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ガラクタの学園  作者: 夕霧湖畔
第二部 平和な学園編
35/211

03.購買祭開始

 購買祭までそれなりの日数があったが、発見出来た呪詛持ちは十人程度に止まった。

 合法的に呪詛を吸収出来るのでグラトニーもそれなりに本腰を入れたが、生憎と呪詛を体外に放出するようになるまで進行しないと発見出来なかった。

 加えて学生が白と決まった訳では無いので、極秘の調査となる。するとグラトニーの評判は既に無能人というレベルでは無いので、迂闊に他寮に近付くと騒ぎが起こる。


「もういっそ生徒で人体実験させてくれれば、私にだって呪詛を取る魔法薬が作れるんですけど……。」

 保健室での教師マタハリの呟きに、グラトニーは何故やらなかったのかと首を捻る。


「まあ単位は全て取ったから、購買祭への参加に支障は無いわ。」

「いや単位取れなくても参加出来ますよ。

 元々生計や補講なんかで落ち零れた生徒への救済措置として始まった行事です。」

 本当は教師ドロテアが居ないかと思って訪れたのだが、どうやら既に見回りに向かったようだ。取り敢えず会場を巡る旨を告げて後にする。


 結局資金稼ぎは全ての呪具を学園に売却して済ませた。

(結局パソコンも思ったほど活用出来て無いのよねぇ……。)

 メモ帳替わりや資料整理に活用出来ているが、修理の当てが無いので慎重にならざるを得ないのだ。ウイルス対策が更新されないので、地味に外部端末も使い辛い。

 そこそこ稼いではいるが、対価が物納も多いので、現状出費の方が多いのは困る。

(一応他の学生達より稼いではいるのだけど。)


「お~い、グラトニー。こっちこっち。」

 今回集まったのはアヴァロンとジュリアンの二人だけだ。

 他の面々も参加はしているので、何処かで商売側か購入側で会うかも知れない。


「さて。露店は全て校庭に用意されているんだったわね。」

「ああ。何列かに分かれているが、基本的に近い方から一学年、二学年と並んでいる。

 と言っても一番奥の五学年は近寄らない方が良いらしい。」


 卒業出来ずに長年過ごしている生徒達の中にはかなり過激な手段で客引きしたり、強盗同然に屑商品を売りつける者が毎年後を絶たないという。

 四学年は単位さえ取れればと言う希望がまだあるが、五学年は単位を揃えても後輩に勝てない落ち零れというレッテルが張られた集団だ。

 必然商品への期待も低いし、生活に困っている学生も多い。


「食べて良いなら行きたいけど、こっちから仕掛けたら駄目だろうしなぁ……。」

 アヴァロンがちょっとだけ悩んだ声で応じるが、グラトニーが止める。

「魔力も薄いだろうし、味は期待出来ないんじゃない?」

「それもそうか~。」

「いや、当たり前の様に学生食べるとか言うなよ。」


 尚、周囲は皆探るような眼を向けているが。

(お、おい来たぞ、一年の二大巨悪だ。絶対目を合わせるなよ。)

(頼むぞお目付け役!俺達の安全はお前に懸かっているんだ!)

 等と随所で囁かれているのは御愛嬌だ。


――そして。

「分かってはいたけど、一年で呪具売ってる連中には碌な物が無いわね……。」

 想像以上、というかよく考えれば当然か。

「そりゃ一学年主席候補が比較対象だとな……。」

 比べられる方が哀れというものだ。薬草学や魔獣学なら対抗出来る学生も居るが、商品を用意出来る分野ではグラトニーがトップだ。


 料理の腕も、良くて一人暮らしレベルをプロ級が寸評したら当然の結果である。

 一目でゴミ扱いされ轟沈した同期も一部はジュリアンやポートガスの口から腕を聞かされているので、下手に反論して勝負も挑めない。


「うん。正直ここに連れて来たのは悪かったと思ってる……。

 というかグラトニーって料理絡みだと評価ホント厳しいよね……。」

 普段人目を気にしないアヴァロンにもドン引きされると流石に気にならなくは無い。


「そんなに変かしら?」

「変と言うか、手加減が無い。ここ料理学校じゃないし……。」

「的確に甘い点を抉っていたからな。

 料理美味い奴の方がダメージでかいぞアレは。」

 後今後購買祭でグラトニーは料理を出さないよう念入りに注意される。

 妨害無関係に周りの料理屋台を全滅させかねないとまで言われた。


(ふむ。またね。)

「なぁ。さっきから肩を往復しているの、使い魔だよな。

 教師に何か頼まれているのか?」

 グラトニーの方から梟が飛び立つのを見て、ジュリアンが先程から気になっていた点を口にする。


 時々グラトニーが目元を抑えながら立ち止まったかと思えば、何かを探すような素振りをした梟が一点を睨んだ後に飛び立ち、やがて戻ってくるのだ。

 話の最中にそれをされたら気にならない筈も無い。


 最初は何かあるのだろうと黙って見ていたが、そろそろ一学年も見終わった。

「そうねぇ。ちょっと一旦用があるし、あなた達に話していいかも聞いてくるわ。」

「え?いや、それなら俺も……。」


「ん~。じゃあ二学年は一旦自由に回ってみる?

 次の単位時間で教室に集合して、その時今の答えも聞くとか。」

「もしかして、あなたなら?」

「区別なら付くねぇ。面倒だから秘密ね?」

「ええ。あちらに巻き込む気は無いわ。」


 教師側に付かれて困るのはグラトニーの方だ。何よりアヴァロンから呪詛の気配を感じた事も、見えた事も無い。

(実質、魔女以外も呪詛が見えるって教えて貰った訳だしね。)

 教師が見えないアドバンテージを気軽に明かしたくもあるまい。


「あ!ジュリアンも一旦休憩するの?」

 出来れば一緒に回りたかったが上手い言葉が見当たらず困っていたジュリアンに、露店で見かけなかった同期の娘が気付いて声をかける。

先駆者(パイオニア)寮の娘ね。こっちは何もないか。)


「こっちの用事がどれくらいかかるか分からないし、一旦解散で良いと思うわ。」

「いいの?!じゃあジュリアンは私達と回らない?」

 事情は分からないが嬉々として感謝の言葉を述べる同期娘の反応は、意味が分からないがグラトニーにも都合が良い。



 それじゃあと告げて二人と別れる。

 保健室に着いたグラトニーの元には既にフクロウが戻って来ている。

「よし。流石にここまで進行していれば観測出来る。」

 この学生達は黒だと教師ドロテアが教師マタハリに断定していた。

 ベットで寝ているのは先程グラトニーが梟を通して観測し、撮影した連中だ。


「お。来たかい。今日の報酬は全部終わってからまとめてで良いかね?」

「ええ、昨日までの分は一旦受け取ったしね。」

 今は追加報酬よりも合法的に吸収出来る呪詛の方が美味しい。


「呪詛を感知する呪具、もっと前に取り寄せられなかったんですか?」

 ドロテアが持っているのは水晶を虫眼鏡にしたような形の呪具で、見た目も仰々しい。

「コレ、グラトニーが持って来たハッカ飴を使ってあたしが作ったんだよ。

 それに上司に聞いたところ、目に見えない呪詛ってのは弱いんだって言われた。」


「弱い?」

 グラトニーの呪詛を知っているマタハリは疑問の声を投げかけたが、当のグラトニーは成程と頷ける回答だった。


「そう、弱いんだ。

 本来呪詛って言うのは目に見えて、相手が認識するほどに強くなるんだ。ヤバい呪詛は必ず視覚化するらしい。

 学生達の被害は甚大だけど、それは学生が弱いからだってさ。」


 視線で確認を求められたので、一般論としての回答を選ぶ。

「感覚的に言えば、用途、対象を絞る程強くなるんじゃないかしら。

 前に私が教室で襲われた時、皆目の前が赤くなったって言ってたでしょう?」

 行使側の認識と相手側の認識。双方に訴えかける程強いのだ。


「「…………。」」


 何かを呑み込んだ教師二人が咳払いして話を戻す。

「弱い呪詛を感知する呪具ってその分貴重なんだよ。

 魔女狩りを拒んでいるのは学園側で、あたしだって引退した魔女狩りの再就職って形で入っているだけじゃん。

 精鋭に使わせるなら兎も角、事故死して学園長の()()()()()しそうだから貸せないって言うのが魔法議会の言い分。魔女被害の責任は学園側が負うべきだとさ。」


「「「……。」」」


 学園長の『手元に紛失』とか、交渉の余地見当たらねぇわコレ。

「えっと。あの。そのですね。教師としては、学生と自分達の命は大事な訳でして。

 その。教師ドロテアの作られた呪具は、如何程の……?」


 脂汗ダラダラなマタハリに、ドロテアは首を横に振る。

「作ってみて分かって来たけど、呪詛ってマナやエーテルとは別物って感じなんだ。

 ハッカ飴はまだ観測出来ないし、ハッカ飴と別種の呪詛を観測出来るかはグラトニーに協力して貰って無いから未確認。

 この水晶で生徒の顔が見える距離で漸く観測出来る……あのグラトニーさん?

 その三本指の意味は一体……。」


「今見ているんでしょう?結果は?」

「あ、うん。人差し指だけ何かが出ているのは見えたかな……。」


 魔女狩り用に与えられている呪具はそもそも識別用で感知用じゃない。

 そして今グラトニーが形状を操作出来る呪詛は、七種類の内()()()()の『()()』と中指の『強欲』で複製した他人の呪詛だけだ。

 そして薬指は濃度が()()()()』なので。


「強い害意の呪詛だけが辛うじて観測出来るってだけねぇ。

 ハッカ飴以外も観測出来るっていうのは確認出来たけど、距離は手が届く間合いが限界とか、実用性に乏しくない?」


 後ドロテアが目を瞬かせた時に呪詛を解いたので気付いていないようだが、人差し指の濃度は徐々に薬指に近付けていた。

 正直隠す程の手間でもない。本気で潰すか敢えて見せようとしない限り気付かれないと見て良さそうだ。


「ま、まあ客観的に確認出来るようになっただけでも進歩な訳で。

 引き続き見つけたら報告頼むわ。」

「大物見つけたら、学園街に行く許可も欲しいわ。」

「それは同行者がいる時に限ります。」

 ちいと舌打ちして席を立つ。今いる学生の呪詛は会話中に吸収し終えていた。


(出来ればハッカ飴の魔女は単独で接触したいわね。)

 服従するなら殺す気は無いが、敵対するなら教師達との繋がりは重要だ。

 学園長と敵対するまでグラトニーから喧嘩を売る気は無かった。


 初登場な先駆者寮の同期娘。モブじゃないですw

 でもグラトニーが名前を認識するまでは事実上のモブ扱いw

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