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救世主求ム。詳細は村長へ。  作者: にしすけ
第一章 勇者ウェルテルウス
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俺達は卑怯だったぜ

「人質をとるとはなんと卑怯な!」

と村人が憤っている。

「あんなことして……許せないよ!」

アカリが強い口調で言うと、周りの村民が同意したように首を縦に振った。


『さあさあ。せっかく魔力を回復してもらったところ悪いが、村人に使ってあげるべきではないかね?さもなくばこやつらは血を失いすぎて死ぬることになろう』


そして高笑い。


「コルビンさん!俺じゃなく村人のみんなに回復魔法をかけてやってくれ!」


勇者ウェルテルウスは重傷にもかかわらず起き上がって叫ぶ。叫んだ後、痛むのかわき腹をさすっている。


「しかし……このバケモノ、勇者さんなしでどうやって倒せというんですか!」

その瞬間をコルビンは一生忘れられないだろう。勇者ウェルテルウスは右手を高く掲げた。親指を高々と立てながら。

「俺には秘策がある!」

「……どんな?」

アカリも心配そうに勇者を見つめている。

「俺を信じろ!」

その目は冗談や不安のない、真剣そのもののまなざしだった。アカリがコルビンを振り返る。コルビンは頷いて見せた。アカリも心を決めたようだ。

「僕は村人を優先します。常人にはわかりませんが勇者さんには秘策がある様子」

「……そうね……」

後ろめたい気持ちをぐっとこらえて、村人達が磔になっているところへ急いだ。

『まだ決められんのか?どっちも殺してしまうぞ』

高笑い。このボスは酷く笑い上戸らしい。その隙に磔のそばの建物へと入り身を隠した。ここならば声が通じる。


「皆さん元気ですか?」

「あ、コルビンさん!」

「どうしてここに?」

「今は説明している暇はありません。とにかく皆さんに回復魔法をかけます……回復、全体、その六!」


磔にされていた村人達がするりと地面に投げ出された。

『ふははははは!やはり何の役にも立たない村人を取ったか。これで貴様らの命運は尽きた』

「くっ」

『では早速貴様らの"勇者様"にトドメを刺させて貰おうか』

「コルビンさん!」

勇者が呼ぶ。

「俺のだけ足に、最大限の回復をかけてください!それで十分だ」

「何がしたいかよくわかりませんが、わかりました!」


「させるか!」

デーモンが3体目の前に急に現れた。アカリが悲鳴を上げる。村人達は恐れもせずコルビンのそばによってきた。

「ここはオラたちが何とかする。早く勇者さんのところへ!」

「すみません、皆さん!任せました!」


アカリの手を引き、一目散に駆け出した。振り向くと丁度農夫のクワが相手の脳天に命中したところだった。多少安心しながら勇者の近くに急ぐ。


「時間がない。早く!」

『んん~まだ何か企んどるのか?どうせ勇者ともども死ぬのに往生際の悪い奴らよのう』

「回復、脚にだけ、その八!!」

勇者が突然飛躍する。ボスは驚いた風もなかった。冷静に鋭い爪を一閃。勇者の胸を引き裂き、またもや鮮血がほとばしる。

「?!」

勇者はひるまない。さらにずんずんボスに近づいていく。

『く、何の真似だ!』

巨大な鉤爪を上から振り下ろす。勇者は剣で受けた。しかしそれも捨ててしまった。

「そんな……まさか」

アカリが泣き出す。コルビンは何がなんだかよくわからなかった。

『くそっ、離れろ!何をするか!』

勇者は素手で相手の懐に飛び込んだ。そのまま胴体を捉えて離さない。

『まさか……!貴様卑怯だぞ!』

「卑怯なのはお互い様さ」


「!やめてください勇者さん!」

コルビンにもわかった。勇者ウェルテルウスはこちらを見て少し微笑んだ後、呪文を唱えた。

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