表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
62/2046

第27章 アニメ風



沖縄上空でのB-29壊滅――。

歴史に存在しない敗北は、米太平洋艦隊司令官スプルーアンス大将の心を焦燥から絶望へと突き落とした。

旗艦「インディアナポリス」の作戦室には、重い沈黙が漂っていた。


「報告します。沖縄本島への戦略爆撃は失敗。B-29は半数以上が未確認の敵に撃墜され、残存機も損害甚大。地下陣地への打撃はほとんどありません」

情報幕僚の声は冷酷だった。


スプルーアンスは虚ろな目で宙を見つめていた。

B-29は、都市を焼き、日本の戦意を奪う切り札のはずだった。

だが沖縄の空で起きたのは、戦略を根底から覆す未曽有の事態。

見えない敵。正確すぎる砲撃。座礁艦の要塞化。

沖縄はもはや「魔の島」と化していた。


「……沖縄本島の占領は、一旦断念する」

絞り出すような声。

それは彼にとって最大の屈辱であり、米軍戦略の大転換を意味した。

「これ以上の損耗は許されん。あの島には、我々の理解を超える何かがある」


報告は即座にワシントンへ送られた。

トルーマン大統領、統合参謀本部。

衝撃が、首都を揺るがした。


ホワイトハウス地下作戦室。

大統領補佐官、陸海軍長官、マンハッタン計画の責任者――重鎮たちが顔をそろえた。


「沖縄の日本軍は、我々を凌駕する何かを手に入れている。このままでは本土上陸作戦〈ダウンフォール〉は、想像を絶する犠牲を強いられる」

陸軍参謀総長の声は重かった。

不可解な現象への恐怖がにじんでいた。


「マンハッタン計画の進捗は」

トルーマンの問いに、責任者が応じる。

「順調です。実戦用の原爆はすでに二発。広島、長崎への投下準備も進んでいます」


トルーマンはゆっくり顔を上げた。

その眼差しは冷徹で、感情を読み取らせなかった。

「直ちに製造ラインを増強せよ。原爆は四発作れ。予算も人員も青天井だ」


会議室の空気が凍った。

当初計画の倍。

その言葉が、決断の重さを物語っていた。


「目標は広島、長崎に加え、東京と北九州だ。東京は中枢。北九州は工業と朝鮮への玄関口。四都市を同時に、徹底的に破壊する。無条件降伏を迫る。抵抗を続ければ、日本という国家そのものが消滅する――そう突きつけるのだ」


冷たい声が、地下室に響いた。

世界を変える決定が、静かに下された瞬間だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ