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26.ストレスと誘い。

 

 死ね。


 おっと、挨拶間違えちゃった。


 いけないいけない。一日の始まりの大切な挨拶なんだから、ちゃんとしないとね。


 おはようございます。良い天気ですね。


 青々とした、曇り一つ無い青空。清々しい朝ってこれの事を指しているんだな、と理解出来るくらい。


 それに対して私の心の中には暗雲が立ち込めている様な暗い空模様(きぶん)です。ははっ。


 ……具体的に言うと挨拶を間違えそうな位、だね。さっきやらかしそうになったやつ。


 わざとじゃないんだよ。わざとじゃ。


 ツン薔薇の攻略を高ペースでやったせいで、何か色々とやばい感じになってる。


 例えるなら、毒性の植物の毒を溶いた物に、魔物とか動物の毒を混ぜて、一日位煮詰めて濃くした物を桶一つ分飲んでる感じ。もしかしたらもっと酷いかも。


 人の言語にこの感じを現す言葉があるとは思えないね。


 ……本当に、面倒臭い。殺そう。やっぱまだ殺せない。まだ待て。


 この自問自答もどきも、もう何回目なのか覚えてないや。


 めっちゃくちゃやったってだけは覚えてる。


「はぁ」


 ……おっと。心の中でだけでしようとしていた溜め息が実際に口から出てしまってた。周り誰も居ない? ……大丈夫かな?


 ……誰も居ないね。良かった良かった。出来る限り素の状態は見せない様にしないと。


 攻略対象(あいつら)の前でだけ良い顔してるとか言われると癪に障るからね。出来る限りずっと完璧な状態を維持しなきゃ。


 ま、どうせ妨害が来れば言われるんだけど。


 言われる回数が少ないほど私の精神衛生に良いから。


 ……うん。


 朝からこんな憂鬱な気分のままじゃ演技に支障が出そうだねぇ。


 ……切り替えて行こうか。スマイルスマイル。


 ▲ ▽ ▲ ▽


 そういや、今朝はどうやらヴィルマに対してちょっかいを出してくれた奴が居たようで。


 何故か(・・・)その子の髪の毛先が切れたらしいね。こわーい。


 なんかそいつが色々と喚き立てていたけど、何処からかいきなり現れたエルザさんが一瞬で収めてくれました。


 髪が切れたのは誰のせいかって?


 ――――知らない知らない。私のせいじゃないよー。たぶん。きっと。


 最近慣れてきたお陰で、氷の整形がやり易くなった事も何も関係ない。剃刀刃っぽくした氷ってあんなに切れるんだね。


 完全に無関係ですよ、うん。


 んで、今回はデートイベントのフラグ立て。


 最速で進めるとここまで速いんだなぁ。


 その分ストレスが溜まる訳だけども。


 ……で、武術授業。今回は一対一の試合形式らしい。


 もうステータスに関しては上限近いのでもうどうでもいい。


 ただ、ストレスを発散するためにちょっと全力で動いてるけどね。


 右、上、突き、右。下から、また右。


 あ、それフェイントでしょ。


 あー、剣筋読める読める。楽だね。


 剣を持った人の動きなんてもう見飽きる位には見たしねぇ。


 諸々の体力とか動体視力的なそれが身に付いた今、見切るのなんて楽勝ですよ。


 最初の頃の苦戦していた私とは大違い。


 物語の主人公って凄いよねぇ。何でも出来るんだから。


 ……避けるの飽きて来たな。


 そーい。


「ぐあっ!」


 対戦相手の剣を強く打ち付けて吹き飛ばす。


 これが一番簡単だと思います。


「……対戦、ありがとうございました」


 挨拶をして終わり終わり。


 んで、好感度一定、この日、その他諸々、発生条件満たしたので――――


「……また、会ったな」


「あ、エリク様、こんにちは」


 出たな諸悪(ストレス)の根源。


 ……いや、来てもらわないと困るんだけどもさ?


「何か用ですか?」


 浮かべるのが精神的に大分きつくなってきた笑顔で聞く。


「…………そうだ。明日、何か用事は?」


 ツン薔薇は、一瞬何か間を置いた後、短く答えた。


 何か考えでもしているのか、視線は若干下を向いている。目は薄茶色の長い髪の奥に隠れていて、あまり感情が読み取れない。


 まあこいつ含めて全員の感情だとかはほぼどうでもいい。


 最後の絶望に繋がるそれが読めれば後は本当にどうでもいい。


 ……分かりたくもない。


 まあ、そんな関係無い話は置いときまして。


 ようやく、ツン薔薇が顔を上げる。


 さっきまで隠れていた目はもう何時も通りの何処かぼんやりした物に戻っていた。最初からそうだったのかもしれないけども。


「明日、ですか。確か、何も無い筈です」


「明日、三時頃にいつもの場所に来てくれ。……また明日」


 そう言って、立ち去ろうとするツン薔薇。


「……あれ? いつもの場所は分かるとして、明日、何をするんでしょうか……?」


 まあ一応分かるんだけど、ここまで台詞だし、言わなきゃね。


 でも、やっぱこう、分かるだろ? っていう、自己中心的な感じがして殺したくなってくる。


 ……はい、毒桶が一個追加ー。もう正直飲みきれない。


 うん、ヴィルマの件が解決したらすぐ殺そう。そうしよう。


 ――――勿論、殺すのを躊躇う理由も無いんだけれどね。


 私はぐっと一度背伸びをして、その場を後にした。

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