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ロジハラ幼馴染がクンカーの変態で俺の衣類をオカズにしてるってマ?  作者: ミソネタ・ドザえもん


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関東大会

 早朝と呼ぶには早すぎる時間に家を出た。真夏だと言うのに、陽の光すらロクに灯っていない時間だった。

 母の運転する車で学校へ行き、そこから俺は同じく関東大会に出場する平塚と一緒に、先生の運転するマイクロバスに乗り込んで今日開催される関東大会の会場へと向かった。

 今年の関東大会の開催地は、茨城県。都内に住む俺と平塚にとって、そこは少し遠すぎる開催地だった。


「じゃあ、着いたら教えるから寝てていいよ」


 真夜中の移動。先生はそう言って俺達に僅かな安息を与えようと労ってくれた。すぐに、平塚はその言葉に甘えて寝静まった。

 反面俺は、他人のいる空間で寝ることに違和感を覚えたことや一度起きたら中々眠れない質も影響して、車窓から外の景色をただぼんやりと見ていた。高速道路を走っている車からの景色は、正直に言えばそこまで面白みに富んだ光景とは言えなかった。


「ふわああ」


 結局、会場に到着し車から降りた途端、俺は大きなあくびをかますのだった。


「先輩、まさかずっと起きてたんですか?」


「……まあ」


「はあ。体調管理って言葉、知っています?」


「う、うるさい」


 平塚の発言は耳が痛かった。言っていることはあまりにも事実で、なんとも情けない文句しか口から漏れなかった。相変わらず平塚は、俺に呆れた様子だった。


 まもなく、関東大会は開会式の宣言の後、各コートで試合は開始された。活気ある声が、コート、コート外から溢れ出した。

 関東大会の日程は、今日、明日のわずか二日しか設定されていなかった。しかも、明日は団体戦に使用されるから、個人戦は今日一日で完遂させる計画らしい。

 スケジュール表には来週の日程もあるが、ここはどうやら予備日らしい。関東の僻地で大会を開催する都合上、生徒や先生方の負担も鑑みての判断らしい。だったら最初から都内で開催しろよと思うが、大人の事情と言われれば閉口せざるを得なかった。

 とにかくそんなわけで、今日は超タイトスケジュールで試合が進捗されていくこととなる。体調管理。さっき平塚が口酸っぱく俺の不手際を責めたのは、そういう背景があってのものだった。そうだと思いたい。


「やあ、アキラ君」


 とにかく、今日はペース配分を間違えることなく試合を進めねば。


「……あの、アキラ君?」


 一応、優勝を目標にしている身だし、その辺を見誤るわけにはいくまい。


「あの、アキラ君っ!」


「……なんだい、塩田君」


 さっきから無視していたと言うのに、凝りない男に俺は呆れ顔で返事をした。

 ようやく振り向いた俺に、塩田君は満面の笑みで喜んだ。少し、肝が冷えた。


「……なんだか早朝から疲れていないかい?」


「君に朝から話しかけられたからね」


 体調を心配された、というのに、どうも彼相手だと卑屈な返事をしてしまう。


「今日は、この前の大会のリベンジに来た」


 この前……都大会。俺は久しぶりに、珍しく、塩田君に勝利を収めた。ここまでの俺達の勝敗、俺の三勝三十四敗。

 ……はっきり言おう。


「……嫌味か?」


「ち、違う! 僕は本気だよ!」


 歯ぎしりしているその様子に、嘘偽りは感じられなかった。ただ、嫌味ではない、と言われる方が、内心気分が悪いのは気のせいか。


「……とにかく、絶対、今度こそ、君に僕はリベンジするんだ」


 意気込む塩田君に、


「先輩より前に、俺を倒してもらいましょうか」


 そう言って噛み付いたのは、どこで話を聞いていたのか、平塚だった。

 今大会のドローで、俺は平塚や塩田君と真逆の山に入った。このバチバチとした視線をぶつけ合う二人と、俺がどちらかしか戦うことは出来ないのだ。


「……クラブ出の温室育ちが、生意気に張り合ってるんじゃねえ」


 背後から、口の悪い声が聞こえた。

 振り返った先にいたのは……。


「……誰?」


「さあ?」


「戸郷幸治っ! 神奈川県大会優勝の戸郷幸治だっ!」


 俺は勿論、戸郷君の名前を忘れていなかった。ただ黙っていたら、何だか下手な漫才に付き合わされた。


「神奈川県大会の優勝者が、何か用?」


「……都大会ベスト四の塩田」


 塩田君が露骨に顔をムッとさせたのがわかった。


「準優勝の奥村」


 イラッ。

 準を強調するな、準を。


「そして、優勝の平塚。お前ら全員、俺がぶっ潰す」


「いや、平塚と塩田君は先に当たるから、どっちかとしか当たれないぞ」


「うっせー! バーカ! バーカ!」


 ……何なん?

 まもなく、場内アナウンスで、三人は呼ばれていった。


「じゃあ、アキラ君。決勝で会おう」


「先輩、また無様な姿を大衆に晒させてやるよ」


「奥村、首洗って待っとけ」


 三者三様。去り際、三人は俺に向けて各々の気持ちをぶちまけてきた。

 ただ要約すると、三人の言いたいことは全員同じだった。


『ぶっ潰す』


 ……なんで俺、こんなに敵対視されているのだろう?


「とりあえず、一番口が悪いのは我が後輩だった」


 どんな教育しているんだ? 泣きそうになるから本当にやめてほしい。


「あっ、アキラさんいた」


 また背後から声がした。

 振り返ると、そこにいたのはユウキだった。


「ユウキ。そうか、女子も試合、今日だったか」


「はい。お互い頑張りましょうね」


「……そうだな」


 アハハ、と俺達は微笑みあった。本当、こうして話している内は、とても良い子なんだけどなあ。


「……あたし、アキラさんのこと全力で応援します」


「あ、ありがとう」


「はい」


 俺を激励するようにユウキは続けた。


「今回もいつもの、よろしくお願いしますっ!」


「……これさえなきゃなぁ」


「え? 何か言いました?」


「ううん。何も言ってない」


「あたし、大会日のテニスウェア、初めてなんです。でも、結衣ちゃんからすっごい聞かされてて」


「……何を?」


「それはもう、凄いって」


「……そう」


 なんで聞いたんだろう。甚だ疑問である。


「だから頑張ってください。絶対に、絶対ですよっ!?」


 圧。


「……後で、結衣ちゃんもこっちに来るって言っていました」


 ピクリ、と反応してしまった。

 先日のデートのこととか、その後の激励だとか、大会当日だからか色々思い出したのだ。


「……結衣ちゃん、言ってましたよ」


「何を?」


「匂いは鮮度が命!」


「じゃあ、俺そろそろ試合だから」

半年以上前に関東大会のレギュレーションを調べたことがある。忘れたから完全オリジナル。許せ。許して?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] とっくにエタッたと思ってたのに:(´◦ω◦`): [一言] 更新されてるのを見つけてめっちゃ嬉しい...ゆっくりでもいいのでこのお話も見捨てないで更新してあげて(´TωT`)
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