第3話 波乱の出張開始です?
テラ様との交信を終え、辺境伯の部隊を待つ間、私の今の格好は問題ないか気になったので着ているワンピース(シンプルな紺色のパフスリーブ)を鑑定してみた。
「えっと、これも唱えればいいのよね、『鑑定』!」
【女神が機織りしたパフスリーブワンピース:紺色】:アラクネの上質な糸を女神が機織りし、仕上げたもの。
伝説の武器、神級武器のみ傷をつけることができる。
・・・オーバーテクノロジーにもほどがあるのでは?いや、テラ様からの贈り物、大事に使わせてもらおう。足元は編み上げブーツ。きつくもなく緩くもない。歩きやすい。これも良いものをいただいたんだろう。とりあえずこれも鑑定、鑑定っと。
【神獣の編み上げブーツ】:神獣が死んだ際にとれる皮を使い、作られたブーツ。
いくら歩いても、まめもできず、蒸れない。疲れにくい。
これも良いものだ!これなら、いろんなところに歩いて行ける。ありがとう、テラ様!あと、この肩掛けカバンね、どれどれ・・・
【マジックバッグ】:肩掛けカバン型。 見た目以上にものを収納できる。ただし、生き物は入らない。容量は5㎥。時間経過はしない。
これもすごい、熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままってことよね、便利!
~辺境伯部隊視点~
魔の森での魔獣討伐を終え、領都フォレスト・サジへあと少し。森の入り口辺りが騒がしい。新手の魔獣かと、部隊に緊張が走る。おそるおそる近づいていくと、どうやら少女の声がする。何故こんなところにと怪しく思いながらも近づいていく。姿が見えてきた。1.3メル(130㎝)くらいの小柄なおそらくハーフリンクの少女だった。何者かもわからないので、警戒しつつ、斥候を担当する騎士が尋ねた。
「君、どうしてこんな危険な森の入り口にいるんだい?名前は?」
「あ、あの、私カエデといいます。両親とはぐれてしまって。ここまで逃げてきたんです。一緒にフォレスト・サジまで行く予定でした。」
「そうか、ここまでの道中、人らしい人には出会わなかったよ。我々はこれからフォレスト・サジまで帰還する予定だ。」
「そうですか・・・あの、もしよろしければフォレスト・サジまで同行してもよろしいでしょうか?」
「私だけの判断では致しかねない。確認してくるからそこで待っていなさい。」
「はい、わかりました。」
その返事を聞くと、騎士は部隊へ戻り、辺境伯ドミニク・サジタリアスに報告した。
「どうだった、怪しい者だったか?」
と辺境伯。
「いえ、ただの少女のようです、我々を見ても何者かわかっていない様子でした。」
との報告を受け、辺境伯は、
「そうか、魔獣討伐で皆疲れがある。ここまで来て戦闘にならずに済んだのはよかった。その少女はどうするつもりなんだ?誰かを待っているのか?」
騎士は言いにくそうに、
「両親を待っているそうです。ともに領都に向かう予定だったようです。しかし、ここまでの道中人には会いませんでした。おそらく少女の両親は・・・」
「そうか・・・それは気の毒な事を聞いてしまったな。少女はフォレスト・サジまで行くんだったな、よし、我々との同行を認めよう。ここは危険な場所だからな、何があるかわからん。」
「承知いたしました。早速、少女に伝えてきます。」
というと、騎士は少女のもとにやってきて、
「同行が認められたよ、ご両親のことは残念だが、ここは危険だから我々と離れよう。」
「はい、ありがとうございます。」
~カエデ視点~
っふー・・・緊張したぁ。とっさに嘘ついちゃったけど大丈夫かな?でも、そうとしか説明できなかったんだよなぁ。とりあえずはフォレスト・サジまで行くことができそうです、テラ様。ほっとしたら、おなかすいてきちゃった。領都に着いたら、ごはん食べられるお店探そうっと。・・・あ、キイチゴみっけ!摘んどこっと。
森を抜けて、街道を辺境伯の部隊と一緒に歩いている。部隊は20~30人ほど。最後尾を歩いていると、前方が何やら騒がしくなった。なんだろう?
「・・・おい!大丈夫か!?くそっ、遅効性の毒か!」
部隊に緊張が走った。え、さっきの騎士さん、倒れてる・・・毒?どうしよう、何かできないかな・・・?
「衛生兵、毒消しのポーションを早く!」
「はい!・・・なんてことだ、ポーションが効きません!」
「何!?」
そういえば、テラ様からもしもの時にって、お薬持たせてくれたっけ?それなら助けられるかな?
「あの、すみません。」
私は倒れている騎士さんのところまで行き、
「これ、使ってください。」
アイテムボックスから10㎝くらいの小さな小瓶を差し出した。
「なんだそれは・・・まさか、万能薬か?!なぜこんな貴重なものを・・・?」
「話は後です。今は騎士さんを助けてあげてください。」
小瓶を衛生兵に手渡した。
「これなら・・・!」
衛生兵は騎士さんに万能薬を飲ませた。すると、騎士さんの体が光り、やがて落ち着くと目を覚ました。
「私は一体・・・?」
「よかった!気が付いたんだな。」
「あぁ、さっきまで苦しかったはずなのに一体何が?」
それを聞いた衛生兵と仲間の騎士さんが私の方を見て、
「彼女が持っていた、万能薬が効いたんだ。」
「万能薬を?!・・・そうか、命を助けてくれてありがとう。」
騎士さんはお礼を言ってくれた。
「しかし、万能薬なんて貴重なものを持っていたな。そのおかげで助かったんだが。」
私は、
「これは家宝で・・・先祖が残しておいたものです。」
衛生兵は、
「詳しく聞きたいところですが・・・それは難しいようですね。我慢します。あ、私は衛生兵のローワン。こっちは、斥候のラークと、タンクのヴェクス。」
「私はカエデです。助かってよかったです。」
そう会話していると、辺境伯が近づいてきた。
「ラーク!無事か?!毒にやられたと聞いたが。」
「閣下、このとおり無事です。彼女が偶然万能薬を持っていたようで、それに助けられました。」
それを聞いた辺境伯は、
「何、万能薬を?!・・・どこで手に入れたか聞きたいが、まずは私の騎士を助けてくれて感謝する。」
そう言って、私に向かって頭を下げた。
「あわ、あ、あの、ラークさんを助けたかったので・・・頭を上げてください!恐れ多いですぅ・・・」
辺境伯は頭を上げ、にやりとして、
「そうか、そう言ってもらえるとありがたい。君のおかげで命が救われた。さぁ、フォレスト・サジまであと少しだ、気を抜かず進もう。」
そう騎士さんたちに指示し、隊列を再度編成し、フォレスト・サジまで進む。あとはトラブルもなく、無事にフォレスト・サジの外郭壁までたどり着いた。部隊の方は専用の入り口から入るらしい。私は正面口から入ることにした。
「ここでお別れだな。街で会うかもしれんな、その時はメシでもおごるよ。」
と、ラークさん。
「ぜひ!美味しいもの、楽しみにしてます!」
「そう言えば、閣下がカエデにお礼をしたいとの仰せだった。」
と、ヴェクスさん。
「えぇー!お礼なんて、ここまで連れてきていただいただけでも十分なのに・・・」
「まぁまぁ、考えておいてよ。」
と笑いながらローワンさんは言った。・・・小市民には恐れ多いんです~。そんな会話をし、彼らと別れた。
正面口はなかなかの行列。1時間は余裕でかかりそう。私は前に並んでいた、商人のオズワルドさんと仲良くなり、いろいろとこの領都フォレスト・サジやベルトラント王国について教えてもらった。
このベルトラント王国は、肥沃な大地と明るい海に恵まれた豊かな国で、他国に狙われそうだが、西には魔の森、東には霊峰テラメルがあり、王国の歴史上攻められたことはないのだそう。それに、屈強な騎士と卓越した魔術師が数多くおり、それも相まって余計に攻めづらい国となっているのだという。領都フォレスト・サジは海に面しており、海産物も豊富で、貿易港としても栄えている。・・・美味しいものがたくさんある、そう確信した。・・・っとそろそろ私の番だ。オズワルドさんと別れ、私は身分証がないので、個別の窓口に並んだ。
「こんにちは、お名前とご用件をお願いします。」
と係員の人(犬耳ついてる!!)に言われ、ドキドキしながら、
「こんにちは、私はカエデといいます。フォレスト・サジには滞在するつもりで来ました。」
そう答えると、
「では、この水晶に手をあててください。」
「はい、わかりました。」
不思議に思いながら、手をあてると、白く光った。
「はい、犯罪歴もないようですね、入っていいですよ、身分証を作成したければ、冒険者ギルドか商業ギルドがおすすめですよ。」
「ありがとうございます、行ってみます。」
そう言って、窓口を後にした。門をくぐると、そこは本当に異世界なんだと、感慨深く思った。門前広場があり、そこから大きな道が三本伸びている。中央の道の先に、辺境伯の居城が見えた。
「係りの人は、冒険者ギルドか、商業ギルドをおすすめしてたよね?うーん、私運動音痴とまではいかないけど不得意だし、スキルに料理とか生産とかあったはず。よし、商業ギルドにしよう!」
と、歩き出した。
「そういえば、場所も聞いてたんだった。確か右の大通りに面しているって・・・あ、見えた!」
商業ギルドは三階建てのレンガ造りの大きな建物だった。入り口の上に、天秤のエンブレムがある。緊張する・・・よし、入るぞ!意を決して中に入ると、木製の品の良いインテリアがあり、奥にはカウンターがあって、窓口は5つあるみたい。4人の女性と1人の男性が窓口をしていて、女性のところは人が多くて、空いていた男性のところに並んだ。
「次の方どうぞ。」
そう言われ、
「こんにちは、よろしくお願いします。」
「はい、今日はどのようなご用件でしょうか?」
私は、
「ギルドで身分証を作りたくて・・・」
男性は門のところで見たような、水晶を取り出して、
「では、こちらに手をあててください。」
恐る恐る手をあてると、白く光り、ステータスウインドウが現れた。
「これは、犯罪歴とその方のスキルや能力を表示してくれる魔道具なんです。あなたのスキルは・・・」
【名】カエデ
【種族】ハーフリンク
【職業】料理人
【スキル】鑑定 アイテムボックス 料理 生産 採取 農業 生活魔法
「めずらしい、鑑定とアイテムボックスをお持ちなんですね。」
軽く驚きながら、私が不安そうな顔をしたのを見て、
「めずらしいですが、全くいないわけではないんですよ。だいたい200人に1人くらいです。」
「意外といらっしゃるんですね、ほっとしました。」
男性は笑いながら、
「そうでしたか。商人としては欲しいスキルですので、お声がかかるかもしれませんね。・・・これがギルドカード、身分証の代わりになるものです。なくさないよう、お気を付けください。」
そう言って、鉄製のカードを手渡してきた。それを受け取ると、
「ギルドのルールについて、お話いたしますがいかがされますか?また明日でもよろしいですよ?」
私の顔を見て、そう言った。だいぶ疲れた顔をしていたみたい。
「はい、そうさせてください。また明日、お伺いします。」
私は商業ギルドをあとにした。・・・さて、今日の宿を探さなくちゃ!と商業ギルドに戻って、おすすめの宿を聞きに行った。




