05:会議
三人の興奮が落ち着いた後、各々好きなメニューを注文し、食事を摂りながら話し合いを開始した。
「何か受けるクエストは決まってるのですか?」
「いや、決まってないけど……何かおすすめとかってあるの?」
ギルドには年中、様々な依頼が各地から飛び込んでくる。
秘境の調査からモンスター退治。その内容によって難易度を表すランクと相応の報酬が提示される。
それがクエストと呼ばれるものであり、冒険者はそのクエストをこなすことによって生計を立てる。
「まずは簡単なのがいいんじゃねぇか?戦い方とかもよく分かってないしな!」
「そうね~。簡単なお仕事がいいわね~。」
そう言いあって楽しそうに笑うジギタリスとアベリアを尻目に、サンナはフォークを置き顎をつまむ。
「全員、経験はないということですね……ならば、遺跡調査でも探してみますか。」
「遺跡調査?」
クエストというと、もっと過酷そうな内容を想像していたフィカスは、その言葉に拍子抜けした気がした。
「はい。古代人が遺した遺跡を調査するんです。場合によっては、モンスターの住処になっていることもありますし、まだ調査されていない空間があったりするので。そういうことを調査するクエストです。」
「へぇ詳しいなサンナ。アサシンって言ってたけど、慣れてるのか?そういうの?」
サンナは水を一口飲む。
「ええ。まぁ。個人でずっと活動していたので。もっとも、パーティーで活動したことはないので、その点で言えばあなたたちと同じ素人ですが。」
「じゃあ、そういう内容のクエストを明日、探すとして……パーティーってどこで寝泊まりするの?」
本当に素人なのか……。
サンナはフィカスの言葉に若干呆れた。
「冒険者ならギルドで休めますよ。料金はかかりますが。」
「そうなんだ。じゃあ僕が皆の分も払うから……って皆もここに泊まる?」
「おうよ。ここが一番安いからな。つーかフィカスがいれば金に困ることはないか。創造してもらえばいいんだからな。」
ガハハ!と笑いだすジギタリスにサンナは待ったをかけた。
「そのことなんですが、フィカスの魔法で金を創造するのは無しにしましょう。」
「ん?なんでだ?」
「いくらパーティーを組んだからといって、一生このメンバーで活動するわけではありません。フィカスの魔法に依存してしまったら、万が一の時に元の生活に戻れなくなります。ですので、問題解決や戦闘時以外で創造魔法に頼るのは禁止にしましょう。」
「いや、でもよ。楽できるなら……。」
「は?文句があるのか?」
「いや、何でもない……。」
急に冷たい態度になったサンナの迫力に圧倒され、ジギタリスは反論を諦めた。
「でも、フィーくんはどうして冒険者になったの?お金が作れるなら、働かなくてもいいんじゃないの?」
「うん……そうなんだけど……ただ、そうやって何もしない生活はしたくなくって。ちゃんと、僕は生きているんだって言えるような生活がしたいんだ。」
それが、フィカスが冒険者になった理由である。
子供の頃の記憶から、いいようにされるのは嫌だと思っていた。だから、自由に生きる冒険者に憧れたのだ。
「とりあえず、今日の宿代は私が払います。明日からクエストで金を稼ぎましょう。」
サンナのその言葉で会議は終了し、冷め始めた料理を一同は慌てて頬張った。