第71話.穿狼
誤字・脱字はご容赦下さい。
●71.穿狼
キュィィィィイイイイイ――――ン!!
「くくく・・・・・」
ベオウルフはニヤリと嗤いながら空中で槍を構えた。
部屋中に凄まじい強風が吹き荒れる。
俺は石柱の陰からベオウルフへ銃を向けた。
「行きますよぉおおおお!!!」
GOW!!!
ベオウルフは物凄い速度で突っ込んで来た
「!!」
俺は横っ飛びのように石柱から離れる
ドガン!!バキバキ!!!
ベオウルフの強烈な突きと突進で俺の石柱は簡単に吹き飛んだ。
砕かれた石柱の破片が爆発するように飛び散る。
(ぎゃぁあああああーーーーーーー!!!!!!!!)
俺は心の中で絶叫しながら床をゴロゴロと転がる。
しかも顔を上げるとベオウルフは空中にホバリングしながら俺に槍を向けていた。
(まずい!!やられる!!!!)
その瞬間・・・
DOW!! DOW!!
メイベルが離れた所からベオウルフに向かって銃を撃った。
メイベルの弾丸は強風のせいでベオウルフから僅かに逸れて部屋の奥の壁に当たる。
するとベオウルフは低空を飛びながらすぐにメイベルの射線から離れた。
(助かった・・・・)俺はその間に急いで体勢を立て直す。
「ふん。貴女は暫くそこで大人しくしていなさい!」
ベオウルフは離れているメイベルに向かって槍を薙ぎ払うように振るう。
GOWWWWWWWWWW!!
すると気流の塊のような突風がメイベルに向かって吹きつけた。
「きゃぁああああああ!!!」
ドカッ!!ガラガラ・・・
メイベルは物凄い勢いで吹き飛ばれて部屋の壁に打ち付けられた。
「メイベル!!」
俺は叫んだ。メイベルは壁のそばでうつ伏せに倒れている。
「くそお・・・!!」
俺は再びベオウルフに銃を構え、撃つ
DOW!! DOW!!
しかしベオウルフはその場から高く飛び上がり弾道を簡単に躱した。
そして部屋の高い天井辺りまで飛び上がると今度は天井を蹴るようにして再び俺に突っ込んで来た。
(来る!!!!)
俺は急いで横へ飛んで躱す。
キュィィィィイイイイイ――――ン!!
ドガン!!バキバキバキ!!!
俺のいた所の床は抉れたような大きな穴が開いた。
待ち構えていた俺はすかさずベオウルフに銃口を向けた。
しかしベオウルフもそれと同時に俺に向かって掌を翳していた。
BWOOOO!!!
(なにぃ!?)
ベオウルフの掌から強烈な突風が吹きつける。
「くっ・・・・・」
DOW!!
俺の弾丸はベオウルフから大きく外れ部屋の天井に当たった。
ベオウルフはそれを見てニタリと嗤う。
「隙だらけですよぉおお!!」
ベオウルフはそう言うと離れている俺に向かって槍でビュンと突く仕草をした。
BWOOO!!
すると槍先から渦のような気流の塊が発生して俺の腹部を撃ち抜いた
数メートル離れている為、その槍先は俺の体までは届いていない。
とはいえその衝撃波は至近距離だった為、俺は物凄い勢いで後ろへ吹き飛ばされた。
太い柱のようなもので腹を突かれたような強烈な衝撃。
俺の体はくの字に曲がる。
「ぐああああ!!!!」
俺は部屋の壁に思いっ切り全身を打ちつけられた
ドガン!!! バキバキバキ!!!!
「ぐは・・・・」
俺は壁の前にドサリと仰向けに倒れた。
「くふふふふ・・・・・・・」
遠くでベオウルフは嗤いながら壁に倒れた俺の姿を眺めている。
圧倒的な実力差から出る余裕からなのか、ベオウルフは俺が起き上がるのを待っている様だ。
「おやおや、どうされたのですか?貴方の力はこの程度なんですか?
もう少し楽しませて頂けると思っていましたが・・・・これじゃあ私の心の琴線には触れませんよ。」
「・・・・・・くっ・・」(なんて奴だ・・・・・)
俺は撃ち抜かれた腹部を手で押さえながらゆっくり手を突いて立ち上がった。
幸いベビーモスで作られた強靭なベストのお陰でダメージは抑えられてはいる様だ。
もし攻撃を受けた箇所がもし防具の覆っていない部位だったら間違いなく戦闘不能にされていたはずだ。
「・・・・・・・」
口の中には鉄の味のするぬめりを感じる。
俺はベオウルフが槍を構える姿を冷静に見つめた。
・・・・・・ギュイイイイ――――イン!!!
ベオウルフの槍先は風の渦を纏い凄まじい音を立てて回転している。
「くそぉ・・・」俺は呟く。
はっきり言ってベオウルフはスピード、パワーは段違いに俺よりも上だ。
銃を向けてもスピードで翻弄され、狙いすらつけさせてくれない。
しかも自ら俺の射線に入ってくる際には左手から突風のような風魔法を出して射撃の体勢を崩しにかかって来る。
俺が狙いをつけなければ弾が当たらないという事が分かっているのだろう。
しかもドリルランスから発生する風魔法は連発可能な衝撃波。
幸い死ぬ程のダメージではないが、あと数発でも喰らえば俺は立ち上がる事が出来ないだろう。
しかもその間合いすら俺には分からない。
このままでは勝機が見えない・・・・どうすればいい?
ここで諦める訳にはいかない。
くそぉ・・俺は咄嗟にフルフルと頭を振った。
勝利を得る為にはまずその厄介な風魔法をなんとかしないといけない。
俺は即座に腹部に回復魔法をかけて自分が今すぐに動ける状態かどうかを確認する。
幸い、機動力に係る足へのダメージは無い。
(これならどうだ・・・)
俺はすぐに横へ全速力で駆ける。
そして目の前に巨大な岩壁を作り出した。そしてその後方へ下がり銃を構えた。
ガチャリ
俺は撃鉄を引き上げる。
俺の狙いは目の前の岩壁。ヤツがこの壁をぶち抜いた瞬間を狙い撃つ。
俺は銃把を握りしめた。
キュィィィィイイイイイ――――ン!!
岩壁の向こうから機械音が聞こえる
(来る!!)俺は岩壁に向かって狙いをつけた。
キュィィィィイイイイイ――――ン!!
BWOOOOOOOO!!!!!
ボガガガッガ!!ドガン
(なにぃいい!!!)
岩壁は発砲スチロールの板をぶち抜くかのように簡単に貫通、ベオウルフは岩壁を物凄い速度のまま突破した。しかもベオウルフのその突進は俺の狙いよりかなり横に逸れている。
(くそぉ!!こっちの狙いを読まれていたか!!)
俺はベオウルフの横方から発砲
DOW!!
(外した!!)
弾丸はベオウルフからは僅かに後方へ外れる。
ジェットで爆進する驚異のスピードに銃の照準がまるで合わない。
俺は慌ててその場所から横へ飛んで距離を取ろうとする。
キュィィィィイイイイイ――――ン!!
BWOOOOO!!!!
ベオウルフはすれ違い際にランスを横なぎに振るう。
BWOWWW!!
(くそ!)
俺がその場から急いで飛びのく。
気流の塊のようなものがさっきまで俺のいた所へぶち当たった。
そしてそのままランスを構えたベオウルフは俺のすぐ横を物凄い速度で通り抜けた後、ホバリングしながら俺の背後へ素早く回り込んだ。
「くくく・・・・」
ベオウルフは嗤う。
「・・・!!」(ヤバい!!逃げられない!!)
俺は銃をしまい、腰の刀に手を添える。前方は俺の出した岩壁のせいで正面には走れない
一か八か接近戦に持ち込むか!?
俺は奥歯を食いしばりその覚悟を決める。(やるしかない!!)
「でやぁあああ!!!」
俺は振り向くと無属性魔法で一気にベオウルフへ間合いを詰める。
ダンッ!!空中のベオウルフへ向けてジャンプ
バシュ!!!
俺はそのまま抜刀でベオウルフを思いっきり斬りつけた。
ガキン!!
ベオウルフは俺の抜刀をランスの柄で受ける。空中で鍔迫り合いをするような形だった。
ベオウルフはそのまま俺に向かって手を翳し、突風を出して俺を吹き飛ばそうとする
だが俺はその瞬間、一気に刀に雷魔法を込めた。
「くらえええええ!!!」俺は叫ぶ。
バリバリバリ!!!BWOO!!
「ぐおおお!!」
俺はベオウルフの咄嗟に放った風魔法で後方へ吹っ飛んだ。
キューン・・・・・・
ベオウルフ背中のジェット噴射が突然止った。
「!!?」
ドサッ!!
ベオウルフも俺の雷撃を喰らってバランス崩して後方へ落ちるようにして背中から倒れた。
背中のジェットの出力が雷撃を受けた時に狂ったようだ。
「な?・・なんだと!?」
ベオウルフは急いで立ち上がると驚いたように呟く。
俺はすかさず銃を抜き、その場に倒れたままベオウルフを狙い撃った!!!
DOW!! ボガン!
俺の弾丸はベオウルフが咄嗟に翳そうとした左手に命中した。
ベオウルフの左手の肘から下の部分が弾け飛ぶ。
(チャンスだ!!)
俺はそのままトリガーをベオウルフに向かって引いた
DOW! ・・・DOW!
空砲が鳴る。
空砲の衝撃がベオウルフの体に当たり、ベオウルフは怯むように後方へ数歩のけぞった後、再び尻餅をつく様にその場に倒れた。
「くそっ!ここで弾切れか・・・・」
俺は急いでゴロゴロと転がると目の前に岩壁を作りその裏へ隠れた。
その裏でシリンダーの弾丸を急いで入れ替える。
「ん!?・・・メイベル!?」
視界のだいぶ先、大広間の入口近くの壁の前でメイベルが倒れていた。
俺は今の隙を突いて急いでメイベルの倒れていた所へ駆け戻る。
ベオウルフの様子を見るとそこからは半壊した岩壁の向こうに姿が隠れており、姿が見えない。
「メイベル!!」
メイベルは壁の側でうつ伏せに倒れたままだった。
俺は急いでメイベルを抱きかかえ回復魔法をかける。
「・・・・ケンスケ・・・私は大丈夫だよ・・」
そう言うとメイベルはヨロヨロと立ち上がった。
「マルボル殿!!」
するとディックさんや兵士達が俺の周りにゾロゾロと集まってきた。
そしてディックさん達はベオウルフにいる方向へ立ちはだかる様にして剣を構え、壁を作った。
俺は首を振って目の前のディックさんに言った
「ダメだ。ディックさん!!こいつは危険だ!!今のうちに兵士達と安全な所へ避難してくれ!」
「・・いや・・ですが・・」
ディックさん達兵士はそう言ってそこから動こうとはしない。
俺は叫ぶように言った。
「ディックさん、ヤツの狙いはここにいるメイベルと俺だ。このままだとディックさんや皆まで巻き込んでしまう。コイツは俺達でなんとかしますから、急ぎ領主やティアナ姫の元へ向かってこの事を早く伝えてくれ。そして領主の救出を優先し、急いで城から逃げるんです。」
「・・・・・・・・・」
ディックさんは俺に背を向けたまま歯を噛みしめる
俺は続けた。
「・・・・これは今、ディックさんにしか頼めません。ここで俺が負けた場合、次は領主とティアナ姫の命が危険になるんです!!」
「・・・まさか・・・マ・・マルボル殿が負けるなんて・・」
ディックさんは呟く。
「ええ。悔しいですが俺なんかより恐らく相手の方が何枚も上手です。」
「・・・・そんな・・」
「・・・ですが俺にだって勝機はあります。急ぎ避難を!!行くのは今しかありません」
俺はディックさんに言った。
しばらくするとディックさんは悔しそうにしながら俺に言った
「・・・わかりました。・・・申し訳ない・・マルボル殿、貴殿らにご武運を・・・。」
「皆!!!全速力で走れ!!」
ディックさん達は急いで部屋から出て行く。
俺とメイベルは目の前に岩壁を出してその陰からベオウルフのいる方向へ向けて銃を構えた。
「・・・・・・・・」
しばらくすると
「かはっははっははっははは!!!!!」
半壊した岩壁の向こう、部屋の奥の方からベオウルフの笑い声が響いた。
大広間は先程の戦いで砕けた岩壁の砂埃や撃ち抜いた天板の瓦礫の埃で足元まで薄くモヤが掛かっている。
「最高だぁ!!最高ですねぇええ!!!こんなに心の琴線に触れたのはいつ以来でしょうかぁ!!!これの感情はたしか“驚き”だったか・・!?・・い・・いや違う・・。
こ・・この感情がまさに“怒り”という心境なのだろうかぁああああああ!!!?」
「素晴らしい・・・・素晴らしい・・・・」
ベオウルフは半壊した岩壁の裏で何度も叫ぶように呟く。
すると
・・・・キュイイイイイイイイイイインン!!!!!
ベオウルフの方から次第に大きな機械音が聞こえてくる。
再びベオウルフの背中のジェット機関が稼働を始めたようだ。
GOWWWWWW------!!!!
部屋にかかったモヤは消し飛び、今度は小さな砂粒を含んだ嵐のような風が部屋中に吹き荒れる。
ベオウルフはホバリングしながら大広間の天井付近まで舞い上がった。
(落ちろ!!)
俺とメイベルはベオウルフに向けて発砲する。
DOW!!DOW!!DOW!!
だが嵐のような風のせいで銃の狙いが定まらず、しかも離れている為かベオウルフには全く弾丸が当たらない。
ベオウルフは俺達二人の居場所を遠目で確認するような仕草をすると大きな口を開けてニタリと嗤った
ベオウルフは俺の射線から飛びのくと右手で槍を振りかざす。
「最高だぁあああ!!」
GOW!!GOW!!GOW!!GOW!!
ベオウルフは空中で俺に向かって目茶苦茶に槍を振り回す。
ドガン!ドガン!ドカン!ドカン!!!
渦のような気流の塊が目の前の岩壁へ次々とぶち当たる。
「ぐぉっ!!!」
槍先から巨大な気流の塊が飛んでくる気流の塊は俺の帽子をかすめた。
俺は慌てて岩壁の陰へ潜る。
「ふふふ。マルボルさん・・・・・貴方はやはり素晴らしい方ですねぇ!
私はおそらく快楽と怒りでこんなにも体が震えたのは初めての事です。
今から本気で貴方を殺らせて頂くとしましょうか・・・・。」
・・・ギュイイイイ――――イン!!!
ベオウルフはそう言って嬉しそうにニタリと嗤うと猛回転するドリルランスの槍先を俺達へと向けたのだった。
読んで頂き誠に有難う御座います。
月末・月初は仕事が多忙すぎて投稿が遅れます。申し訳ございません。




