第43話.少女の涙
誤字・脱字はご容赦下さい
●43.少女の涙
物凄い轟音が坑道内に響いた。
俺達は採石場から噴き出る大量の砂埃を浴びた。
俺はメイベルを庇うように坑道の床に伏せたまま砂埃が鎮まるまでじっとしていた。
「・・・・・・・・・」
「マ・・マルボル殿・・・・ぶ・・無事か?」
グレースさんの声が聞こえてきた。
爆発直後、俺は凄まじい爆煙と爆音で鼻が詰まり激しい耳鳴りがしていたのだが次第に聴覚が戻って来たようだ。
「ああ・・・俺達は無事なようだ」
俺はゆっくり砂埃の山から立ち上がった。
それからメイベルの手をゆっくりと優しく引いて起き上がらせた。
ひっく・・・・ひっく・・・・
メイベルは座り込んだままその場で泣いていた。
「・・・・すまなかった」
俺は一言そう言うとしゃがみ込んでメイベルの頭を優しく撫でてあげた。
「うわあああん!!お爺ちゃーん!!!」
メイベルを俺に抱き着いて震えながら号泣していた。
俺はメイベルがしばらく泣いて落ち着いた後を見計らって手を引いて彼女を立たせた。
別人の体のように重くなった自分の体を奮い立たせ俺はメイベルを連れて坑道を出た。
「・・・・・・・・・・・・・・・!!」
採石場のあった広い縦穴の底。
その一面にはまだ膝上位まで砂煙がまだ残っていた。
見渡すと一帯の中央には大きな爆発痕が静かに残っており、その周囲にはボロボロに黒く焼け焦げ煙を出している金属や何かの部品の残骸が一帯に散らばっているだけでそれ以外にはもう何も残ってはいなかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
俺は側にいるグレースさんに言った
「鉱夫たちの救出をしましょう。敵は死んだようです。残念ながらエドリックも・・・」
「マ・・マルボル殿・・・!?」
グレースさんは俺を見て目を彷徨わせている
俺の目から知らない間に涙がこぼれていた様だ。
俺の頭は真っ白になる。ああそうか。
俺はこんな悲しい事には慣れていなかったんだな。ふとそう思った。
慣れない事に体がまるでついて行かないんだなと・・・。
「・・・・・・・・」
その爆発痕を俺は唇を噛みしめながら暫く眺めた後、ゆっくりと鉱夫達の残っている坑道で引き返すことにした。
「これ・・・・・・・」
メイベルが坑道へ戻る途中に何かを拾った。
それは黒く煤けてしまっているがエドリックがついさっきまで使っていた愛用の短剣だった。
(くそ・・・・・)
俺はやるせない気分で一杯になり体が震えた。
「・・・・・・・お爺ちゃん・・。」
メイベルを見るとその古びたを剣を抱きしめ、その剣に静かに涙を落していた。
その後坑道に引き返し、グレースさん達と大勢の鉱夫達を引き連れて坑道から出た。
助かったと歓喜している人や涙を流している人達もいる。
俺達に直接お礼を言ってくる人も沢山いたのだが俺にはその歓喜の声はまるで耳に入らず、俺は静かにうつむいたままだった。
翌日、領主軍の兵士がラサンの街にやって来た。
俺達は領主軍の到着に合わせグレースさんと共に街の冒険者ギルドへ行った。
そしてカーネルさんや領主軍の兵士に今回の経緯を報告した。カーネルさんと兵士達は今回犠牲になった鉱夫と死んだエドリックの為に一緒に黙祷を捧げてくれた。
その後、この鉱山で起こった事をグレースさんと一緒に報告した。
今回の一件の黒幕は夜行の五指といわれる化物を使って鉱山の鉱夫達を人質に取り、ホースト一族の末裔を狙ったという事。その理由はホーストの力を手に入れる為で、しかもその黒幕共は既にホーストの力の一部を奪い、魔導鎧や魔導騎獣といった恐ろしい兵器を次々と開発していた事など。
今回、俺達はその一味である夜行の五指の一人は倒したが今後また何かしらの手段をとってくる可能性がある事なども報告した。
領主軍の隊長は血相を変え、急いで一部の兵士を領主の元へ伝令に出した。
その後、隊長は事後調査の為といって残りの兵士達と共に鉱山へ向かっていった。
「・・・これからどうするんだ?」
カーネルは険しい表情をしながら俺に聞いてきた。
「・・・・・この世界で何か大変な事が起こりそうだとエドリックは言っていた。
俺達はエドリックが言った通り王都へ向かおうと思っているんだ。」
俺はカーネルさんに静かにそう答えた。
エドリックは死ぬ直前、俺達に王都へ行けと言っていた。
そこにはメイベルの両親を殺し、ホーストの力を奪った黒幕がいる。
そしてホーストの子孫達が死ぬ直前に封印し隠した物。
この世界に起きるかもしれないとんでもない事。
きっとそこに行けば何かが分かる筈だ。
そして何より今回の一件、俺は全てに納得がいかなかった。
・・・・全て許せなかった。
「そうか・・・・」
カーネルは小さなため息を吐いて
「これが今回の報酬だ。俺なりに出来る限りの追加報酬はつけた。俺はギルドの本部に緊急かつ重大事項として今回の件は報告する。そして今後、俺達はこの件には全面的に協力するつもりでもいる。王都までは長い旅になる。困った時は俺達冒険者ギルドをいつでも頼ってくれ。」
そういって俺に沢山の金貨の入った袋とCランクの冒険者ギルドの組合章をくれた。
「!?・・・・こんなに・・・」
俺はその袋を開けて驚く。大金貨が30枚も入っていた
「・・・・それとグレースからも話があるそうだ。聞いてやってくれ」
そう言ってカーネルさんはグレースに話を振った。
グレースさんは言った
「我々冒険者ギルドも今回の一件、ヤツら行った事は絶対に見過ごせない。私もこの事が今後、世界の大きな災いの種なってしまわないかが心配だ。
奴らが奪ったホーストの力、メイベルを狙う件や王都にいる他の夜行の存在もなんかも気になる・・・くそォ!このままじゃ私は今回の件の全てに納得がいかない。どうだろうか、私もマルボル殿と一緒に王都まで連れて行ってはくれないか。」
うつむいて話すグレースさんのその拳は怒りで震えていた。
「・・・・・・・・・宜しく頼むよ、グレースさん。」
俺はしばらく考え、グレースさんに了解した。
「すまない。今後、私の事はグレースでいい。私達は仲間だ。仲間の仇は討つ」
そう言ってグレースは俺が差し出した右手に握手をした。
後日、
俺達三人はラサンの街が見渡せる小さな丘の上にいた。
空に雲はなく、穏やかな風が吹いていた。
その見晴らしの良い小さな丘の頂上に三人でエドリックの小さな墓を作った。
彼の遺体は結局見つける事が出来なかったので彼が家に残していった旅用の荷物を
小さな墓標の下に埋めた。
彼の遺した短剣はメイベルが綺麗にして彼女が大事そうに身に着けている。
俺は小さな墓標に呟いた。
「爺さん・・・・」
死ぬ間際、爺さんはメイベルに言っていた。俺が新たなるホーストの力を持つ者だと。
俺なんかにそんな力があるのだろうか・・・。
そして彼は小さな墓標の前で今静かに目を閉じて祈りを捧げている少女と俺達に生きろと言った。
彼はきっと自分の一人娘を無実の罪で殺され、その後、絶望の中で必死にメイベルの行方を探したのだろう。
だから彼は死ぬ直前、メイベルに会えて幸せだとも言っていた。
そして彼は命を懸けて俺達を庇い、そう言い残して彼は死んだ。
「・・・・・・・・」
しばらくするとメイベルは目を開けた。
「お爺ちゃん・・・私、お爺ちゃんの分も生きるよ・・・・・もう泣かない。今まで有難う」
メイベルは小さな墓標にそう呟いた。
すると、この見晴らしの良い小さな丘に穏やかで優しいが風が通り抜けていった。
第2章の終了です。2章の登場人物の紹介後、おっさんの話は第3章に進みます。
新型コロナの非常事態宣言も終わり、本職の方がだんだん忙しくなってきました。今後投稿するペースが若干落ちるかもしれませんが頑張って続けていこうと思います。今後とも応援の方、宜しくお願い致します。ここまで読んで下さり誠に有難う御座います




