決戦 序盤
「我こそは勇者ロビン!」
「我こそは勇者ウェルテルウス!」
それは今までナシフ村を救ってくれた2人の勇者であった。
『いざ、尋常に勝負!』
2人の声がハモる。
『2人の勇者を倒せぬ限り、このわしには指1つ触れることはできぬであろう』
「魔王め卑怯な真似を!」
『せいぜい正義の味方同士仲良く殺し合うが良い』
魔王の声は高笑いをしながらだんだんフェードアウトしていく。
「一体これはどうしたというのです?!」
サヤが困惑した表情でカイトに聞いている。しかし答えは誰にもわからなかった。
「なんだかわからないが、とにかく誤解を解かないと。誤解があってこうなっているに違いないのだから」
とカイトもどうしていいのかわからない状況だ。
「死すべし、悪の者!」
有無を言うまもなく勇者ロビンの長い剣が振り下ろされた。閃光を放ち電撃が巻き起こる。
「みんな伏せろ!」
幸いにどこか別の場所に命中。同時に耳を完全に破壊せんばかりの轟音が鳴り響く。
「これでも喰らえ!」
ウェルテルウスが剣を虚空で振り回すと、8の字を描いた軌跡はやがて竜巻を巻き起こす。それは触れるものすべてを切り裂くかまいたちとなってカイトやコルビン達に襲い掛かった。
「アニー、エルマ!」
「はーい!」
2人は手を合わせ魔法を発動。炎の渦がカイト達を取り巻き、かまいたちを待ち受ける。
「くっ!」
2人ともさすがに苦しそうな表情を浮かべる。ウェルテルウス1人の放ったかまいたちは炎の渦をどんどん切り裂いていく。玉葱の皮を剥いていくようにコルビン達を守る炎の層がまた1枚また1枚削り取られていく。いよいよ最後の1枚となったとき、イシワタリが何かを唱えた。
「爆発っ!」
炎の渦が爆発し、かまいたちを巻き込んで消え去った。周囲は煙が立ち込める。
「猪口才にやるじゃねえか」
「魔王め、小手先で俺のかまいたちをあしらうとはな……」
「!我々は魔王ではない!味方です!お二方、やめてください!」
サヤがそう叫ぶが、相手には聞こえていないようだ。
「ならこれでどうだあっ!」
ロビンが高く跳躍し、地面に剣を突き立てる。地面を伝う蛇のように電撃が地表を流れ襲い掛かってくる。
「みんなわたしの後ろに隠れて!」
サヤがそう叫ぶと目の前の地面に向かって全力で剣を振るう。黒い地表に大きな切れ込みができ、地割れのように裂け目ができた。電撃の蛇たちはその裂け目に落ち込む。
「くそっ。1度までならず2度までも!」
「おい、ロビン。これは1人1人が交代で技を放っても無駄なようだぜ」
「仕方ねえ。協力プレーといくか」
ロビンは残念ならないといった表情で剣を鞘に収めた。
「お前が先だ。俺は後から放つ」
「合点承知!」
ウェルテルウスが地面を蹴り上げる。すると巨石がいくつか持ち上がり、それらを一閃すると木っ端微塵に砕け散った。
「喰らいやがれ魔王!ロビン様特製の散弾銃だ!」
ロビンが剣を振りかざし電撃を放つ。木っ端微塵になった岩石に命中すると、それらは電気を帯びまさに散弾のようになってロビンたちに襲い掛かった。身を守っても細かい粒が体にびしびしと命中し、体力をどんどん奪っていく。
「きゃーっ!レディの顔面を狙うとは何事?!」
「本当にのんきだなお前らは!」
コルビンは回復魔法を唱え続けることにした。
「回復、全体、その10!」
コルビンは体力が半分以下になり次第回復が入るようにし、パーティはなんとか散弾を持ちこたえることができた。
「ちっ。まだ生きてやがる」
「どころかピンピンしてるじゃねえか!」
「さすがに魔王といったところか」
「お次だ!行くぞロビン!」
「また来るぞ!」
「防戦一方じゃジリ貧だよ……」
「それでも耐え抜くしかない!」
しかしコルビンは何か引っかかるものを覚えていた。




