く。


 正確に。


 そして――強い。


 ブチィッ!!


 一本。


 触手が、落ちる。


「もう一本!」


 ホープが押し込み。


 ナナミが突き。


 ニーナが斬る。


 連撃。


 連携。


 積み重ねた経験。


 ――三人で。


 崩す。


 ズンッ!!


 巨体が、大きく揺れ――

 崩れた。


「……やった!」


 ナナミが息を吐く。


「三人で……倒せた」


 確かな、成長。


 だが――


 


 ♢


 

 ――ゴォォォォォォッ!!


 再び、咆哮。


 黒い海の奥。


 ノー・アイズ。


 墨の中で――暴れている。


「……っ!」


 ナナミの背筋に、寒気が走る。


 さっきまでとは、違う。


 明らかに。


「……本気、出してる」


 圧が、違う。


 戦場そのものが、支配されていく。


 視界は奪われ、

 軌道は読めず、

 回避も困難。


 まるで――


 “見えない怪物”が、暴れている。


 


 ♢


 

「チッ……面倒なことになったな」


 バルバスが舌打ちする。


 墨の中。


 わずかな気配を頼りに、距離を取る。


「……だが」


 エクセイルの声。


 低く。


 鋭く。


「面白ぇ」


 その目は――


 まだ、死んでいない。


 むしろ。

 燃えている。


「ここからが……本番だ」


 ――深淵の主は、牙を剥いた。


 戦場は、極限へと沈んでいく。


⸻続く

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