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アビス・グランブルー 〜クラン追放された最底辺ダイヴァー、わたしはやめたくなかった〜  作者: ロートシルト@アビス・グランブルー、第5章更新中!
第5章 光の海と闇の海

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第164話 戦場を走る白銀の一閃

 ――“答え”は、見えた。


 だが。


 そこへ届かなければ――意味がない。


 ――ぼぉん……。


 暗夜ヒトデが、再び低く鳴動する。


 圧が、満ちる。


 触手がうねり、戦場を薙ぎ払おうとするその中で――


「……ホープ、ニーナ」


 ナナミは、短く呼ぶ。


「弱点、わかった」


「……っ!?」


「ほんと!?」


 二人の反応は速い。


 戦闘の最中だというのに、

 視線だけでナナミの言葉を拾う。


「中心じゃない」


 息を整えながら、続ける。


「腕の付け根……もっと奥。

 再生してる“元”がある」


「……なるほどね」


 ニーナの目が、鋭く細まる。


「だから削っても戻るんだ」


「そこ、叩けばいいんだね」


 ホープも、すぐ理解する。


「でも――」


 視線の先。


 暗夜ヒトデ。


 あの嵐のような攻撃の中、

 ピンポイントでそこを狙うのは――


 容易じゃない。


「――いいじゃねぇか」


 低く、笑う声。


 ガンツだった。


 銛を構えたまま、口角を吊り上げる。


「もしそこが弱点っていうなら……今までの流れの説明がつく」


 その目は――もう決まっている。


「やるぞ」


「……了解」


 ルキアも、即座に応じた。


 無駄な確認はない。

 戦いながら、すでに動き出している。


 


 ♢


 

「オラァッ!!」


 ガンツが踏み込む。


 正面。


 真正面から、暗夜ヒトデへ圧をかける。


 触手が振り下ろされる。


 ドォンッ!!


 アームガードで受け流し、

 銛で軌道を逸らす。


 その一瞬の“間”を縫って――


 ルキアが入る。

 最短距離。

 一直線に、弱点へ。


(今――!)


 だが。


 ――ぼぉん……!!


 暗夜ヒトデの“眼”が、一斉にルキアを捉えた。


「……っ!」


 触手が集中する。

 迎撃。


 明確な“警戒”。


 ブォンッ!!ブォンッ!!


 叩きつけられる連撃。

 ルキアは、踏み込めない。


「……マークされてる」


 短く、吐き捨てる。

 読まれている。


 強い個体――

 ルキアとガンツ。


 そこに、意識が集中している。



 ♢


 

「なら――」


 ホープが、前へ出た。


「こっちが道、作る!」


 盾を構え、

 触手の軌道へ飛び込む。


 ドォンッ!!


「ぐっ……!」


 衝撃。


 だが、止める。


 そのまま、身体を捻り――


「こっちだ!!」


 強引に、流れを引き寄せる。


「ニーナ!」

「任せて!」


 ニーナが、左右へ跳ねる。


 白銀のナイフ。


 連撃。


 ズババッ!!


 さらに――


 ドゥン!ドゥン!


 ボウガンを二連射。


 “眼”を狙う。


 視線を――散らす。


「ほらほら、こっち見なさいよ!!」


 挑発。


 意図的な攪乱。


 暗夜ヒトデの意識が、

 わずかに分散する。



 ♢


 

(今……!)

 

 ナナミの呼吸が、静かに落ちる。

 周囲の音が、遠のく。


 手の中の槍――ムーンライトが、

 淡く輝き始める。


 魔力を、込める。


 深く。

 静かに。


(外さない)


 視線は、ただ一点。


 “そこ”。


 再生の起点。


 黒の奥に隠れた――本当の核。


「ナナミ、行け!!」


 ホープの声。

 触手を弾き飛ばす。


「……今だよ!」


 ニーナが、道を開く。


 開いた。


 ほんの一瞬の――“隙”。


「――今しかない!!」


 踏み込む。


 一閃。


「――ムーンライトッ!!わたしの声に応えてっ!!」


 白銀の光が、走った。


 ズンッ――――!!!


 深く。


 深く。


 突き刺さる。



 黒の奥へ。


 その“中心”へ。


 ――ぼ、……っ


 音が、途切れる。


 暗夜ヒトデの“眼”が、

 一斉に揺れた。


 次の瞬間。


 バキィッ――!!


 

 内部から、複数ある眼が崩れる。

 そして、再生が止まる。


 触手が、痙攣し――

 巨体が、動きを止めた。


 今まで放っていた不気味な圧は……

 海中へと――溶けていく。


 そして今まで身体にのしかかっていた“重さ”がふっと消えた。

 


「……や、った……?」

 


 ナナミの声が、震える。


「おう」


 ガンツが、笑う。


「ナイスだ。お前ら強くなったな」


「……完璧」


 ルキアも、短く頷く。


 ホープが、息を吐き。


「すごいよ、ナナミ……!」


 ニーナが、ニッと笑う。


「やっぱりナナミなら出来ると、わたしは信じてた!」


 五人の呼吸が――揃う。


 暗夜ヒトデ。


 討伐。



 ♢



「……っ!?」


 遠方。


 その戦いの始終を見ていたエクセイルが――

 目を見開いた。


「アイツが……あの暗夜ヒトデにトドメを刺すだと……!?」


 信じられない、という顔。

 

 しかし彼はその目でハッキリと見た。

 今までのナナミとは別人の立ち回り、動き、鋭さ……そして決意に満ちた表情だった。


「すげぇな……デカイぞコレは!

 最大の障害を、あのお嬢ちゃん達が持っていきやがった!」


 バルバスは両手をバンバン叩いて喜んでいる。


 その隣で。


「ふふっ」


 グレイスが、楽しそうに微笑む。


「あの子、ぐんぐん成長してるのよ」


 一拍。


「なんでも、どこかのクランを追放されたらしいけど――」


 視線を細める。


「そのクラン、見る目がないわね」


「チッ……」


 エクセイルが、舌打ちした。


 だがその視線は――


 もう一度、ナナミへ向けられていた。


 ――評価が、変わり始めている。


 深淵の戦場で。


 ひとつの“格”が、塗り替わった。


⸻続く

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