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王子と魔道具屋4

短い。

3と一緒にすればよかった。

「場所は?」


魔道具屋を出てすぐに、一番肝心なことをグレイに問う。


「南門近くの古屋敷だ」


「……あーあの幽霊屋敷か」


「「幽霊屋敷?!」」


イスリットとリゼッタが声をそろえる。心なしか顔が青いような。


「ちょっとやめてくれる?あたしその手の話苦手なんだけど」


「私もあまり得意ではありませんな」


「あら、とりつくろわなくてもよろしいわよ、二人とも。夜にその手も本を読んだらトイレに立つこともできないほどに怖がりではありませんか」


うふふふ、と笑うメイリース。その瞳は獲物をいたぶる肉食獣のようである。怖すぎる。


「「そ、そんなことはない!!」」


声をそろえて無理やりな笑顔を浮かべると、リゼッタが話題を変えるようにそれにしても、とつぶやいた。ずいぶん無理やりな話題転換だが、彼女にとって幽霊の話はこれ以上続けるとろくなことにならないのだろう。というより、メイリースが何をするつもりなのかが問題なのかもしれないが。


「どうにも信じられないわ。だってそのセシール様、だっけ?その人はウィステリア王国の次期国王様なのでしょう。他国の、しかも伯爵令嬢を誘拐なんてしてもまるでメリットがないわ。むしろデメリットしかない」


リゼッタの言うことももっともである。一国の王子が他国にやってきて、しかも貴族の令嬢を誘拐したなど、外聞が悪いにもほどがある。王子にとっても、下手すれば王位継承権をはく奪されるうえ、国同士の争いに発展する危険だってある。彼はそのような愚かなことをする王子には見えなかった。


グレイも俺のそんな気持ちを察したのか、ふと表情を緩めて補足する。


「ああ、もちろん誘拐、というには少々語弊がある。セシール様はどうやら誘拐、という名目でアリーリャ嬢を保護されたらしいのだ。もちろん拐ったのがセシール様だというのは我々と伯爵しか知らぬこと。使用人にはもちろんのこと、奥方にも犯人は秘密にしてあるようだ」


当然のことだが、とグレイが俺たちを安心させるようにうなずく。リゼッタなどは「それってかなりの機密事項よね?もしうっかり情報が漏れたりしたら……」とかなんとかぶつぶつ言っていたが。


「保護」


しかし俺はその「保護」というのが引っ掛かった。しかもあのセシールがわざわざ、とういうのだ。


現在、かの伯爵家は公爵家よりも厳重な警備が敷かれている。一見しただけではわからないのだが、そこかしこに国王直属の暗部を配置してある。もちろん俺が彼女を守るために手配したものだ。戦力としては騎士団一個師団にも相当する。だというのに、あえてセシールが保護を名目に屋敷から連れ出したとなると、よほどの事態が起こったとみていいだろう。そもそも警備が厳重な屋敷から連れ出し、あえて手薄、というよりほぼ警備などないような街はずれの古屋敷に連れ込むなど正気の沙汰とは思えないのだが。


「もちろんそれには理由がある」


したり顔でグレイは言うが、当たり前だろう。理由もなくそんなことをされたら、一国の王子といえど容赦はしないぞ?


何となく納得がいかない俺たちではあるが、その間も歩き続けーうん、意外に健脚なメイリースにびっくりだ。臨月なのにそんなに速足で歩いていいもんなのか?どうなんだ?ー二十分も歩くと目当ての古屋敷にたどり着いた。


「く、これはっ」


リゼッタが予想以上だ、とうめく。その隣ではイスリットもまた顔色を白くさせていた。


屋敷は今にも崩れそうであり、壁の内側には木や草がうっそうと茂っている。土がいいのか、見慣れた草も倍くらいの背丈に育っているのに驚きだ。今度ここの土も研究してみようかな?


全体的に暗い雰囲気。はっきりって、リッチやスケルトンなんかが出てきても全く驚きはしないだろう。


「リッチやスケルトン、ゴーストなら別にいいわよ。この際ゾンビだって気にしないわ!」


でも幽霊はダメ、と顔を青くして言うリゼッタ。わからん。


「?ゴーストと幽霊の違いってなんだ」


「全然違うわよ!!ゴーストは魔物でしょ。幽霊はなんていうか人の怨念とか思念とか……とにかくろくでもないんだから」


よくわからんが彼女には何やら嫌な思い出があるらしい。思い出させないでよ、とかわめいている。


「まあ、どうでもいいが。怖いならここで待っておくか?」


「嫌よ、ここまで来たんだから行くわよ。こんなとこに叔父さんと二人とか余計に怖いじゃない!!」


周りは廃墟ばっかりだし、というリゼッタは本気で怖いようだ。やっぱりわからん。イスリットも今にも失神しそうだし、この二人、連れて行っても役に立つのか。


だがしかし、ついてくるというものを止めるわけにもいかないし、グレイが言うには二人の力や知識も必要なようなので、連れていくことにする。が、いい大人が、しかも一人鼻の知れた冒険者であるというのに十歳児の背中に隠れながら進むとかどうなんだ。


「まったく二人とも情けないわね?恥を知りなさいな」


メイリースがおっとりというがその眼は全く笑っていない。激しく同感であるが。


ともあれ先頭にグレイ、俺、リゼッタ、イスリット、最後にメイリースという順番で、俺たちは古屋敷の敷地内へと足を踏み入れたのだった。









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