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リリック〜魔法使いアイアンの冒険伝〜  作者: 風来坊 章
第1章 ベルンファーストと始まりの章
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第5話 死霊使いワイド

 まあいい、アイアンのガキよりこっちが先だ。


「どうした? 何かあったのか!?」


「C級のベンです! 冒険者3名が魔物にさらわれました!!」


 げっ、マジか!?


 やべえぞ、一大事だ。


 クソ、アイアンのガキが来てからというものの、トラブル続き、こいつ疫病神か何かかよ。


 いや、それは一旦置いてまずは状況が知りてえ。


「落ち着けベン。まずは、いつ、どこで、誰が何があって、なぜ、どうしてこんなことになったんだ?」


 こういう時は5w1hが基本だ。


 俺が前世で尊敬する先輩ホストから習ったイロハ。


 客のプリンセス達と、会話のキャッチボールを成立させる上で、相手が答えを返しやすいように気にかけて話す事も大切だって叩き込まれた。


 先輩曰く……。


「人の気持ちを考えれる」

「聴く」

「伝える」


 これがホストの極意だと、もう名前は思い出せねえけど、尊敬する先輩から教えてもらった。


 そしてそのための5w1h。


When(いつ)

Where(どこで)

Who(だれが)

What(なにを)

Why(なぜ)

How(どのように)


 前世の社会で最初に習った経験が、この世界でも生きてるわけだ。


 まずは、救援要請しにきたベンに事実確認をしねえと緊急事態に対処ができねえ。


「はい、ギルド長。コースドロード沿いの村々から依頼が入った件で、最近その辺りの農作物が荒らされたり、子供たちが行方不明になってる件、自分ら調査してたんです」


 ああ、それは知ってる。


 最近俺が整備した街道沿いの村々で、オオカミとかモンスターの類が目撃されてっから、調査ってことで村長達に依頼を出させてた。


「それで?」


「それで、リーダーのエレナが、ゴブリンの築いた巣穴を発見。エレナ含めた冒険者がさらに調査しようとしたんすが……自分ら戦ったんですけど、大勢のゴブリン達が来て、みんなさらわれました」


 はあ!?


 余計なことしやがって、まずは報告が先だろうが。


「おい、モンスターの根城発見したらまず報告だろ。お前ら、何やってんだよ! それにゴブリンが巣を作ってるだと!? 最優先報告事項だ!!」


 俺が組合員へ最初に教えた報連相な!


 報告、連絡、相談!!


 まるでなってねえよ、冒険者の基本だろうが!!


「すいませんショーン様!!」


 くそ、マジいな。


 その行方不明事件も作物への被害も、ゴブリン共の仕業……クソが、状況最悪だ。


 ゴブリンの生態は、確か元々妖精になるはずの存在が、なんらかの悪意の影響で闇堕ちした子鬼みてえな生物で、身長120〜130センチで、醜くてずんぐりとした背格好。


 性格は残虐非道で、子供さらって食ったり、周辺の生態系や田畑を荒らしまわるクソみてえな害獣だ。


 言うなら人間に害を与えることを喜びとする化物で、暗い場所を好む陰気な性格をしている陰キャ共って感じ。


 一匹なら非力なモンスターとも呼ばれるが、奴らそれなりの知恵ってのがあって、人間の身につけた剣や鎧を装備できる賢さを持ってる。


 しかも巣穴だと?


 ゴブリンは基本群れて行動する上、繁殖力が高い。


 一匹見つけたら、少なくとも十匹いると思ったほうがいいほど、奴らの繁殖スピードは高くて、ゴキブリみてえな魔物。


 単独ならはっきり言って雑魚だが、奴らは俺たち人間同様、5匹いたらグループを作り、10匹以上いたらチームを作り、それ以上だと軍団を作る。


 ゴブリンにさらわれたってことは、かなりの数が繁殖してて、下手すりゃ食糧にされてる可能性も……。


「それでさらわれた奴らの名は? エレナって子以外で」


「はい、司祭見習いクリスタと武闘家ジャック。早く助けに行かないと殺されてしまいます!」


 やべえな、事態は一刻を争うか。


 いや……待て、変だ。


 なんかおかしいぞこいつの報告。


 だってクエスト行ったの、30分近く前にすれ違った、あの可愛いルーキーの女の子がリーダーしてるチームだろ?


 どうやってこんな短時間で報告に?


 こっから現場までの移動だって、歩いて30分近くかかるし、馬なんか駆け出しのこいつら持ってないし。


 で、現場確認したあとで走って帰ってきたとしても、時系列的に釣り合わねえ。


 それに戦闘して来たって言い張る、このベンの衣服に乱れもなければ、ロングソードに血や傷なんかもねえし、怪しいぞ。


「おい、今俺に、嘘の報告しやがったろ?」


「え? 自分を疑ってるんですか!!」


「当たり前だろ。クエスト場所からこんな短時間で戻ってこれるわけねえ。で戦闘してきた? 綺麗な装備と剣しやがって、どこがだ馬鹿が。お前の言ってることはおかしい」


 すると報告しにきたベンが、突然ガクンと項垂れたあと、精気のない顔で白目剥いて血の涙を流す。


 顔を上げると完全に生気とかなくて、跳ね上がったと思ったら、まるで全身の関節が無くなったような感じで、体をクネらせながら、進●の奇行種みてえに周囲を走り回ったあと俺のもとまでまたやってくるし、マジでキメエ。


 それに得体のしれねえなんかドス黒いオーラみてえの放ってるが、なんなんだ一体!?


「キーーーーヒッヒッヒ! 人間にしては鋭い」


「な!? ベンじゃねえな? お前何者だ!!」


 走り回ってたベンが動きを止めて、血の涙を流しながら俺の方に振り向いた。


「ワシはアトム様の側近にして十三魔将最古参!! 死霊使い(ネクロマンサー)とも邪悪な司祭(イービルプリースト)とも死霊魔導士(エルダーリッチー)とも魔軍宰相とも呼ばれるワイドじゃ!!」


 えっとこいつ今なんて?


 肩書長げえしワイド? 


 昔のテレビの大きさみてえなこと言いやがって。


 すると、ファーティーマが杖を構えて俺の盾になり、他の冒険者も俺の前に出て剣とか抜くが……。


 よくわかんねえから、もう一回聞こう。


「えーと、聞こえなかったんで、自己紹介もう一度いいかな?」


「だーかーらー、ワシはアトム様の魔王軍十三魔将が一人、魔軍宰相のワイドじゃたわけめが!!」


 魔王軍……はえ!?


「えーとアトムって、あの伝説の魔王アトム?」


「当たり前じゃろ」


「十三魔将の宰相って言うと、魔王軍でもかなり偉い?」


「当たり前じゃ無礼者め! ワシは魔将を統べるアトム様の側近じゃ!!」


 ちょおおおおおおおおお!!


 おいおいおいおい、魔王軍大幹部来やがった!!


 七武海とか四皇みてえなやべえのきたああああ!


 なんでえええええええ!?


 なんでわざわざ俺の冒険者組合に!?


 マジ意味わかんねえぞ、魔王とか魔王軍って伝説の聖女様や勇者様に退治されたんじゃあねえのかよ?


 ていうか普通さ、行くなら聖女伝説と魔王軍の因縁とかありそうな、聖王様がいるダブリンスだろ!!


 なんでよりにもよって、うち!?


 意味がわかんねえええええええええ!


 ま、待てイケメンショーン、テンパるな俺。


 俺はクールで二枚目な貴族組合長だろ?


 まずはこいつにペラつかせて、目的を探るんだ。


 それで聖王陛下や教団庁に報告すれば、この俺が王国内で大出世の可能性も……。


「えへん、ウオッホン。魔王軍大幹部様、ようそこ我がベルンファーストの冒険者組合へ。この俺が冒険者組合長のショーン・スレイ……」


「知っておるわアホ」


……この野郎!! 


 いや待て、俺を知ってるってことはこいつの目的ってまさか……。


「ふん、あの極悪な勇者が結成した冒険者組合。その一つを、我が下僕の小鬼どもの巣に案内して、お前もろとも誘き寄せ、皆殺しにしようと思ったが……小僧め知恵が回る」


 俺と冒険者組合滅ぼすのが目的!?


 つうか、あっっっぶねええええええ。


 こいつの策略に乗ってたら、俺たち冒険者ギルドが全滅してたかもしれなかったってことかあああああ。


……ていうかよ、伝説の勇者様を極悪な勇者とか、凶悪な魔王軍がそこまでいう勇者様って、どんな人だったんだろう?


 勇者って前の世界のゲームじゃ、剣も魔法も使えるパーティの攻撃の要的な感じだったよな。


 けど転生したこの世界じゃ、どんな姿だったかとか、いまいち記録にも残ってねえし。


 なんか興味が出てきたし、そろそろクエスト確認しに、うちの冒険者主力メンバーも、もしかしたらバーベンフルトさんも来るかもわかんねえ。


 時間稼ぎのために聞いてみっか。


「えっと、魔王軍大幹部のワイド様でしたよね? 伝説の勇者様ってどんな感じだったんすか?」


「……お、お、思い出したくもないわ。一言で言えば恐怖の化物じゃ。あんな極悪非道で、情け容赦ないやつ……」


 うわぁ、魔王軍から恐怖の化物呼ばわりされてる。


 しかも極悪非道とか、情け容赦ないって……それってお前ら魔王軍も人のこと言えねえよな?


 伝説のレムリア大陸を滅ぼしやがった連中だし。


 まあいい、さらに深掘りするぜ。


「えっと、そうなんすか? 具体的には?」

 

「き、きっと、別世界から来た大魔王……恐ろしい。あの極悪な笑み、そして神や魔をも超えた力。うっ、お、思い出したら、は、吐き気が、ウップ……おええええええ」


 うわぁ、恐怖でえずいて吐いたこいつ。


 きっと伝説の勇者様にやられまくって、吐き気を催すほどトラウマになってやがんだろう……。


 ていうか、マジでそんな怖いんだ伝説の勇者って。


 なんだろう……。


 なんか、俺の気持ちにも余裕出てきたな。


 まず周囲の状況とかみんなの状態を確認しよう。


 あー、みんな魔王軍大幹部の出現にビビってる。


 ファーティーマも冷や汗流してるし、ハロルドも顔引きつってるし、みんなかなり緊張してるか。


 そりゃあそうか。


 俺だって正直いうと怖いが……なんとか気持ちを冷静に……時間を稼いで、主力冒険者達と合流しつつ、こいつを倒せる方法がないか探って……。


 ん? アイアンがなんかボソボソ言ってやがるが、えーと、何こいつ?


「チッ、ビートがねえと言霊(リリック)がイマイチだがしょうがねえ」


 は? 


「ai yo、死に損ないが来やがった♪ shit(シット)! 偉そうなdis(ディス)りで高慢チキ! 死体チキチキ操ってうぜえぜman(メーン)! そんなジジイに恐怖の記憶♪ hard(ハード) core(コア)! 伝説のGangsta(ギャングスタ)!! 伝説の刀チキチキ♪ 魔法とピストルがバンバン♪ ジジイもビビるバイオレンス! 俺もパワーをバンバン溜めるぜ♪ チキチキバンバン、伝説の勇者リアルにリスペクト」


 こいつこんな時でもラップ歌ってて、頭がおかしいにもほどがあるうううううう!


 ダメだ。


 こいつ見てると俺も頭がおかしくなりそうだ……。


 うん、アレだな、ほっとこう。


「くっ、嫌なことを思い出させおってからに。ワシにダメージを与えるとは、なかなか知恵が回るのう」


 は? え? 俺のせい?


 いやいや、お前が勝手に自分の思い出でビビって精神的ダメージ受けたんだろうが。 


「それに我ら魔王軍に手を貸したのは、他ならぬお前達ナーロピアンじゃ」


 いやいや、伝説と違うだろ?


 魔王アトムが伝説のレムリア大陸を荒らして、人類対魔王軍って感じになって、うちらナーロピアン領域、伝説の聖女様が率いる騎士団と教会が立ち上がったんじゃねえのか?


「ふふ、馬鹿な人間共め。あの極悪な勇者と自分達の先祖が流布した伝説を信じきっとるようじゃ。まあよい」


 何がまあ、良いだよ。


 大物振りやがって、自分の言い分を正当化しようかっていっても俺には通じねえぞ。


 お前みてえなやつなんか、俺の冒険者組合の主力が来れば……きっと。


「ワシにダメージを与えた小賢しい貴族ショーンよ。褒美に死ぬがよいわ」


 だぁかぁら、お前が勝手にダメージ受けたんだろ!!


 俺のせいじゃねえって……うぉ!!


 ベンの死体に乗り移ったワイドから、ドス黒い得体の知れないオーラが吹き出して、背中に怖気が……クソが、やべえよ、やっぱやべえよ。

 

 魔王軍大幹部なんて俺じゃ無理だ。


 バーベンフルトさんなら……いや、それでも厳しいかもしれねえ。


 それこそ、うちの領地だけじゃなくてこの国の騎士団総出でかかっても……やべえ気がする。


 なんたって大陸ごと滅ぼしたり、100年前に世界征服とかしようとした奴らだ。


 今は亡きパパから聞いた伝説でも、抵抗する騎士団は皆殺しにされたり、俺のこの世界の曾祖父さんも、戦争で小指とか無くしたらしい。


 今年で120歳になる聖王様も、王子時代に左腕とか無くしたらしいし、無茶苦茶な戦いだったようで、マジで王国が滅びる寸前まで行ったと聞いてるが。


「キッヒッヒ冥土の土産じゃ。聞け人間どもよ、まもなく魔王アトム様が復活なさる」


「ま、魔王復活……だと」


「ヒヒ、魔王軍は新たな将を迎え入れ、すでに世界を手にする準備ができたわ。世界はアトム様の恐怖によって等しく支配され、闇に包まれるのじゃ!! 暗黒太陽(ダークエクリプス)


 ウゲッ、魔法陣が出てきたと思ったら、俺の城の上空にドス黒い光を放つ、もう一個の太陽みてえな、なんかすげえ魔法が出現しやがった。


 暗雲が立ち込め始め、文字通り空が闇に包まれて、ドス黒い太陽みたいのから、血のように赤い炎の揺めきが。


「キッヒッヒ、当初の予定とはそれてしまったが、この街もろとも貴様らを、ワシの暗黒の原子爆発波で焼き尽くす」


……へ?


 原子爆発って、アレだよな?


 ここを核爆発って……ちょ……え?


 するとファーティーマが、頭を抱えて崩れ落ちる。


「そ、そんな。なんて凄まじい魔力。これが魔王軍の力……ダメ……こんなの防げない」


「……そんなやばいのか?」


「ええショーン様。こんな魔法今まで見たことない。おそらくレベルにして9クラス。間違いない、この魔力は人間の理解を超越した大魔法」


 レベル9っておまっ。


「クカカカ、これをもって魔王軍復活を宣言する! この街もろとも貴様らの命を生贄にして、アトム様復活の供物にしてやるわあああああ」


 やべええええええええええええ。


 魔王復活間近とかやべええええええ。


 ていうか俺の街が焼かれるうううう。


 やべえ原爆とか引き起こす、レベル9とかの魔法で消されるうううううう。


 ファーティーマも、あんな魔法に対処できないって言ってるし、どうしようこれええええええ。


back off(うるせえぞ)! asshole(バカヤロー)!!」


 は?


 アイアンが魔王軍大幹部のワイドに、両手で中指立ててるが、え、ちょ、おま!? 


「ふぁっ!? 何してんのアイアン!?」


「yo さっきから俺の仲間をdisりやがって。偉そうに何が原子爆発だ! なめやがって! 俺のパンチは原爆以上だ。なめやがった罰くれてやる」


 ウゲっ、アイアンが魔王軍大幹部に喧嘩売り始めたが……や、やめろおおおおおおお、死ぬううううう。


 お前は良くても、戦闘に巻き込まれて俺が死ぬうううう、俺の家族も城の奴らも街の奴らも組合員もおおおおおおおお。


「ん? なんじゃい……あ!?」


 ん? 何?


「あ、あ、あ、あな、あな、あなあなあなあなあな……」


 すると冒険者ベンの死体に乗り移ったっぽい、魔王軍大幹部が、プルプルと右手の人差し指を向けてアイアンを指す。


「誰がケツ穴(アナル)だこの野郎!!」

「アナ……ルッッ!!」


 一瞬で高速移動したアイアンが、魔王軍大幹部を殴り飛ばしたが、え!?


 石畳に仰向けに倒れた魔王軍大幹部に、馬乗りになったアイアンが両拳を振るって、マウントポジションでボッコボコにし始める。


「空気、読めねえし! 俺を見て敬意(リスペクト)もねえ! しかもチキン野郎のくせになめやがって! 俺をアナルだと!! 殺すぞジジイこの野郎!!」


「ぎゃあああああああ、やめてくだされ! それにジイはもう死んでますじゃああああああああ! お、お助け、お助けくだされええええええええええ!!」


「バンバン、振り下ろすぜ言霊(リリック)……ゲンコツかますぜ“鋼乃拳”もう一回死ねや、過去の亡霊め。ワルのwack(ワック)なんぞお呼びじゃねえ!!」


 マウント取ったアイアンの渾身の一撃で、操られた死体の頭が弾け飛び、ベンを偽った魔王軍ワイドの肉体が崩れて消滅する。


 しかも上空に出現した暗黒の太陽みたいな魔法も消えたが……え?


「チッ、つい勢い余ってぶっ殺しちまったぜshit(シット)


 ふぁあああああああああ、マジかあああああ!


 魔王軍大幹部をやっちまった!!


 来て早々、こいつやべええええええ。


 やべえ大戦果あげたあああああ。


「すげー、アイアンが魔王軍大幹部やっつけた!!」


「ルーキーが、魔王軍大幹部討伐したぞ!!」


「勇者様の再来だあああああ!!」


「こいつすげえやつだ!」


 するとアイアンの黒のローブから、あの妖精がヒョコッと顔を出してアイアンの頭上を飛ぶと、両手の竪琴を奏で始めた。


「ha! 性懲りもなくワルの魔王軍復活だとwack(ワック)共!じゃあ、俺がカマすぜ言霊(リリック)! 魔王軍なんざ、俺の魔法(フロウ)でぶっ潰してやる!! 彼女が残してくれた世界に、ワルなんざお呼びじゃねえし必要ねえ!!」


 なんか知らねえけど、マイク持っていきなり俺んちの中庭で即興ライブ開催されてるし、盛り上がってんし。


 アレか、俺は今ここで伝説の誕生ってやつを目撃してんのか? そのゲームとかである勇者誕生的な。


 わけがわからねえが、こいつがすげえパワー持ってるのは間違いねえ。


「ゴブリンだかグレムリンか知らねえが、仲間を救いに行こうぜ仕事だ冒険者! oi(おい)ショーン、クエスト寄越せ! 俺が仲間を助け出してやるぜ!」


 チッ、いちいちラップしやがってうぜえ。


 だがこいつが歌うラップの言う通り、俺達冒険者を誘き出すために仕組んだ罠なら、人質になってるC級のルーキー達も生きてる可能性があるか……。


 ええい、しょうがねえ!


 俺もこいつの鼻を明かすために乗ってやらあ!


 多摩川の河川敷で磨いた俺のラップをなあ!


「ok、調子乗んなよルーキーめ! 俺こそがベルンファーストのレペゼン!! 組合長のイケメン、ショーン様だ! 緊急クエスト出すぜお前ら、ゴブリンから仲間救い出せ♪ 組合長依頼だしボーナス弾む! お前らカマシに行くぜゴブリンに♪ 冒険者の仲間を、救いに行くぜッッ!!」


「うおおおおおおおおお!!」


「いいぞ組合長!!」


「あ、ショーン様。俺、今から師匠のところ戻って装備つけてくる」


「あたしも、スクロールとアイテムを取ってくるわ。行きましょう、仲間を救いに」


 なんか久しぶりにラップ歌って、前世で10代のガキの時分に戻った気がして恥ずかしいけど、これはチャンスだ。


 俺の冒険者組合が魔王軍大幹部を討伐し、魔王軍の尖兵を退けたって聖王陛下にアピールすれば、この街も組合もさらにデカくなる!

 

「話が早えぜイケてる組合長♪ rhyme(ライム)はいまいちだがラップもイケるじゃねえか♪ バッチリボーナス弾んでもらうぜ♪ hurry up 行くぜ言霊(リリック)疾風踏破(しっぷうとうは)” 風、まとって弾むぜ体が♪ 仲間救いに行ってくるぜ!」


 金にがめつい野郎め。


 だが、今後見込める経済効果を考えれば、全然痛くねえ出費。


 アイアン、お前の存在をダシに使わさせてもらうぜ。


 俺の出世と領地のためにな。


 ん?


 ちょ、アイアンのやつがいねえ?


 どこに行きやがった!?


 キョロキョロ俺があたりを見回すと、アイアンのやつ妖精と一緒に空飛んで、猛スピードでコースドロードの街道方向へ飛んでいきやがる。


「あいつ、一人で行く気か!? 馬鹿が、ゴブリン共を甘く見過ぎだ!! それに組合をぶっ潰す罠をはっていたとなると、きっとゴブリン以外にも何かいやがる可能性も……ええい、言ってもしょうがねえ」


 どうしよう、追いかけるか?


 いや、早すぎてもう見えなくなっちまった。


 クソが、協調性のカケラもねえガキめ。


 それに、今後のことも考えなきゃならねえ。


 魔王軍大幹部をやっちまったってことは、きっと奴らは復讐で、アイアンと俺達ベルンファーストの冒険者組合を潰しにかかってくるだろう。


 面倒なことになっちまったぜがしょうがねえ。


 聖王陛下と、教会庁に報告だ。


 魔王アトム復活の可能性と、魔王軍完全復活。


 そんで、俺が共同撃退者として、魔王軍最高幹部の討伐も報告して、大出世狙ってやんぜ。

野望全開のショーン君ですが、今回の魔王軍ですがぶっちゃけトータル的にはそんな強くないです

この世界基準で言うと強いですが

ただ、一度勇者に心を折られるくらいやられてるので色んな勢力通じてタチの悪い戦法と実行して主人公曰くウゼエことを色々してきます

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