03:武闘家
最初はぎこちなかったフィカスだが、ジギタリスと会話をしていくうちに、徐々に緊張もほぐれ普通に話せるようになってきた。
夕方も終わり、窓の外も薄暗くなってきた。
もう少しすれば真っ暗闇になることだろう。
そろそろ夕食の時間となる頃、新たな者が二人の座るテーブルへと近寄ってきた。
「あの~、フィカスさんですか?」
のんびりした声音の少女。
線の細い身体、蒼銀の真っ直ぐな背中まで届く長い髪。
Tシャツにホットパンツという肌の露出の多い服装だ。
「うん。僕がフィカスだよ。」
「そうなのね~。私はアベリア。初めてこういう所に来たんだけど、えっと、私も仲間にしてくれる?」
「おうよ!大歓迎だぜ!」
ジギタリスが答え、フィカスに「女の子だぜ。」と言った。
「良かった~。それじゃあよろしくね。えっと……フィカスさんだから……フィーくんでどう?」
「フィー……?まぁうん。いいよ。」
「おっと嬢ちゃん。俺にもあだ名をつけてほしいぜ。俺はジギタリスだ。」
「じゃあ、あなたはジギくんね~。」
ガハハ!と笑うジギタリスに微笑みかけて、アベリアもテーブルに座る。
「楽しそうね~。良かったわ~。」
ふわふわした雰囲気の少女だ。冒険者には見えない。
「アベリアは……職業、なに?」
「私はね、武闘家よ~。ほらぁ。」
手にはめた指ぬきグローブを見せる。
喋り方といい声といい体格といい……とても武闘家、つまり最前線で戦う者であるとは思えない。
「うーん……僕はまだなんだけど、アベリアは戦ったこと、あるの?」
この質問にアベリアはゆっくりと首を横に振った。
「ううん。戦ったことはないよぉ。けどね、魔法で力が出せるから、きっと大丈夫よ~。」
この、のんびりした声音だと大丈夫と言われても、素直に頷けない。
「まぁそんな心配そうな顔すんなってフィカス!俺たちは全員、ギルドに関しちゃあ素人なんだ!皆で同じスタートラインから頑張ろうぜ!」
「ジギタリス……うん。そうだね。これから同じパーティーとして共に過ごすんだ。三人で頑張っていこう!」
「おう!」
「お~!」
全員初心者というのは、どうしても不安が残ってしまうが、元気なジギタリスとのんびりしたアベリアによって、明るい雰囲気になる。
「それじゃ、パーティーも三人なったことだし、そろそろ飯にするか!何か頼もうぜ!」
ここ、ギルドでは冒険者たちが準備を整えられるよう、様々な設備がある。
浴場に寝室、そして食事処としての機能も備わっている。
テーブルに置いてあるメニュー表を手に取り、何を頼もうか三人で話し合い始めた時――
太陽が完全に地平線へと沈み、町を夜が支配するようになった頃――
三人の座るテーブルに静かに近づいてくる存在があった。
「あなたたちが新パーティーの方ですね?」
どこか冷たさを感じさせる女性の声がした。