戦う村民達――やっぱり手に慣れたクワと鎌が一番!
「食らえバケモノ!代々受け継いだ鎌の味を!」
「こちとら村とかーちゃんとガキがかかってんだ!そう簡単に死ねるか!クワで刈り殺しちゃる!」
朝も早くから死闘は始まっていた。
早朝の淡い日差しが空を染め上げるとき、モンスター達は動き出した。早速前線で小競り合いが起きている。ラスボスがいるダンジョンのモンスターを相手にしていると考えると異常に善戦していると考えてよい。
「まークワと鎌にかけちゃあオラたちに勝てるものはいねえべな」
とはある農民の言葉である。
「しかし敵の数は300体を超える。どうやって持ちこたえればいいものか……」
副村長のコルビンの呟きは誰にも聞き取れないほど小さかった。
「コルビンさん!負傷者だ!」
「……!」
コルビンには少しばかりの休息すら許されていなかった。早速両腕をまくり、施術にかかる。
「回復、その二!」
独学で習得した回復魔法だ。自分的にはその一からその十まであり、数字が高ければ高いほど精神力を消耗する、ような気がする。
「う、腕が!折れたはずの腕が!治った!」
「まさに奇跡だべさ」
「時が時なら救世主はコルビンさんだっただな」
しかし感謝されるのは初めの1,2回程度である。
「うーっ。殺してくれ!もう嫌だ!」
「コルビンさん!今度は酷いですな。下半身が粉々になってますぜ」
「回復、その六」
「いやだーっ!」
と何度も瀕死で担ぎ込まれてきては嫌々治療されるに至るのである。魔王軍も真っ青なブラックな環境下にある村民達であった。
「なんとか敵を押しとどめているが、いつまで続くものやら」
太陽はいつのまにかすっかり姿を現し、容赦ない日差しが皆に降り注いでいる。敵は半漁人の魔物なので、直射日光に弱いらしい。動きが少し鈍くなったような気がする。
「村の方々!逃げてください!」
高い、それでいて芯の通ったしっかりした声が村中にこだまする。
「村の人間じゃないようだべさ」
「おお、なんと美しい。コルビンさん、あれはどこかの国のお姫様にちげえねえ!」
「逃げてください!」
コルビンに近寄ったその女の人は乱れた息で再び告げる。さらさらした金髪で、瞳は大きい。軽装の鎧を身に着けているが、その上品な顔立ちは確かにどこかの国のお姫様をやっていてもおかしくはない。
「……どこにです?」
「どこでもいい、ここじゃないどこかです!」
そう言ったきり女の人は気を失ったように倒れこむ、ところにコルビンが支え持つ。
「回復、その一!」
「はっ、わたしは今どこに?」
そしてコルビンの顔がすぐそばにあることを知る。思わずお姫様だっこ状態になっていたのである。
「あ、あなたは誰?!」
「ごごごごごめんなさい!」
コルビンはかつてなかったほど取り乱した。何せ女性の息遣いが感じられるような距離にいたのである。
「村の人ね?わたしはアカリ!勇者ウェルテルウスのパーティメンバー。ここから逃げて!」
「ええと、だからどうしたって言うんです?」
「ボスよ!」
「なんと?!」
「ボスキャラのお出ましよ!」
ボス。それはこの世界に存在するほかの魔物を率いるバケモノ中のバケモノ。ただでさえ強い敵なのに、そのボスが来られてはたまったものではない。しかしこの場合、相手から来てくれる分にはむしろ好都合だった。
「皆殺しにされるんだわ!」
「コルビンさん!またけが人です!肺に穴が開いているようで苦しんでます!」
「すぐ行きます」
「どうしても逃げないっていうのね?」
「当たり前です」
通り過ぎ様にコルビンは言い放った。
「この村には逃げるところがありませんから」
アカリはその背中を見つめていた。




