第20話 白と黒のカボチャの馬車
Club Phantom Rougeの地下サロンの重い鉄扉が開き、地上からの冷たい外気とともに、赤と青の警告灯が廊下を赤黒く染め上げた。
白と黒のツートンに塗り分けられた護送車という名の「カボチャの馬車」が、静かに獲物を迎えにやってくる。
両脇を警察官に抱えられ、泥のように崩れ落ちた身体を引きずられながら、ユウキは虚ろな目で地上へと連行されていった。残高ゼロのプライドも、偽りのドレスも、すべては夜の闇へと剥ぎ取られていく。
裁判は、異例の速度で即座に開廷された。
冷たい法廷の被告人席に座らされたユウキは、正面の最も高い壇上を見上げた瞬間、息を呑んで絶句した。
黒い法服を纏い、怜悧な菫色の瞳で分厚い判決文を見下ろしているのは、あの地下サロンで自分を冷酷に踏み躙った男――白ジャケットの紳士、レム判事その人だった。
裏社会の処刑人などという生易しい幻想ではない。男は、最初から法と国家の権威そのものを背負った、本物の裁判官だったのだ。
傍聴席の最前列には、黒のスーツを隙なく着こなしたレンブラント中佐が腰掛け、チェック柄のネクタイを整えながら、冷たい菫色の視線を被告人席へと突き刺している。
法廷に、レム判事の滑らかで氷のように澄んだバリトンボイスが響き渡る。
「……主文。被告人ユウキ・ナガサトを、懲役〇年に処する。執行猶予の余地は一切認めない」
木槌が硬質な音を立てて法廷に鳴り響いた。
Cメジャーの明るい陽気さを気取り、世界の中心で踊り狂っていた道化師は、自らが掘り起こした底なしの地雷原の中で、文字通り冷酷な実刑へと処された。




