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税収アップで不満爆発、討伐しに来たプレイヤー達でレベリング

 ああーよく寝たぁ。

 気持ちよく欠伸(あくび)をして伸びをする。

 おお、ちゃんと作ってあった寝室で寝てるんだな……ってちょっと待て。



 フルダイブ型のゲームで寝落ちしたら現実世界に戻されるはずだぞ?

 それに、このままログアウト出来ないと流石の俺でも飲まず食わずじゃ餓死(がし)しちまう!

 


 ゲーム出来なくなっちまったらどうすんだよ……



 とりあえず腹が空いているのでパンパンと手を鳴らして、婢女(はしため)に朝食を持ってきて貰った。

 朝からボリューム満点だが、この体なら余裕で食べられる!



 だし巻き卵と大根おろし、切干大根の入った筑前煮(ちくぜんに)に熱々のアサリの味噌汁。

 ひじきと枝豆の麦飯と沢庵(たくあん)に焼いた子持ち柳葉魚(ししゃも)まである。

 現実世界じゃ食事するのは嫌いな方だったからいつも最低限で済ましてたのに、こっちの世界だと口に放り込むと止めらんねぇ!



 満腹になった胃袋にシメの熱いお茶を流し込むと(たま)らない幸福感に満たされる。

 食事ってこんなにも良いものだったんだな!

 婢女(はしため)に御馳走様をして片付けてもらうと、ドタドタと足音が聞こえる。



 「失礼致します」

 「越後屋(えちごや)か、入れ」


 

 昨日と全く同じやり取りをして、山吹色(やまぶきいろ)の菓子を受け取る。

 やっぱりこいつNPCなのか?

 とりあえず今日はやる事が山ほどあるが、まずは俺の納める土地や場所についてだ。



 俺の行った事のある場所はワールドマップと周辺マップにマッピングされて、意識すればいつでも見る事が出来る。

 ただ、俺自身が旅をするキャラクターでは無いし、自分の領地からも出られないから遠くの情報はマップを見ただけじゃまるで分らねえ。



 そこで掲示板にある情報を追って、調べた結果。

 他の一般的なプレイヤー達がスタートする地点からそれ程離れていない事が分った。

 掲示板で募集されているIDインスタントダンジョンやクエスト攻略の情報から考えて、早い奴等ならそろそろこの辺りにやって来そうだと言う事が分る。



 それで俺の領地なんだが、簡単に言っちまえばこの辺りはカワセミって地域で、八つの国が統治している。

 その国の一つ、ヨギノクニを納めている将軍が居て、俺はその将軍からこの西治(さいじ)の町を納める様にと代官に任命されたって事になっている。



 町の名前が俺の名前とリンクしている所に驚きだが、周辺には俺と同じように他の代官が別の町を納めている。

 当面の目標は周辺の町の代官共を屈服させて、将軍に目を付けられない程度に町を支配して行く事になるだろう。



 何を成すにもまずは金だ。

 税金を上げたりも出来るが、そんな事したら一気に誅罰(ちゅうばつ)メーターが貯まりそうだし、NPCからけち臭く(かす)め取るより、町の出入り口に関所を設置して関税(かんぜい)をもうすぐここにやってくるプレイヤー達からふんだくってやろうと思う。



 そんなに広い町でも無いが、この町だけ関所があったりすればプレイヤー達も何かあるんじゃないかと興味も惹かれるだろう。

 今は金も少ないし最低限の事しか出来ないが、記憶の片隅にでも残ってくれれば、また足を運ぶ奴等も居るだろうし、それまでにプレイヤーから金を搾り取る用意をしておく。

 


 新たな施設などがあれば、勝手にプレイヤー達が口コミで情報を拡散するだろうし、その情報で集まったプレイヤー達から更に金を集め、また新たな施設を設置する。

 


 既に関所は設置して、関税を取るNPCも配置済みだから後は勝手に金が流れて来るのを待っていればいい。



 次は俺のレベリングだな。

 金を巻き上げるだけでもそれなりに経験値は得られる様だが、それだと遅い。

 俺は序盤でも負けるのは嫌だからな!



 そこで、誅罰(ちゅうばつ)ゲージは溜まるが、悪行に手を染めて行く。

 


 まずは小さな賭博場を設置して、そこにNPCを配置する。

 上等なNPCなんてまだアンロックされてねえから、設置するのは新しい用心棒一人とプリセットにあるチンピラを三人。



 余った金は俺の武器に当てる。

 安物だが、片手で扱える火縄銃だ。

 見た目は悪く無いが、連射も出来ないしあまり使えないが無いよりはマシだろう。



 屋敷にはショボイが滑る床を俺の部屋に設置して、弓のトラップを適当に配置する。

 さて、税金を上げて荒稼ぎするか!



 なぜ税金を上げるかって?

 誅罰(ちゅうばつ)ゲージをMAXにする為だ!



 俺の見立てでは現時点だと俺一人でもプレイヤーよりも強い。

 このゲームのレベリングは中々厳しいらしく、掲示板に乗っている最速の奴でもまだLvは10にも満たない。



 それに比べて俺はLv20からスタートしてるからな。

 最初の用心棒もLv10から今じゃLv13にまで上がっているし、今のうちにドカンと税金上げて誅罰(ちゅうばつ)メーターを溜め切っちまってプレイヤーを狩ってレベリングするつもりだ。



 だが、気を付けなければいけない事がある。

 最速でここに辿り着くプレイヤー達はだいたい廃人と呼ばれる層のプレイヤー達だ。

 クエストを(こな)して行くタイプだろうし、ガチな対人プレイヤーでは無いだろうけど油断は出来ない。



 そいつらがパーティーを組んで挑んで来る程度ならいいが、ガチで対人の得意な奴等に情報を流されて、そいつらがパーティーを組んで来たら流石にきついだろう。



 まあ、今は皆レベリングに忙しいだろうし、対人用のスキルや魔法なんて後回しだから半日くらいは大丈夫だろうけど。

 引き時はチャレンジャーが途絶えた辺りを目星にしておくか。



 一定時間置きに入ってくる税収を上限まで上げ、一気に誅罰(ちゅうばつ)メーターを上げ始める。

 


 民衆はこれによって飢え死にしたり、色々と問題はおこるんだが、しばらくすると金を持った状態で復活するし問題無し!



 それに、税収を上げるのは元々代官が設定出来る仕様だから将軍も動かないだろうしな。



 誅罰(ちゅうばつ)メーターが貯まり、さっそく脳内にアナウンスが流れる。



 《あなたの討伐依頼クエストが発生しました。 気を付けて下さい》


 

 ビンゴだな。

 予想通りプレイヤーが俺を討伐しに来る。

 そうじゃ無かったらどうしようかとも思ったけど、そうじゃなければ悪代官の存在意義を疑わざるを得ないし、的中している自身はあった。



 さっそくクエストを受注した奴がいるみたいだな。

 さて、最速でレベリングしたであろうプレイヤーを拝見するとしよう。



 クエストを受けたのは一人、もしくはワンパーティー。

 恐らくソロプレイヤーだろうし、軽くもんでやる。



 他に受注している様子は無いのは、このプレイヤーがここに辿り着くのが早かったか、他のプレイヤー達が受注出来なくなっているかだな。

 恐らく後者だろうけど。



 《警告。 依頼を受けたプレイヤーが接近しています。 気を付けて下さい》



 来たか。



 俺は懐に武器を忍ばせ、いつでも動ける姿勢で座して待つ。

 コツコツと床を固い靴で歩く音が聞こえ、俺の居る部屋の(ふすま)が勢いよく開かれる。

 入って来たのは軽装備で、小さめの男性キャラクター。

 顔の色が紫で種族は分からないが、武器はオーソドックスな盾と片手剣。

 

 

 「なんだ貴様は! 儂が誰か分かっての狼藉(ろうぜき)か!」



 俺の言葉を無視してプレイヤーは一直線に俺の方へとやってきて剣を振るおうとする。

 しかし、俺のすぐ後ろにある衝立(ついたて)の裏から用心棒が現れて、プレイヤーと対峙する。



 用心棒一人だと押されているな。

 プレイヤーの方は盾持ちで固いし、自己回復スキル持ちだ。

 攻撃力もそこそこある様だし、手を貸してやるか。



 俺は火縄銃でプレイヤーに一撃を決める。

 そこそこ威力はあるのでダメージを負ったプレイヤーはノックバックして態勢を崩し、用心棒がその隙を突いて止めを刺した。



 まあ、こんな所だろう。

 まだ余裕はあるし、重税続行!

 再びアナウンスが鳴り響き、次のプレイヤーがやってくる。



 今度は見るからに魔法タイプとヒーラーの二人の女の子がやって来た。

 魔法でいきなり用心棒が撃沈したが、二人とも俺の火縄銃で一撃だった為勝つことが出来た。



 用心棒が復活するまで、税金を抑え、復活後にすぐ税金を上げる。

 プレイヤーを倒した事で俺のレベルはまた上げっているし、用心棒もレベルが上がっている。

 安定の為、もう一人の用心棒とチンピラも屋敷へと招集。



 同じような事を何度も繰り返した。



 掲示板には結構前に俺の情報が出回っているみたいで、用心棒の不意打ちがバレバレになった辺りの時間と一致する。

 半日にはまだ少し時間はあるが、そろそろ潮時か。



 クエストは発生してしまっているが、次で最後にしよう。



 クエストを受注するプレイヤーが中々現れない。

 レベリングされて、その上対策済みのプレイヤーが来ると少し厄介だが、あと一人くらいなら大丈夫だろう。



 今のうちにレベルの上がった用心棒とチンピラをクラスアップさせる。

 用心棒は凄腕用心棒になり、チンピラは札付きへとクラスアップ。

 

 

 お、誰か受注したな。



 時間も結構経っているし、そろそろ腕に自信のあるプレイヤーが来てもなんら不思議ではない。

 クラスアップしてLv差はあるだろうし、危険は無いとは思うが用心しておこう。



 再びアナウンスが頭の中で響き、(ふすま)が開かれた。



 ソロプレイヤーか。

 見るからに可愛げのある女性アバターだが、魔法では無く近接タイプ。

 武器は両手にナイフのアサシンかシーフ系。



 間違いなく動きは速いだろうが、数のゴリ押しでいけるだろう。

 何はともあれ、代官っぽいセリフからだ。

 


 「なんだ貴様は! 儂が誰か分かっての狼藉(ろうぜき)か!」

 「悪代官めー、ボクが懲らしめてやるー」



 ボクっ子?

 それにしても棒読みなのに会話に付き合ってくれるなんて良いプレイヤーだな。

 だいたいの奴等が俺の事を普通のNPCだと思って無視して攻撃してきたからちょっとだけ嬉しい。



 「曲者じゃー!であえであえー!」



 このプレイヤー……

 隠れていた用心棒達に囲まれても、動じないしむしろ楽しそうにしている。

 


 来たかも知れねえな。

 対人ガチ勢が!

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