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大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
96/2085

第41章 USSドナルドレーガン 第三次攻撃計画


1945年4月、沖縄沖。USSドナルド・レーガン(CVN-76)の作戦室は、未来の技術と過去の戦略が交錯する異様な空間と化していた。ロバート・ウェルズ艦長は、その重厚な会議テーブルの向かいに座るレイモンド・スプルーアンス大将と、彼の主任参謀たちに視線を向けた。


「大将、我々は沖縄での抵抗を、完全に読み違えていた」スプルーアンス大将の声は、苛立ちと焦燥に満ちていた。彼は机に広げられた1945年当時の作戦地図を叩きつけるように指し示した。


「B-29による戦略爆撃は壊滅的な失敗に終わり、半数以上が未確認の敵によって撃墜された。海岸に座礁した旧式艦が陸上要塞と化し、我々の戦車部隊と歩兵を側面から叩き潰した。そして、あの戦艦『大和』の砲撃は、目視できない距離からピンポイントで着弾する。これは、通常の戦術や情報収集では決して説明のつかない『異常事態』だ」。


ロバート・ウェルズ艦長は、静かにスプルーアンス大将の言葉を聞いていた。彼はOSSから提供された「未来からのタイムスリップ」という信じがたい事実を既に受け入れていた。自らの艦が「未知の超兵器」と認識されていることも承知していた。彼の指揮するニミッツ級原子力空母CVN-76「ドナルド・レーガン」は、この時代においては想像を絶する存在だった。


「大将、この異常事態は、我々が貴官の時代から来たことと無関係ではありません」ウェルズは落ち着いた声で切り出した。「我々の空母、USSドナルド・レーガンは、貴官方が知るどの艦とも異なる、原子力推進の航空母艦です。燃料補給の必要が事実上なく、事実上無限の航続距離と高速性を持ちます。そして、搭載する艦載機は、F/A-18E/Fスーパーホーネット戦闘攻撃機、EA-18Gグラウラー電子戦機、E-2Dアドバンストホークアイ早期警戒機、MH-60R/Sヘリコプターなど、貴官方のF6FヘルキャットやF4Uコルセアとは比較にならない性能を持っています」。


「我々は貴官方の味方であり、この戦いを勝利に導くためにここにいます。我が艦の存在は、日本を早期に無条件降伏させるための、絶好の機会となり得る、と」。


「ならば、貴艦は沖縄のこの膠着状態を打開できるというのか?」。


「はい、大将」ウェルズは頷いた。彼は、作戦室のモニターに表示された沖縄本島の最新の航空偵察画像を指し示した。


「我々は、沖縄本島への第三次攻撃を提案します。これまでの貴官方の戦術とは異なり、まず我々の航空戦力で日本軍の航空機、残存艦艇、そして特に『いずも』と『まや』の防御システムを徹底的に排除します。F/A-18E/Fスーパーホーネットは、貴官方のどの戦闘機よりも速度、航続距離、ペイロードにおいて圧倒的に優位です。AIM-120C/D AMRAAM空対空ミサイル、AGM-84E SLAM-ER対地精密誘導ミサイル、そしてGBU-38 JDAMを駆使し、レーダー探知を回避する低空侵入、あるいは高高度からの精密爆撃で、日本軍の対空火力を無力化します」。


主任参謀が、作戦図を指しながら質問した。「しかし、あの『いずも』は海岸に座礁し、要塞化されていると報告されています。また、F-35Bという新型機が存在するとも。それをどう攻略するのか?」。


ウェルズは、自信に満ちた口調で答えた。


「『いずも』の対空能力は、F-35Bの支援があっても限界があります。我々のF/A-18は、長距離から精密誘導兵器を使用し、CIWSやSeaRAMの射程外から攻撃することが可能です。加えて、EA-18Gグラウラー電子戦機が、彼らのレーダーと通信システムを完全に麻痺させます。これは、高度な電磁波妨害(Jamming)と欺瞞(Deception)によって、彼らの索敵能力と指揮統制を寸断します。F-35Bはステルス性を持つと報告されていますが、我々のE-2Dアドバンストホークアイ早期警戒機と連携したF/A-18のセンサー能力は、それを凌駕します。彼らのステルス性を無効化し、空中で捕捉・撃墜が可能です」。


「さらに、座礁した旧式艦艇、特に『矢秡』や『雪風』は、我々のAGM-84H/K SLAM-ER(空対地スタンドオフミサイル)や、艦艇からのTLAM(トマホーク巡航ミサイル)の精密攻撃で沈黙させます」ウェルズは続けた。


「そして、それらが無力化された後、我々のLCAC(エアクッション型揚陸艇)とAAV-7(水陸両用装甲車)が、従来のLSTを遥かに凌駕する速度でビーチに上陸します。LCACは最高速度40ノット以上で、水陸両用装甲車両やM1エイブラムス戦車を直接浜辺に揚陸させます。M1エイブラムス戦車が先頭に立ち、火炎放射器部隊が地下壕を掃討します」。


スプルーアンス大将は、その圧倒的な戦力と、これまで彼らが知り得なかった戦術の概念に、目を見張っていた。


「大将、ワシントンは、沖縄での予想外の抵抗を受け、本土上陸作戦『ダウンフォール』を加速させています。この沖縄での早期勝利は、日本を早期に屈服させるための決定的な要素となります。これは、我々が貴官方の時代にもたらす、圧倒的な『力の証明』です」。


「よろしい。ウェルズ艦長。貴官の艦隊に、沖縄第三次攻撃の指揮を委ねる。この作戦をもって、日本軍の抵抗を完全に打ち砕け。貴艦の持つ能力を、存分に示して欲しい」。


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