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救世主求ム。詳細は村長へ。  作者: にしすけ
第三章 勇者カイト
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回復魔法は死の香り

そこは確かに以前入ったことのある洞窟そっくりであった。が、それが一体全体どうしたというのだろう。コルビンは己を励ましつつも、ぬぐいきれない不安を覚えていた。

「はやく来なよー置いてくよー」

とアニーがその場でぴょんぴょん飛び跳ねながら手を振っている。

「ま、大丈夫か」

勇者の一行がついていれば万が一にも間違いは起きるまい。


「ギシャアアアアア!」

「おーっ、早速第一アンデッド発見♪」

一歩中に踏み入れると早くも敵が出現した。巨大なガイコツだ。ツーハンドソードを振りかざしていて物騒この上ない。


「コルビンさん、出番です!」

「えーつまんなーい」

エルマがまたもや口を尖らせ、コルビンは仕方なしに回復魔法を放つ。しかし突っ込んでくる骸骨は止まることを知らない。

「あれ、効いてない?」

「なんで?バグ?」


その後何回か回復魔法をアンデッドにかけてみたが、思ったほどのダメージを与えられなかった。舌なめずりしていた勇者パーティが始末してくれたので特段問題は起きなかったのが幸いか。


「理由はよくわからないが、どうやらここの奴らはアンデッドの癖に回復魔法に対する耐性を持っているらしい」

イシワタリの分析によると、ダメージの80パーセントをカットできるようだ。よくわかったな、とコルビンは思う。

「ようやく我々の出番と言うわけか!」

「腕が鳴りますね」


勇者達が働き始めるからといってコルビンが休めるわけではない。なんにせよパーティに回復魔法を放たなければならないからだ。

「か、過労死しますよ。きつすぎる」

「まーいじゃん!やっと私にも出番が回ってきたね」

とカロナが意気揚々としている。そういえば本来パーティの回復役であるところのカロナは今まで一体何をしていたのだろうか。

「ええと……サボり?ごめんねー」

褐色のギャルで僧侶な女の子にお願いされてはコルビンも致し方ない。笑顔で許す。それに回復役が2人いればそれだけ負担も減るというものだ。


「我が剣受けてみよっ!」

とサヤが見事な剣さばきで多くの敵を蹴散らしている。とそのとき腕が8本あるガイコツ兵士がサヤに襲い掛かった。

「くっ!」

さすがに8本もの剣戟を受ければサヤは防戦一方に回らざるを得ない。勢いに押され後ずさりを始める。コルビンは後ろを振り向いた。

「カロナ!」

「わかってるよ!」

万が一に備えて二人は回復魔法の詠唱に入った。


サヤが気づいたときにはもう1体のガイコツ兵士が背後に回っていた。

「不覚!」

さらに襲い掛かる8本の剣、それらをすべて捌ききる前に前方のガイコツ剣士が器用に彼女の剣を巻き取った。持ち主から離れた剣が虚空を舞い遠くの地面に突き刺さる頃、合計16本の剣に串刺しにされていた。口から血が吹き出す。

普通ならばジ・エンドであるが、勇者のパーティともなると一味違う。サヤはにやりと笑った。これで勝ったと思うなよ。ここからが勝負だ。


サヤの傷は白い煙を上げたかと思うと全部すぐにふさがってしまった。あっけに取られているガイコツ剣士たちを勇者カイトが袈裟斬りに叩き斬る。


「一丁あがり!」

「いい気分です!支援ありがとうございました!」

ペコリと頭を下げる。律儀な奴である。勇者のパーティがじりじりと敵を押し始めたとき、洞窟内に巨大な影が映った。

「これは……巨人タイタン?」

「やっと倒しがいのある奴が出て来たね♪」

エルマのように喜んでいる場合ではない。地響きと共に近づくその影にコルビンはおびえるしかなかった。

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