第24章 空の死闘(下):殲滅の嵐
B-29の巨大な編隊は、司令機を失ったことで統制を失い、さらに護衛のP-51Dもミサイルによって次々と撃墜されていく中、パニック状態に陥っていた。米軍の無線は、叫び声と混乱の報告で溢れている。
「敵機は見えない!どこから攻撃されている!」「編隊が崩れる!退避しろ!」
「こちらF-35B、アルファ1。B-29編隊、完全に混乱状態。P-51D、残存数約30機、散開中」
F-35B編隊長の冷静な声がコックピットに響く。F-35Bのパイロットたちは、圧倒的な情報優位とステルス性能を活かし、敵の混乱に乗じてさらに攻撃を仕掛ける。
「よし、ミサイル残量を確認。P-51Dの残りは機関砲優先、B-29はリーダー機を狙った後、重点的にガンキルだ。弾薬節約を徹底しろ!」
片倉大佐からの指示が、データリンクで各機に伝えられる。F-35Bは、精密な射撃管理システムにより、機関砲の使用に切り替えた。
F-35Bは、その圧倒的な速度でP-51Dの背後に回り込み、GAU-22/A 25mm機関砲を掃射する。P-51Dは、機関砲の火線を目視するまで敵機の存在を感知できず、回避行動を取る間もなく、その翼や胴体に25mm弾の雨を浴びた。数発の命中弾で簡単に粉砕されるレシプロ機が、次々と空中で爆散し、部品を撒き散らしながら落下していった。F-35Bは、まるで遊戯を楽しむかのように、P-51Dを一方的に狩り尽くしていく。
同時に、B-29への攻撃も苛烈さを増していた。F-35Bは、B-29の密集隊形に食い込むように接近し、機関砲でその巨体を狙い撃つ。コックピット、エンジン、爆弾倉――致命的な部位に25mm弾が集中し、B-29は轟音と共に炎上、次々と空中分解した。時には、既に損傷し、低速で飛行するB-29を、複数機で機関砲の集中射撃で仕留めるという、弾薬節約型の戦術も取られた。
「ターゲット・コンファーム!ブラボー3、B-29一機撃墜!」
「チャーリー1、P-51D撃墜確認!」
次々と上がる撃墜報告。空は、炎上するB-29の残骸と、黒煙の筋で埋め尽くされていく。米軍爆撃機の搭乗員たちは、見えない敵からの攻撃に完全に絶望し、次々と編隊から離脱し、雲の中に逃げ込もうとするが、その動きもF-35Bの精密なセンサーから逃れることはできなかった。
空戦開始からわずか数分。
B-29の編隊は、その数を劇的に減らしていた。100機いたはずの爆撃機は、既に半数以上が炎上し、沖縄の海へと落下していく。護衛のP-51Dは、ほぼ全滅していた。
「こちらF-35B、アルファ1。B-29、残存数約20機。P-51D、全滅」
編隊長の報告が、「いずも」艦橋に伝えられる。
片倉大佐は、モニターに映る一方的な戦況を見つめ、静かに息を吐いた。
「追撃を継続。残存機を全て撃墜せよ。ただし、弾薬消費は厳守。必要であれば、追撃は中止し、帰投せよ」
彼は、徹底的な殲滅を指示しつつも、F-35Bの貴重な弾薬を無駄にしないよう厳命した。この時代では補充が不可能な「弾薬」は、何よりも貴重な資源だった。