第26章 自活への道:知恵と工夫の戦場
「いずも」作戦室での会議は、燃料と弾薬の枯渇という喫緊の課題から、さらに広範な補給・維持の問題へと議論を深めていった。自衛隊は、この1945年の世界で「自活する」という未曽有の状況に直面していた。
「そうりゅう型潜水艦のAIP(非大気依存推進)システムは、長期行動を可能としますが、酸素とバッテリー電力の補給が問題となります」
潜水艦部門の担当者が報告した。「酸素ボンベの残量は限りがあり、バッテリーの電力も、港湾施設での充電なしでは持続性に限界があります。現地で酸素を生成したり、簡易的な電力供給を行う方法を模索する必要があります」
片倉は神妙な顔で頷いた。「沖縄本島で、酸素ボンベや海水電解装置を手作りする方法を検討せよ。潜水艦の作業員を陸上へ派遣し、現地の技術者と連携して補給作業を行う可能性も探れ」
次に議論されたのは、隊員の「食料・水・医療」という生命維持に直結する問題だった。
「艦内の備蓄食料と飲料水は、現状の消費ペースではあと一週間から二週間で枯渇します。現地での調達が不可欠です」
補給担当士官が報告した。
「旧海軍は、沖縄島内に多くの補給拠点や倉庫、農地管理機構を温存しているはずだ。牛島大将の第32軍との連携を強化し、旧海軍の豊富な米、魚介類、雑貨、生糸、布類などを、我々の現代医療品、抗生物質、通信器、精密機械、そして情報支援と交換する**『物々交換式の準連合体制』**を構築する」
「また、医療面では、いずも艦内の医療施設を最大限に活用しつつ、沖縄の製糖工場や氷冷庫といった民間インフラを接収し、医療用冷蔵庫の維持やICU機能の限定運用を模索します。これらは旧軍にとっても革命的な医療支援となるでしょう」
医療担当の士官が続けた。抗生物質や現代の医療機器は、この時代の傷病兵にとってはまさに奇跡の治療となる。
さらに、「整備」の課題が議題に上がった。
「F-35Bのステルスコーティングやエンジンの精密整備は、艦内の限られた設備と部品だけでは不可能です。艦の電子装備も、この時代の環境下での運用による劣化が懸念されます」
整備班長が厳しい顔で報告した。
「高度な整備が不可能な電子系統については、現代の技術者による最低限の保守教育で対応する。旧軍の整備兵に、我々の機器の簡易的な使い方を逐次伝えることで、現場での応急修理能力をブーストさせるのだ」
片倉は、具体的な指示を出した。「長期的には、いずも艦内の部品工房や3Dプリンターによる小型部品の再生も検討する。未来の知識で、1945年の整備力を底上げするのだ」
最後に、通信と情報戦の重要性が再確認された。
「我々のステルス性と電子戦能力は、依然として米軍に対する最大の優位性です。これを最大限に活用し、情報戦での支配力を維持する。小型ドローンやF-35BのAESAセンサーで収集した敵情は、アナログ地図や写真、あるいは簡易な無線信号に変換し、旧軍に継続して提供する。