出会い
やっと出てきました!
森の匂いがする…。どうして?
自分の手さえろくに見えない暗闇だが、確かにここは室内のはず。証拠に、俺の背中には確かに今通ってきたばかりの扉の感触がある。背中に手を回して確かめると、ドアノブに触れることもできた。
落ち着け!!今は匂いを気にしてる場合じゃない。奴らが気付かないとも限らないし、まずはここの安全を確かめるべきだ。
無理矢理焦りを押さえ付けて、辺りを観察する。暗いが、微かに手元が見えるということはどこかに光源があるはず。注意してみると、部屋の右奥の床の一部から光が漏れている。きっとあそこに扉があり、明かりが漏れているのだろう。幸い見栄えだけは悪くないし、強盗には見えないだろう。人が居るのなら、事情を話せば少しの間匿ってもらえるかもしれない。淡い期待を持ちつつ、俺は明かりに向かって歩いていった。明かりに近づくほど森の匂いが強くなることに気付かずに…。
コン コン
控えめなノックをする。普通は外の扉でするものだが、さきほどは急いでいてすでに中に入ってしまった。声をかけた方が早いが、敵意がないことを示すためにも、必要以上に丁寧な態度をとった方がいい。
コン コン
さきほどより少しだけ強くノックする。もしかしたら中に居るのはお年寄りで、耳が遠いのかもしれない。
コン コン コン …
……さすがにおかしい。明かりが点いているのだから、確実に人はいるはず。何か手が離せないようなことがあるのだろうか?
「…すみません。誰かいらっしゃいませんか?」
不測の事態が続いて冷静な判断を失っていたのかもしれない。失礼とは思いつつ、俺はドアを開いて中を覗き込んでしまった…。
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瞬間、俺の頭は真っ白に染まった。自分で見たものが信じられなかった。
完璧なバランスの肢体。細く長い手足、くびれた腰、小さな顔。
白磁のような肌は誰にも踏み荒らされていない雪のように白く滑らかで、真冬の湖のように透明感がある。
藍色の髪は星のきらめく夜空のようで、まっすぐ腰の辺りまで伸びていた。
閉じたピンクの小さな唇からはどんな音を紡ぐのだろうか。
髪と同じ色の睫毛が縁取る大きな瞳はどんな色なのだろうか。
しかし、それを確かめることは出来ないだろう。ライルにはそれが堪らなく悲しかった。
かの人は眠っていた。紅い薔薇の華が絡む十字架を持って。
漆黒の 棺に横たわる姿は、祈りを捧げる聖女のように清らかで、一枚の絵画のように美しかった。




