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救世主求ム。詳細は村長へ。  作者: にしすけ
第一章 勇者ウェルテルウス
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ボスキャラ、見参

「コルビンさん!」

「はい!いますぐ!」

村役場の一階にはまるでマグロの魚河岸のように重傷者が並べられている。コルビンは回復を繰り返しているうちにレベルアップしていたらしく、より強力な魔法が使えるようになっていた。


「回復、範囲、その二!」


「うーっ痛え!」

「おっ死んじまうところだったぜ」

「まだ戦わなければいかんのか……」


およそ20人余りの村人がむくりと起き上がった。破れた服の下から見えていた傷はすっかり治っている。


「さあみなさん、村を守るため出発です!」

「まじでコルビンさん鬼だな」

「これ以上戦えって言うのなら反乱を起こしますぞ!」

「かーちゃんとガキのためだ。仕方がないべ」


不承不承ながら村人達は鎌やクワを担いで再び前線へと向かっていく。


村役場脇には軽傷者用の医療テントが張られ、そこで一人の女性が忙しそうに救護を手伝っている。

「アカリさん……でしたっけ」

「ちょっと待ってね、今この人にお薬を塗るから。痛いですけど我慢してくださいねー」

治療を受けている男はまるでそのまま天国に上ってしまいそうな顔をしていた。

「いやーアカリさんが手当てしてくれるだけでこれしきの怪我なんて一瞬で治っちまいますよ」

「もうアカリさんが大将だったらよかったのに。そうなりゃ俺達こんな傷でもお構いなしで戦いに行きますぜ!」


「よかったな軽傷で。これでもし腕の1本や2本取れてたらコルビンさん行きだぜ」

「戦場より恐ろしいところらしいな。ぐちゃぐちゃになったはずの体がもう一度再生して、でも体はぐちゃぐちゃになったときの痛みを覚えているという」

「集中治療室から常に絶叫が聞こえるらしい。それで気がふれたスタッフもいるとか」

「おーくわばらくわばら」

「……全部聞こえているんですが」

「はい今言ったこと全部嘘です!」


ひそひそ話というには大きめの会話をしていた職員と村人を追っ払うと、アカリの方の用事はもう済んだようだ。

「さて、何の御用ですか副村長さん?」

「何であなたがここにいるんです?!危ないですよ」

「だってコルビンさん達みんなも逃げないんじゃないですか。ウェルテルウスさんのパーティも誰一人逃げてない。そんな状況で私一人のこのこ逃げられますか?!」

「うーんそれは……」

まったくぐうの音も出ないコルビンだったが、しかし考え直した。村役場なら今この村の中では一番安全な場所だ。よもやここまで魔物が来るとは考えにくい。

「わかりました。ただ絶対に前線には出ないでくださいね!」

「はいはい。わかりましたよ」


コルビンは役場に戻ると広報担当者にばったりあった。

「現時点で何がどうなっているのか教えてくれ」

「中央広場を巡って魔物と村人で戦闘が起きています。戦況は一進一退で、今のところどちらも五分五分と言ったところ」

「魔界の怪物を相手によくここまでもつもんだな」

「特に農夫のコルニさんが八面六臂の活躍を見せています。クワで何体の敵を叩き殺したことか」

「さすがプロだな……」


「どけどけ!どけどけ!危篤者だ!コルビンさん!」

顔面をごっそりと削りとられ、袈裟にばっさりと斬られたその死に掛けは、わかりにくいが農夫のコルニさんその人だった。しかしクワだけはしっかりと右手に握られていた。

「う……あ……」

「しゃべらなくていい!すぐに治して差し上げますから」

「だ、ダメだ……。みんな逃げろ……」

「何を言い出すんですかコルニさん!」

「きやがったんだよ……ボスが!」

広報官が急いでやってきた。

「緊急報告!中央広場が魔物の手に落ちました!ボスがとうとう出現したとのこと!」

「まずはコルニさんだ!回復、その五!」

「いってええええええええ!」

コルニさんは元通りに、ならなかった。まだ力が足りない!

「回復、その六!」

「やめてくれえええええええ!」

コルニさんの絶叫が村役場をこだまする。地獄絵図に流れるBGMとしてこれ以上のものはなかっただろう。それほど絶望と苦しみに満ちた叫びだった。


「回復、その七!」

「……」

「コルニさん?」

返事はない。スタッフが慌てて脈を取ってみたが、一応まだ生きてはいるらしい。

「もう魔力が切れているのよ!もう回復魔法は使えない!」

「アカリさん?!」

コルビンは自分の手を見た。農作業や戦いとは無縁の、すべすべして白い手だった。

「そっ、そんな馬鹿な!まだまだ僕はできる」

「無駄よ。マジックポーションがあればいいんだけどね。今のあなた、ただの村人よ」

「もう僕は何の役にも立たなくなってしまったのか……」

「そ、そんなことはねえ。コルビンさんがいなければ何人何十人死者が出たことか……」

「しかし……自分の魔力を管理できなかったとは……不覚」


打ちひしがれるコルビンだったが、それどころではなかった。地響きがする。そしてそれはだんだん大きくなっていっているのだ。


「ボスが来た!」

「行くわよ」

アカリの背後には軽傷者が並んでいた。松葉杖をついている奴、眼帯をしている奴、いかにも満身創痍といった連中だ。

「お前ら何をしているんだ!僕が治してやるから寝るんだ!それにアカリさんも、どこへ行くんですか!ここにいるって約束したじゃないですか」

「甘いわね。コルビンさん」

アカリがその上品な顔立ちを少しゆがめて言った。

「ここからが正念場よ」

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