表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大和沖縄に到達す  作者: 未世遙輝
シーズン1
51/2015

第22章 アニメ風



その頃、東シナ海上――。

旗艦「いずも」の作戦室で、電子戦士官の三条律が息を呑んだ。


モニターに、無数の光点が現れたのだ。

点の群れは、整然と列を組み、沖縄へまっすぐ進んでくる。


「艦長! グアム、テニアン方面からB-29の大編隊が接近中! 数、これまでにない規模です!」

声が作戦室に響き渡る。


光点の動きは、偵察機や戦闘機ではなかった。

重爆撃機特有の、重く、揺るぎない軌跡――。

しかも、その数は本土爆撃と見紛うほどだ。


片倉大佐の顔が硬直する。

「……本土攻撃用の一部を、沖縄に振り向けたか」


彼は知っていた。

この時代の日本軍に、B-29を止める術はない。

高高度を飛ぶ巨体に、届く高射砲も、追いつける戦闘機もほとんどない。

地下陣地といえど、絨毯爆撃を受ければひとたまりもない。


その報は瞬く間に、第32軍司令部の地下壕にも届いた。

報告書に目を落とした牛島満大将は、深い皺を刻んだ眉をさらに寄せる。


「……B-29が、これほどの数で沖縄に」


彼は、本土空襲の惨状を断片的にしか知らない。

まさかその矛先の一部が、沖縄にまで向けられるとは思ってもみなかった。

迎撃できる戦力はない。

受ければ、沖縄の大地ごと地下陣地は崩れ落ちる――。

牛島の眼差しには、深い憂慮が浮かんでいた。


「律! B-29の高度と速度を解析せよ!」

片倉の声が鋭く飛ぶ。

「航空隊に指令! F-35B、全機、即時発艦用意! 目標、沖縄へ向かうB-29編隊! 最大速度で迎撃する!」


その一声に、作戦室の空気が一変した。

温存してきた切り札を、いま使う――。


「了解! F-35B、発艦準備急げ!」


飛行甲板では、格納庫から運び上げられたF-35Bが、慌ただしく整備兵の手を受けていた。

翼に燃料が注ぎ込まれ、弾薬が装填される。

パイロットが駆け込み、キャノピーを閉じる。


「こちら空域統制! 最終チェック完了! F-35B、発艦を許可する!」


轟音。

エンジンが咆哮し、機体が震える。

ステルス戦闘機は、垂直上昇モードに切り替わり、力強く空へ舞い上がった。


沖縄の空。

時代を超えた死闘が、いま幕を開けようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ