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白蓮人形館  作者: とら
7/10

ドールプランツ(揺蓮華人形)

深い…森の奥のような緑……。俺の瞳より色濃く、姉の瞳より青色がかっている。

だが、なぜだろうか…。

冷たい色合いなのに暖かさを感じる視線が、無償に懐かしかった。

…俺は、この瞳を知ってる…。



~~~~~~~~~~


 ぴぃ。ぴぴぴぴ……ちゅんちゅんちゅん……


眩しい…。徐々に意識が浮上してくる。

朝を伝える光が顔を照らし、瞼の裏を白く染める。


「ん………。」


目を開くと、見覚えのない天井が見えた。


「ここは…あぁ、そうか……。」


あのあと、横たわるヒトについて話を聞こうと祖父に詰め寄った俺は、今日はもう休んで、明日話すことにしようと祖父に窘められ、祖父に言われるまま、濡れた服を着替えた。本当は聞きたいことが山ほどあったが、真夜中に話すには時間が足りなかったし、何より物事を考えるには俺の頭は混乱しすぎていた。


あらかじめ用意してあったという俺用の部屋に着くなり泥のように眠ってしまったようだ。



…じぃちゃんにはいろいろと聞かなきゃいけないな。

昨日はいろいろありすぎて、ほとんど話しなんておぼえてねぇ。

確か彼等を狙ってるだかなんだか言ってたな…。彼等って誰だ?


気になる出来事や言葉を思い出そうと、思考の海へ沈んでいく……。



コン コン


びくっ!

なんだっ!?


控えめなノックの音が響き、かちゃり。と音をたてて扉が開かれる。




~~~~~~~~~


すっげー可愛いコ。


扉を開けたのはずいぶんと綺麗な子供だった。


ふわふわの薄い黄色の髪に、キラキラと輝く空色の瞳。白い肌には染み一つ無いが、どこか活発な印象がある。

まるで子兎か子栗鼠のようだ。かなり小柄だからだろうか?

身長は多分俺の胸にも届かないだろう。

整った顔立ちは人形のように中性的だが、どちらかと言えば少年…に見える。


ちょいちょい。


扉の向こうで手招きしてくる動作が非常に小動物っぽい。


とくに反応を返さないで少年を見ていると、そばに寄って来て手を掴まれた。


くいくいと急かすように引っ張られる。

ついて来い…という意味だろうか?


「ついて行けば良いのか?」


こくこく


うなづいているし、多分肯定しているんだよな?


「もしかして…喋れないのか?」


 …? とたたっ


わからない、というように首を傾げると、少年は後ろを向いて走り出してしまった。



「あっ。ちょっと待ってくれっ!」


慌てて少年の背中を追いかけると、ちょうど階段を下ろうとしているところだった。

どうやらあの階段を下るらしい。


 あっ。今部屋に入った!あの部屋か。



階段を急いで下り、少年が入っていった部屋の前に立つ。

扉の向こうから微かに槇の燃える匂いがするので、暖炉があるのだろう。

ここが居間なのだろうか?


繊細な蔦の細工がされた蝶番を引くと、少し引っ掛かるような感触と共に軋んだ音をたてた。だいぶ古いものなのだろう。

油を挿した方が良いかもしれない。


ギギギギギ…


扉を開けるとフワリと暖かい空気を感じた。



暖かい…。ここが居間みたいだな。

カヤク(樫の木に似た黒い木材)で作られた室内は、やはり森の匂いが漂っている。部屋の奥には暖かな暖炉があり、スープ鍋から良い匂いが漂ってきた。

視線を少し右にずらすと、柔らかそうな長めの毛皮の絨毯が敷かれ、その上に果物やパンが積まれたテーブルと、少し高めの椅子。椅子には祖父と先程の少年が座っていた。


「おはよう。よく眠れたかね?」




~~~~~~~~~~

親しみを込めてかけられた言葉に戸惑いを覚えて、一瞬返答に詰まった。


「あ…と…ぐっすり眠れました。ありがとうございます。」


おもわず慣れない敬語が出てしまった。


…昨日は夜だったためわからなかったが……

多少身体は大きい…が、普通に優しそうなおじいさんに見える。



少年を見る瞳には慈愛が浮かんでいるし、本当にこの人が父を激昂させた人物なのだろうか?

……とても家族より仕事を優先するような人には見えない。



…姉の言う通りだったのだろうか?



てててっ。



どんっ!!


「っっふぐぅ!!」


「っ!こらこらバレル。こっちへおいで」


なんだ?考え事をしていたら、急に少年…(バレルと呼ばれていたか?)が飛びついてきてって…こら!引っ張るなよ!



「驚いたな…。バレルがもう懐いている。…なるほど、やはり血だな。彼等に愛される人間は少ない…。」



また祖父が何か言っている。

彼等…?血?またわけのわからないことを…ってそれより!


「こら!いい加減にしろ!」


少し強めに諭すと、多少不満そうだが離してくれた。なんだったんだ…。



「まぁまぁ。こちらにきて朝食でもどうだ?いろいろと聞きたいことも有るだろう?」


「っあぁ。お願いします。」




そうだ、いろいろと聞きたいことがある。母さんのこと、じぃちゃんが言ってた言葉。この店のこと。それに…昨日見た人のこと…。


一番近くの椅子に座り、じぃちゃんの瞳を見つめる。今はとにかく情報が欲しい。


じぃちゃんはわかっている。というように一度瞳を伏せると、少しお茶で喉を湿らせ、口火をきった。



「さて、今からお前に話をする前にひとつ聞きたいことがある。…揺蓮華人形ドールプランツのことを知っているか?」

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