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相まみえれば問うにに落ちず、歴戦の猛者は語るに落ちる。

 戦闘スタイルってのは色々あるが、フルダイブ型のRPGゲームではスピードに特化したタイプのプレイヤーは従来のゲームに比べて激減した。



 何故かって?



 単純に動かす事は出来ても、中身の人間の能力がそれに追いつかねえ。

 旨く調整されたゲームでも、スピードが速すぎて何してるのか分からずに戦闘に勝ったり負けたりするから面白みもなくて衰退(すいたい)ぎみなんだが……



 目の前にいるこのプレイヤーは対人戦において自身ありって感じなんだよな。



 戦闘中に罠を仕掛けるタイプの可能性もあるが、現状は多勢に無勢。

 一つ二つ罠を仕掛けた所でどうにもならないはずだ。



 それでこの余裕って事はやはりスピード型。

 それなりに手強いプレイヤーばかりだったが、こいつとは特に楽しめそうだ。



 先に動いたのは元チンピラの札付き達。

 クラスアップ前に比べるとなかなか様になっている動きで、身構えつつ隙を(うかが)いながら殴り掛かる。



 対するプレイヤーは紙一重でそれらを(かわ)し、攻撃の手を加えていく。

 Lvに差がある為、簡単にはやられないが札付き達の攻撃は(かす)りもしない。

 プレイヤーが上手く札付き達の攻撃を(かわ)した所を狙って、用心棒達も動いた……



 用心棒の攻撃も当たらないだと!?

 札付き達とは違い、用心棒は打たれ弱いと言う弱点はあるが戦闘に特化したタイプだ。

 それにNPCとは言っても、下手なプレイヤーなんかよりまともな動きをする。



 Lvに差もあって相手が回避に優れているという事を踏まえ、攻撃を当てる事を優先させるくらいの事はしているはずだが、当たらない。



 スピード型のプレイヤーなら、この段階で()むと思っていたんだけどな。

 


 この動きならあっちの世界でも相当腕の立つ奴だ。

 中身は武術の達人か何かか?

 まあ、リアルでも弾丸躱せる奴なんてそうはいねえ。



 火縄銃で狙いを定め、用心棒の攻撃を躱し終えた所で容赦のない一撃を撃つ!



 だがそれは当たらず、一度の攻撃ですぐに対応して来た。

 用心棒達の陰に潜み、俺からの斜線を切る様に立ち回る。



 フレンドリーファイア(同士討ち)で味方がダメージを負う事は無いが。

 喰らい判定はあるので、俺からの攻撃は封じられてしまった。



 まさかとは思ったが、別に驚きは無い。

 この動きの出来るプレイヤーは想定内。

 正確に言えば、かつて一緒にプレイした仲間の中には出来る奴が居た。



 俺もスピード型を極めたいと思ってプレイしていた時なら同じような事は出来たし、むしろここまで極めているプレイヤーが居る事は喜ばしい事だ。



 敬意を評して一対一(サシ)で勝負してやる。

 早くそいつらを倒して俺の前に出てこい!



 俺は悪代官らしく、用心棒達に野次(やじ)を飛ばしながらその様子を銃を構えて見守る。



 Lv差があって時間は掛かったが、このプレイヤーは一度も攻撃を喰らう事無くNPC達を倒しきった。

 対峙した俺は「馬鹿な! ヒエエ、お助けぇー」っと声を上げ、慌てふためく振りをして背中を見せる。



 後ろから「観念しろ」と言う声が聞こえたが、俺は振り返えらず。

 真っ直ぐ追って来たであろうプレイヤーに向けて袖の下を通して火縄銃の一撃を放った。

 それと同時に振り返り、火縄銃の弾を込め直す。



 一発撃てばリロードしないといけないこの銃だが、嫌いじゃない。

 


 振り返った瞬間ゾクリとした。

 プレイヤーの姿が見当たらない。

 見当たらないと言う事は、不意を突いて打った弾に反応して回避をしたと言う事。



 動体視力も素晴らしいのだろうが、驚くべきは反射神経と勘、そして限界値を越えるスピード。

 なんとなく来るのだろうと思っていなければ、まず(かわ)そうとはしないし、火縄銃の音が鳴った瞬間に回避行動を取らなければ(かわ)す事は出来ない。



 スピードの限界値。

 ゲームの仕様だけで言えば上限はもっと上なのかもしれない。

 だが、人間の目に追う事の出来る速度は戦いの間合いを考えれば秒速八メートルから十メートル。

 


 どんな達人でもそれ以上の速度で動けば、敵を見失うし制御なんて出来ない。

 推定、秒速三百メートル。

 それが俺の火縄銃の速度だ。



 音が鳴ってから回避したと仮定するなら、対峙するプレイヤーは最低でも秒速二十メートル程のスピードで回避行動に移ったのだろう。

 当然奴は俺の事を目視できるスピードには居ない。

 例え棒立ちでも回避行動直後に攻撃なんて当てられない。



 しかしスピードを落とせば当然攻撃は当てられる。



 リロードを終えた直後に、俺の首に衝撃が走る。

 残念だがこれで終わりだ。

 勝利を掴ませてやりたい所だったが、生憎俺は負けず嫌いだ。



 振り向くとノックバック状態のプレイヤーの姿が目に移る。



 俺がイエンを使って覚えたカウンタースキル。

 【悪代官バウンド(思わぬデブの反撃)】によって、後ろに吹き飛ばされたプレイヤーには驚愕する表情がしっかりと映し出されていた。

 このスキルは俺が近接物理攻撃を受けた時に無条件で発動し、ダメージは無いが対象はノックバックすると言う代物(しろもの)



 なんでこんなスキルを取得したのかと言えば、追い詰められて悪代官が逃げ惑う中、止めを刺そうと追いかけまわしている所にこのスキルが発動すれば、相当な嫌がらせになると思いついての事だった。

 思いついたのはコンシューマーゲーム(家庭用ゲーム)での経験からだが、思わぬ感じで役にたった。


 

 そして、当然俺はここからのコンボを想定している!

 


 実際の戦闘中にガンプレイと呼ばれる、リボルバーをクルクル回したるするアレは、カッコイイだけで無意味なアクションだが。

 フルダイブ型のゲーム、特にRPGなんかだとこれをする事によってクリティカルヒット率が上がったり火力が増したりするなどの効果を持つ。



 俺はノックバックしたプレイヤーに銃口を向ける一つの挙動の間に、一回転クルリと火縄銃を回し、照準が合った瞬間、無慈悲に引き金を引く。



 驚きを隠し得ない。



 このプレイヤーはノックバック中、無理に踏ん張る事をせずに脱力し、(かたむ)けた重心で体を滑らす様にしてギリギリの所で俺の銃弾を(かわ)した!

 だが、完全に(かわ)したわけでは無く、Lv差のある俺の攻撃は(わず)かに(かす)めていた。



 それだけでもこのプレイヤーに取っては大ダメージだろう。



 だが、臆する事なくこのプレイヤーは体勢を崩しながらも攻撃する姿勢を見せる。

 冷静な判断だ。

 俺の持つ火縄銃が一発撃つ事にリロードを挟まなければならない事をきちんと頭に入っている。



 回復薬などを使うより、攻める事を判断したのは俺が既にNPCでは無くプレイヤーなのだと見抜いているな。



 当然こんな一発だけの火縄銃に頼り切っているなんて事はないし、プレイヤーなら誰もがそうだろう。



 左腕に忍ばせていたもう一つの武器。

 古式銃ソードオフダブルバレルピストル!



 ショットガンなので距離が伸びればダメージは減衰(げんすい)していくが、その分範囲も広く当てやすい。

 この部屋の中なら部屋の端に居てもこのプレイヤー相手なら一撃で倒す事は出来るだろう。



 さあ、臨戦態勢(りんせんたいせい)を取ったと言う事はここからでも何か見せてくれるのか?



 俺は躊躇う事無く左手の引き金を引いた。



 その(わず)か一瞬前、プレイヤーは【オーバードライブ】と言うスキルを使う。

 プレイスタイルと言葉の意味合い的に、限界を超えた動きをするのだろうと予測はしてみたが、肝心の中身がそれに対応出来るはずは無い。



 しかし、このプレイヤーはそれを実現させてきた!



 まるで動きは見えないが、辛うじて残像だけは見える。

 切り返した瞬間に一瞬だけ影が残る程度だが……



 物理的な事を考えれば踏み込んだ瞬間に床にある畳が吹き飛ぶんだろうが、そんな事はどうでもいい。



 このスピードで動いて俺を捉えられるのか?

 その答えはすぐに結果となって現れる。



 完璧に俺へ狙った攻撃を当ててきている。

 ピンチに陥った時のエフェクト効果も感じないので、Lv差で大したダメージは負っていない様だが、首や脇、足首や目元を狙ってダメージを重ねて来る!



 闇雲に腕を振ると、(かす)かに見える残像が遠のいた。

 このスピードで回避行動を取っているだと……?

 成程、ネタは割れた。



 上下左右に打ち分けているから、本当にこの速度に中身のプレイヤーが対応しているのかとも思ったが違う…… 

 そして、俺の中で認めたくは無いと思っていた現実が目の前に現れようとしている。



 薄々感じてはいたが、このプレイヤー……

 俺の知っている奴だ。

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