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想定外は突如として訪れる

 つ……辛い……。 

 町を二つ滅ぼすのになんでこんな時間が掛かってるんだよ……

 早ければ一日で終わると思っていたが、もう五日も経っている。



 忍者の報告だと、戦いが激化して結構凄い事になっているらしい。

 代官同士の戦いだぞ?

 そんな事あってたまるか!



 あーイライラする。

 すぐに終わると思って、ずっと食事制限をして体調不良を(そよお)っているからな。

 お陰で我儘ダイナマイトバディーが痩せこけてしまったじゃないか!

 飯をたらふく食べたいが今は我慢だ。



 ん? 足音?

 誰か来たか……



 「失礼します」

 「日葵(ひまり)か、入れ」



 (ふすま)が開かれると、日葵(ひまり)と共に瑪瑙姫(めのうひめ)も居る!

 ビックリしたぁ……

 先に言っといてよねそう言うのは……

 


 「どうしてもと頼まれましたので、瑪瑙姫様(めのうひめさま)だけであればと、御連れ致しました。 

  消え入りそうな声で頼まれてしまいましたので……

  どうか、私の無礼をお許し下さい」

 「良い……

  儂の心配をしてくれているのだな、瑪瑙(めのう)よ。

  (そば)においで」



 薄い生地の仕切りを開き、瑪瑙姫(めのうひめ)が入って来ると、口を押えて絶句している。

 無理も無い。

 今の俺は連日食事制限をしているせいで、本当に以前とは比べ物にならない程痩せこけている。

 これ程戦争が長引くと思っていなかったし、俺にとっても計算外だしな。



 瑪瑙姫(めのうひめ)は俺の膝に顔を(うず)めて、(すす)り泣き「お父様」と口にしている。



 「泣く事など無い。

  どんなに辛い夜も(いず)れは日が昇る。

  (あせ)った所で朝日は急いでは来ないからな。

  行く末を待つのみだ」

 「お父様……その様な御体になってしまい、床に伏せて起き上がって来ないのではないかと瑪瑙(めのう)(うれ)いております。

  辛い時にはつらいと、(おっしゃ)って下さい。

  出来る事であれば何でも致しますので」



 「本当に大丈夫だ。

  儂の――ゴホッゴホッ――心配はいらぬ。

  ハァハァ……」

 「瑪瑙姫様(めのうひめさま)……」

 「分かりました。

  日葵(ひまり)、お父様を頼みましたよ」



 俺の体を気遣(きづか)って出て行ってくれたな。

 優しい子だ、上手く(だま)されてくれている。


 

 天井裏から忍者が俺の前へと降りて(ひざまず)く。

 


 「吉報(きっぽう)か! 待ちかねたぞ!」

 「御屋形様(おやかたさま)……申し上げにくいのですが……

  櫛名田雪姫(くしなだのゆきひめ)様と許乃波奈佐久夜(このはなさくや)様が致命傷を負い、敗走致しました。

  大敗に御座います」



 「そんな馬鹿な事があってたまるか!

  こっちの軍の戦力は圧倒的だっただろ!」

 「如何(いか)にも。

  ですが、敵は倒した者がしばらくして生き返ると言う奇怪(きっかい)な術を使い、こちらの戦力は徐々に削られ、押し切られた様です」



 しばらくして生き返る?

 ああ、リスポーンする場所が敵の方が有利って事か。

 戦いが長引いたのもそれが理由……

 ここに来てやらかしちまったか。


 

 だが、ここで俺が動くのも良くない。

 あいつ等を出すか……



 忍者に雪之丞(ゆきのじょう)とショコラとひょん太郎を呼んで来て貰う。

 代官の二人の治療は精霊術士の回復魔法で治っているみたいだし、もう一度出撃して貰おう。

 リスポーンに関しては、金の力で二つの町の人間はリスポーン出来ない様に無理やり変更させた。

 それで驚くことも一つ発覚してしまった、代官は元々リスポーンしない。


 

 そう言う大事な事は伝えておいて欲しかったな。

 油断してたら俺もこのゲーム終わってたかもしれねえ……

 まあ、敵の代官を倒した辺りで何となくそうなんじゃないかとは思っていたが。



 廊下をぞろぞろと歩いて向かって来る音が聞こえ、三人揃って俺の前へと現れた。



 「どうしたんすか?

  そんなに痩せて」

 「気にするな。

  これも演出のうちの一つだ」



 俺は事情を説明して、三人に二つの町を代官と共に滅ぼせと命じた。

 櫛名田雪姫(くしなだのゆきひめ)にはショコラと一色重盛(いっしきしげなり)を付け、許乃波奈佐久夜(このはなさくや)には雪之丞(ゆきのじょう)とひょん太郎を付けて挑ませる。


 

 流石に過剰戦力だと思ったので、あまり手は出さずに一日掛けて勝負を決して来いと伝え、見送った。



 はぁ……

 もうリスポーンもしないし、今日一日我慢すれば腹いっぱい飯が食えるぞ!



 筋書(すじがき)が変わっちまったし、懸念すべき問題が出ちまったが、なる様にしかならねえし、女代官の二人のトラウマとかになってなきゃいいけど。

 なってたらなってたでやり様もあるだろうしな。



 本当なら今頃は更地にした町の開拓をしている予定だったが、その後にしようと思ってた事を先にやっておくか。

 


 世界中を走り回って情報を集めている忍者達によって、様々な情報が俺へと入って来る。

 そこでNPC達に持たせる武器をグレードアップ出来る丁度良い素材を二種類見つけたので、大量にその素材を手に入れて来て貰う。



 素材は二つあって、ファンタジーでお馴染みのミスリルとマジカルクォーツって言う透明な色の着いた石だ。

 ミスリルは優秀な金属で、魔法にも適正があるから武器屋防具だけじゃなくても色々と使い道がある。

 装備に関しては物理職向きだな。



 マジカルクォーツは特殊な精錬によって、魔法をメインに扱う職業の装備に使える。

 


 どちらもプレイヤーにとっては最終装備の候補にはならないが、量産されるNPC達にとってはかなり上等な素材だろう。

 


 かなり遠い地域で採掘出来るみたいなので、専用の採掘班(さいくつはん)を向こうの町へ滞在させ、運搬係(うんぱんがかり)には何度も往復して貰う。

 後は職町(しきまち)の職人達をクラスアップさせまくって良い物を作って貰えば良い。



 旅は危険だろうし、運搬係(うんぱんがかり)には護衛を付け、索敵(さくてき)の優れた職業の奴も数人付ける。

 勿論(もちろん)重要な任務なので全員クラスアップさせて向かわせた。



 後は、城の地下でやってる戦闘がどんなもんになっているのか見ておくか。

 あれからずっと休みなく戦っているだろうし、高度な戦術のやり取りが行われるといいんだけどな。


 それと、プレイヤー達に試合を観戦して貰い、試合ごとに賭けをさせる。

 そのうち大会なんかも開いても良いかもな。

 戦っている武士達もだいぶ慣れているだろうし、そろそろ観戦できる様にして儲けたいしな。



 名前はシンプルに分かりやすく“サムライバトルアリーナ”にした。

 観戦できる様にする前に、まずは様子を見ないとだ。



 戦っている武士達を観戦しに、俺は城内の地下施設へと向かった。

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