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朧の少女


 朔夜達と別れてそう時間は経っていないが、またどこか見覚えのある人物を見つけた。


「アラストル?」

思い切って声を掛ける。

私の知っている彼と比べれば随分髪は短いが、きっとあの銀髪は彼だろうと思った。

「誰だ?」

不審そうに私を見る。

そんな彼の足元に、いや、足元と言うのは語弊があるかもしれないが、彼の腰より少し高いくらいの大きさの黒い髪に赤い瞳の少女が居た。

「玻璃?」

ひょっとしたらこの少女が噂の玻璃かもしれないと、彼女に声を掛けてみたが、彼女はきょとんと私を見る。


「何言ってやがる。こいつはリリアンだ」

「失礼。知り合いに似ていたものだから」

「そうか。で? なぜ俺を知っている?」

「えーっと……ナルチーゾ伯から聞いたんだ」

苦しい言い訳だけども、きっとあの王子様なら誤魔化すのも手伝ってくれるだろうなんて期待をしつつ、アラストルに言うと彼はあっさりと「そうか」の一言で済ませてしまう。

きっと彼が不憫と言われるのはこの性格のせいだろう。

深く追求することをしない。それが利用されやすいのだ。


ふと、少女を見ると目が合う。

「リリアンはいくつ?」

できる限り自然に微笑んで訊ねる。

「もうすぐ13よ」

「そう、もう一人前だ」

「うん」

笑うと可愛い少女。

いや、笑わなくても綺麗な顔立ちはしている。アラストルと血がつながっていると思うと不思議でならない。

「連れて帰りたい……」

「馬鹿言うな!」

「慌てなくても冗談だ」

「目が本気だったぞぉ……」

「だって可愛いし」

子供は嫌いじゃない。

むしろ、クレッシェンテに来て初めて子供を見た気がする。

「まぁ、可愛いお嬢ちゃんが人攫いに遭わないように気をつけなさい」

冗談めかして言う。

だけど、なぜだろう。


この少女からは朧の気配がする。


「妹だ!」

「知ってる」

別にあんたの子だとは思ってないよ。

「面倒見のいい兄さんは好き?」

「うん。大好き」

本当に可愛いざかりの女の子。

きっともう少し大きくなったら「お兄ちゃんうざい」とか「お兄ちゃんなんかいなくなればいいのに」なんて言い出すんだろうなと考えるとますますアラストルが不憫に思える。

「あまり過保護にすると嫌われるのが兄って生き物だからね」

「なに解かったような口を聞いてやがる!」

「世の常だからね」

そう言いながらリリアンの頭を撫でる。

「お兄ちゃんとおんなじことするんだね」

「え?」

「お兄ちゃんもよく頭撫でてくれるんだ」

彼女は嬉しそうに言う。

「そう。あのさ」

「なぁに?」

「また会えるかな?」

「うん、きっと」

リリアンは笑う。

強く願えばまた会えると。


「じゃあ、今度会ったらアイスクリームを奢るよ。三段の奴」

「本当?」

「約束」

そう言ってもう一度リリアンの頭を撫でればアラストルに睨まれる。

「子供、好きなのか?」

「別に。アラストルの真似をしただけだよ」

だっておんなじこと私にするでしょう?

言葉には出さないけれど、視線で告げる。

けれど彼には理解できなかったようだ。



「じゃあ、またね。リリアン、アラストル」

「またね」

「会わないことを願っとくぜ」

「そうしてくれ、アラストルは」

だけど出会ってしまうんだ。

この銀の男は。


 未来を少し知っているだけでこんなにもおかしい。


 だけど、リリアンと言う少女はどうだろう?

また、会えるだろうか?

また会うことを祈りながら先へと歩き始めた。


きっとこの道をずっとまっすぐ行けば、「玻璃」が見つかる。

そんな気がした。

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