つうこんのいちげき!モンスターは村長に54のダメージを与えた!
「村長!気をしっかり!」
「……父上!」
燃え盛る村役場。アカリ姫とヴィスワは他の非戦闘員やけが人と一緒に裏口から落ち延びようとしていた。担架で運ばれる者が一人。息も絶え絶えなその重傷者は他ならぬ村長その人であった。
「回復薬が効きません!」
「瀕死の状態になると回復が効かなくなるぞ!気をつけろ!」
いつもなら村を訪れる冒険者にアドバイスを与える村人の定型文も悲しく響いた。
未練がましく村長は盛大に燃えている村役場を睨んだ。
「ゆ、勇者殿は……」
「もう勇者様に頼るのはやめて!」
ヴィスワが叫ぶ。潤んだ目から涙が零れ落ちる。アカリ姫も悲しげな目をしてこの親子を見守っている。
「む、無念じゃ。まさか最後の最後まで現れぬとは……」
「そりゃそうよ!いくらなんでも勇者様に頼りすぎたのよ。待っていれば助けに来てくれるなんて一体どこのおとぎ話よ!」
「おお。所詮わしはただの村長。勇者が助けに入るほど重要な人物でなかったということか……」
「敵がすぐそこに!身を伏せて!」
誰かが叫ぶ。近くで爆発が起きる。そばの民家がはじけとんだ。担架を持っていた職員が体勢を崩し、村長は地面に投げ出された。
「もういい!お前達は行くのじゃ!」
「父上っ!」
「村長さん!」
村長は蠅でも払うかのように手を振っている。
「おお。村をこんな目に遭わせたのは間違いなくわしじゃ。見捨てていけ。未来あるお主達をこれ以上巻き込むわけにはいかん!」
『敵大将の首を貰い受けに来た』
恐ろしい声が聞こえる。
「どうやら敵ボスのお出ましらしい。わしはここで狩られるのが定めのようじゃ……」
全身を炎のよろいでつつんだ人型の魔物がゆっくりと姿を現す。村人達はクモの子を散らすように逃げ出す。村長は身動きが取れないでいた。
『老人を、しかも重傷の老人を手にかけるのは本意ではないが、これも世の定め。これ以上苦しまぬようきっちりとトドメを差してくれよう』
「おお、おお!すまぬ!すまぬ皆の衆!わしはもはやここまでのようじゃ!」
敵ボスは大きく振りかぶり、炎の槍で渾身の一撃を放った。
……
燃え盛る村役場。アカリ姫やヴィスワが裏口から脱出を計ろうとしていた頃……
「準備はいいな?!」
「「おう!」」
村人の脱出を支援するため、職員と有志およそ50人が中央広場に集まっていた。職員は皆同じ青銅のよろいとつるぎを装備しているが、有志の方はてんでばらばらで中にはクワを抱えた農夫の姿まで見える。コルビンは心配になったので聞いてみる。
「そんな装備で大丈夫ですか?」
「大丈夫、問題ねえべさ!やっぱり手慣れたものが一番!」
「それでは、今より出撃する!その前に、一人当たり回復薬4つを受け取ったことを再度確認してくれ。既に使ってしまったもの、持っていないものはすぐに薬事部に申し出ること!」
「出撃!」
火の粉を振り払いつつ、50人が一団となって駆け出した。




