第30章 OSSの接触:秘密裏の覚醒
ロバート・ウェルズ艦長が指揮する原子力空母ドナルド・レーガンが、1945年の太平洋で孤立状態に置かれてから数日。米軍最高司令部からの特命を受けたOSS(戦略情報局)の特殊チームが、太平洋を極秘裏に横断し、レーガンの存在を捕捉するための作戦を展開していた。彼らは、放射線探知機と、従来の無線では捉えられない微弱な電波信号を追跡し、ついにレーガン艦隊が漂う海域に到達した。
潜水艦から発進した特殊工作チームが、夜陰に紛れてレーガンに接近した。レーガン側も、周囲の警戒は怠っていなかったが、相手が自国の軍人、しかも最新の軍服を着用した「未来の兵士」であるとは想像だにしなかった。
「こちらUSSドナルド・レーガン。貴官らは何者だ。直ちに身元を明かせ」
レーガンの艦橋から、厳しい警告が発せられた。
OSSチームのリーダー、ジョン・スミス少佐は、小型の拡声器を手に、はっきりと英語で応答した。「こちらは米国戦略情報局、OSSだ。艦長に緊急会見を要求する。我々は、貴艦が現在置かれている状況について、重要な情報を持っている」
数時間の緊迫した交渉の後、ウェウェルズ艦長はOSSチームを艦橋に招き入れた。彼らが持ち込んだ資料に、ウェルズは言葉を失った。そこには、真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、そして沖縄での戦況、さらに日本の主要都市への爆撃計画、そして「マンハッタン計画」の詳細までが、極秘文書として記されていた。そして、極めつけは、レーガン自身が「未来から来た」ことを示唆する、機密扱いの推測報告書だった。
「艦長、貴艦は、我々が知る2025年の世界から、76年遡って、この1945年の世界にタイムスリップしたと推測される」
スミス少佐は、ウェルズの動揺を見抜き、淡々と告げた。「貴艦が放射線を発しているのは、その原子力推進機関のためだろう。それが、我々の関心を引いた」
ウェルズ艦長は、座っていた椅子から立ち上がり、窓の外の暗い海を見つめた。信じられない現実。しかし、艦内の異常、通信の途絶、そしてこのOSSの持つ詳細な情報が、その推測を裏付けていた。自分たちが、歴史の教科書でしか知らなかった世界に、現実として存在している。
スミス少佐は続けた。「ワシントンは、沖縄で不可解な抵抗に遭い、日本軍が未知の超兵器を保有していると疑っている。貴艦の出現は、まさにその『未知の超兵器』と認識されている。これは、日本を早期に無条件降伏させるための、絶好の機会となり得る」
「一体、何をしろと?」ウェルズは声を絞り出した。
「ワシントンは、貴艦に対し、極秘裏に沖縄方面へ進出し、海上からの圧倒的な支援を行うことを命じる。貴艦の持つ現代兵器と航空戦力は、日本軍がいくら抵抗しても、それを打ち砕くことができるだろう。一旦は沖縄の占領を諦めたが、貴艦の存在は、沖縄への再侵攻と日本本土への上陸作戦『ダウンフォール』を成功させるための、最終兵器となり得る」