第4話 戦士ハロルド
「ねえ!! アイアン!!」
「yo、ハロルドじゃねえか? 道具持って来て俺と遊んでくれるのかい?」
「ああ、なんかさ、お師匠様以外で……訓練してくれる相手見つけたなって」
は? えっと……えぇ?
ちょっと待って意味わかんない。
マジで何考えてんのこいつ?
「OK、俺もやりてえと思ってた♪ 槍、構えて来いよハロルド! 楽しく、俺と踊ろうぜ! パーティタイムの始まりだ!!」
おいいいいいいい、ちょっと待て!!
事態が収集つかねえ方向に行ったああああ!!
つうか何がパーティタイムだよ!
普通はな、パーティって言ったら、みんなの気持ちがハッピーになるショーとか催しだっての!!
お前の言うパーティタイム、俺全然楽しくねえから!
なんならお前に一方的にヤられたC級連中もな!
だいたいハロルドも何考えてやがんだ!!
おめえに何かあったら、俺がぶっ殺されるだろG級のバーベンフルトさんにいいいいいいいい!!
こうして、中庭で槍を持ち出してきたパンツ一丁のハロルドとアイアンのバトルに発展しちまったようだが、意味がわからないし、なんなんだこの状況。
「すごいなアイアンは。でも……」
手に持った槍を下段に構えたハロルドが、心底嬉しそうな顔をして笑う。
「そこの先輩達は、アドバイスとかで俺を助けてくれたこともあったんだ。だからさ……やろうよアイアン、先輩達に代わって俺が相手だ!」
「ハ、ハロルド……」
「す、すまねえ」
「あとは頼んだぜ」
「ありがとうハロルド」
アイアンにやられたC級共が、ヘロヘロになりながら起き上がり、ハロルドの肩や腰にタッチして、アイアンとの戦いから離脱する。
「お前カッコいいじゃん、人間できてるな」
ああ、確かにアイアンの言う通り。
バーベンフルトさんの弟子ってことで扱ってたけど、他の奴となんか違うって内心思ったが、こいつの器というか人間性すげえ。
俺なんて、目の前にいるC級なんざどうでもいい奴らで組合から排除しようと思っていたのに、箸にも棒にもかからねえようなこいつらの、いいところもちゃんと見てやがった。
もしかしたらこいつ、バーベンフルトさんが目をかけてるから、将来G級冒険者になる逸材なのか?
そしてハロルドと対峙する、俺が見つけたアイアン、多分俺と同じく地球から来たこいつもいずれG級にって……なるかボケエエエエエエエ!!
揃いも揃ってなんで組合長の俺の意向、無視しやがってんだよ、このクソガキ共がああああああ!!
クソが! なめやがって!!
俺は伯爵で領主でギルド長だぞ!
組合でもこの街でも一番偉いんだぞ!!
お前らの昇級も降格も、全部仕切ってんのが俺だからな!!
しかも俺はハロルドをよろしく頼むって、頼まれてんだよ!!
ハロルドに何かあったら、俺がぶっ殺されるかもしれねんだよ、G級冒険者のバーベンフルトさんによ!!
どれくれえあの人がやべえかって言うとな、デスゴーレムとかいう超絶やべえモンスター出現で、国家非常事態の緊急クエストの時、そのモンスター瞬殺したくれえやべえ人なんだよって!
自分がぶっ殺したドラゴンを鎧とかにして装備してる、鬼いかちい人なんだっての!
その辺の山とか森に出てくるお化けヒグマなんかも、デコピン一発くらわせただけで尻尾巻いて逃げるくれえ、人間の形した化物だっつうの!
うっ、胃が痛え。
クソが、ストレスで胃が痛えし頭痛も。
前世の仕事で飲み過ぎた翌日、二日酔いで薬が欲しくなるくれえ痛くなって来た……。
止めるか、二人を。
いや待てよ、この場でハロルドがアイアンをわからせちまえばいいんじゃねえか。
そのあとで俺が出ていって、色々口実つけて、クソ生意気なアイアンへ首輪をつけられるかもしれねえ。
もしくはハロルドにやられたってことで、お前には冒険者の適性ねえとか難癖つけて、追い出す方向に持ってけるかもしれねえし悪くねえぞ。
それにハロルドも、一応穂先を覆う、穂鞘つけてるし、まあ大事にはならねえだろ。
あの槍は長さ4メートルはあって、刃渡り60センチの穂先には、返しがついたようなでけえ包丁乗っけてる感じのグレイヴってやつだ。
よおし頼んだぜハロルド。
わからせちまえ、アイアンに。
するとアイアンは指をパチリと弾くと、ハロルドが構える槍の穂先の穂鞘が外れるが……マジか。
「this here こっちの方が面白えだろ?」
いや全然面白くないが?
穂先の本身がピカピカ光ってるし。
本身の槍なんざでブッ刺されたり、斬られたら死ぬんだぞ、普通。
そりゃあ地球にねえ即効性の薬草や、魔法効果あるポーションならあるし、聖王教会の僧侶とかなら、聖女様への信仰とやらで回復魔法を使用できるし、瀕死の重症でも助かる場合もある。
だがモンスターの攻撃とかで頭とか吹き飛んだり、心臓とかやられたら、こっちの世界でも当然即死だ。
ゲームでいうドラ⚫︎エのザオリクみてえな便利な蘇生魔法なんざねえから、死んだら終わりだ。
腕とか足をぶった斬られても、一応回復魔法が効くけど、下手すりゃ手足に麻痺残ったりしたりするし、馬鹿な真似やめろってんだよマジでよ。
「来いよ、遠慮はいらねえぜ! 俺も言霊を使う! 遊ぼうぜハロルド、風、巻き起こすぜ“疾風踏破“」
うおっ! 浮き上がった。
空中浮遊しやがったぞアイアン。
これも魔法か!?
「ねえショーン様、アイアンって言ったっけあの子」
うお、いつのまにか俺の隣にファーティマが。
やべえ、色気ムンムンで相変わらずバニラみてえな良い匂いさせてて、メロンみてえな巨乳に、黒ギャルみてえな感じのエロい……じゃなかったエラーム出身の魔女っぽい魔術師。
ああ、たまんねえわ。
俺もこの女と色々いいこと……いや、なんか彼女真剣な顔してるしアレだ、聞き上手な男ってやつを演じねえと。
「ああ、今朝ドネアル広場で手配中の盗賊達をやっちまった冒険者志望だ。あいつ多分魔法使いっぽいけど、君はどう思う? ファーティーマ」
「そうねー、あの子たぶんだけど、あたしと同じエラームにある魔法学校出身で基本学んだかも。あれはレベル3の風魔法。触媒なしに空へ浮くには、絶妙な魔力コントロールが必要」
「レベル?」
レベルって多分あれだよな?
俺の前世で言うドラク●から始まって、ソシャゲとかでもよくある、強さ現すアレっぽい感じか?
「私はレベル5までの魔法を使用できるし、実践レベルで練度上げてるけど。あの歳でレベル3までマスターできてるなんて、結構すごいわね」
ファーティマは、俺にエラームにおける魔法のレベルとやらを教えてくれる。
レベル1が日常で役にたつような魔法で、どこでも火を起こせる魔法だったり、何かを動かす魔法だったりするようで、10が最高レベルだそうだ。
ファーティーマが使用できるレベル5魔法は、相手を攻撃する強力な魔法だったり、こちらをサポートしたりとか、絶好調なら局地的に天候を晴れから、雨に変えられるとか言うけど……マジなら魔術師ってチートだわ。
そんなのがゴロゴロいる、エラーム皇国とかおっかねえ。
向こうじゃ魔法使える盗賊もいるらしいし、俺の街やべえ連中に目をつけられちまったぜ。
「そういやアイアンは、電撃の魔法なんか使用してたが、あれは?」
「……おそらくレベル4か5まで到達してる。私と同格なんてエラーム本国でもそんないないのに……あの歳であの子、魔法の深淵とか覗いてる?」
ちょッ、アイアンやっぱやべえやつじゃん。
S級冒険者のファーティーマのすぐ下くれえまで、魔法レベルとやらに到達してんのかよ。
「そ、そうか。じゃ、じゃあレベル10だとどんな魔法使えるんだろうな?」
「レベル10まで到達した魔法使いは、今までエラームでもいないって言われてるの。それこそ魔王アトムでさえレベルにして9クラスだったようね。伝説の勇者様がレベル10だったそうだけど、私なんかには想像がつかない」
伝説の魔王ですら9って、魔王軍討伐してた勇者様って、やっぱめっちゃやべえ人だったんだな……。
「まあその話はまた今度で。あの子はあの歳で最低でもレベル4まで到達してるようだから、まだまだ成長すると思う。けど……」
「けど?」
「けど、それだけじゃない感じ。やっぱり手の内も全然見せてないし、あの歌は魔法詠唱? 歌いながら呪文を唱えてるわ」
いやいや、ファーティーマちげえって多分。
あれ、魔法詠唱とかじゃなくて俺の前世で流行ったヒップホップのラップだから。
この世界の言葉だけじゃなくて、日本語と英語組み合わせてるようだけど。
「ただ一つ言えるのは、彼、幼く見えるけど、私と同様の百戦錬磨の魔術師よ」
俺と同級のS級魔術師ファーティーマが、ここまで言うなんて、やっぱハンパじゃねえのかアイアンは。
「ねえアイアン、すげえなあ。地面から浮いててそれも君の能力?」
「Oh yeah、風をまとってる。何度も言うが、これは遊びだぜハロルド♪ 俺は風の魔法をまとうことで、自由自在に飛べるし、お前の動きもセンサーみてえに読めるんだ。それに……槍の達人の戦いは知ってるぜ」
槍の達人とも戦ったことあるって、えぇ……。
いや空浮いただけだし、その話もフカシやハッタリって線も……。
「ほれ、突いてこいよ♪ これは遊びみてえなもんだが、遠慮は無用だぜ」
なんでこいつ槍相手に余裕なんだよ。
俺も前世で鉄パイプ持ったやつとか、バット持って喧嘩したこともあるけど、道具は長ければ長いほどいいし、それを相手が持ってたら厄介だ。
ましてや武術とか訓練積んでるやつが馬に乗って使うと、マジで呂布みてえに無双できる。
俺も試しに、バーベンフルトさん交えてハロルドの槍と俺の剣で手合わせしたことあるが、まず穂先を下に構えたアレはやべえ。
どうやべえかって言うと、あの構えされると、ただでさえ長い槍のリーチとかわからなくなるし、ハロルドは槍の突きの手の内をかえつつ、自由自在に操作出来るスキルやパワーもある。
それに状況によって右半身、左半身でスイッチしてくるから、攻撃手段も多彩。
何より体のブレとか一切なくて、瞬間移動してきた感じで、攻撃が見えねんだわ。
俺もハロルドに練習用の槍の皮穂先で、一瞬で突かれてぶっ飛ばされたし、実力的に今すぐAクラスにあげてもいいほど強い。
「へー、俺はともかくお師匠様以外にも強い人っているんだね。どんな人?」
「俺の担任だったメスゴリラ……まあ先公だが、マジやべえぞ。人間の形した化物といえばいいか」
メスゴリラ? 担任? 先公?
学校のことなのか?
人間の形した化物って……。
何を言ってるかはわからねえが、こいつはどこかで何かの教育を受けたようだ。
「その人、どんなことできるの?」
「槍とか杖の腕前もそうだが、魔法がやべえ。時とか操作しながらカマしにくるから、まずは風を利用した魔法センサーで初撃を察するしかねえんだわ。本気だと神に匹敵する召喚獣も出してくる」
「すげえ、時の操作とかすげえ! 召喚獣とかすげえ!」
……えっと、こいつの言ってる意味がわからねえ。
アレか、相手が時とか操作してくるような、ジョ●ョの奇妙なスタンドバトルとかの経験もあんのか?
「なあファーティーマ、時とか空間操作したり召喚魔法が仮にあったら、それどれくらいのレベルだ?」
「時とか空間操るなんて、そんなのありえないけど、レベル9か10。あと召喚魔法は言い伝えでは古代レムリアに召喚魔法はあったらしいけど、今は断絶してる魔法よ」
やっぱ、いくらなんでもそんなことはねえか。
あ、アイアンが手に持ったマイクをズボンのポケットに入れて、空飛びながら自然体っぽい構えをとる。
「じゃあ、君が言うなら本気で行くよアイアン」
うっ、すげえ闘気を発しやがるハロルド。
ていうか遊びの延長で、刃先向けた真剣勝負マジでやり合う気かよ。
こいつら頭おかしいにもほどがあんだろ。
「シッ!!」
ハロルドが先に動いて、アイアンの足狙いで突いた槍を、まるで風みてえに飛んで後ろに避けやがった。
こいつ、ハロルドの本気の突きが見えてやがる。
動体視力ハンパねえぞ。
「お、早い! ほいっ」
さらにハロルドが右足を踏み込んで、右半身にスイッチしたと思ったら、しごくように槍戻す。
「よっと」
うおっ、ハロルドのやつアイアンのローブに返し引っ掛けようとしやがった。
だがアイアンのローブにはなぜか引っかからず、ハロルドがそのまま、腕伸ばした右手の片手突きする。
するとアイアンの野郎、上体を仰け反らせる海老反りみてえな鬼スウェーでかわしたやがったけど、あの体制からどうする気だ?
「オラ!」
うお、アイアンがサマーソルトキックで槍の柄を蹴飛ばして弾きやがった。
あんなの前世のゲームでしか見たことねえぞ。
アイアンが空中でバク宙しながら地面に着地すると、ハロルドが蹴りで弾かれた力を利用して、槍を縦に半回転させる。
「ほい!」
回転させた槍を、ハロルドが両手ですくいあげるように握り直し、カチ上げる感じの軌道でアイアンに打撃を放つ。
だがアイアンが槍の石付きを空飛ぶスウェーで避けたあと、今度は空高く飛んで、5メートルくれえの高さで浮遊してやがる。
まるでドラ●ボの舞空術だ。
「思ったとおりだ。やるじゃんかハロルド!!」
「おーい、アイアン! それじゃー俺の槍届かないよー!!」
ハロルドが槍を、アイアンの方へブンブン振るけど、アレじゃあ確かに当たんねえな。
「だろ? それでこの位置から遠距離用の攻撃魔法とかすると、さらに俺が優位になるんだ。遊びだからやらねえけどよお」
こいつ……距離離して空から攻撃魔法とかエグいこと思いつくな。
まるで戦闘機とかヘリとかの爆撃みたいだが、魔法使いだからそういうことも可能ってわけか。
「ハロルド、お前もお師匠さんとやらが教えたかもしれねえけどよ、もしも空飛ぶ敵が来たらってのを考えといた方がいい」
「そうだね、アイアンって頭いいなあ。もっと遊ぼうよ!!」
「オーケーハロルド。どうよ? 遊びで学べることって、結構あるだろ?」
すると俺の横にいたファーティーマが、口に手を当てて笑う。
「ふふ、やっぱりね。あの子、あの年でかなり戦い慣れてるわ。もしかして魔法学校出身のエリートかも」
「そうなのか? エラームの魔法学校のエリートってあんなガキみたいのもいるの?」
「そう、あたしが昔いたエラームって国は、魔法の才能あると小さい子でも学校に入れさせられるわ。そこを出ればレベル4までの知識が身につく。けど修行が厳しいから、途中で逃げ出して身を崩して、盗賊に入る子もいるみたいだけどね」
ああ、なるほど。
転生先がエラームで、そこで魔法学校とやらに入って魔術師としての経験を積んだって線もあるか。
「でもこれじゃ遊びになんねえな。待ってな、降りるから」
アイアンが空から降りてきて、中腰で構えてるハロルドの、槍が届くか届かねえかの距離で着地した。
「Yo まっすぐ突いてきな。面白えもの見せてやる」
ハロルドが、戸惑いながらも槍をアイアンの体目掛けて真っ直ぐ突く。
だがアイアンが背中を向けつつ、まるでダンスのように一回転したと思ったら、槍を斜め上の軌道に突いたハロルドの槍に沿うみたいにかわす。
するとアイアンは流れるような動きで、ハロルドの持つ槍を両手で掴んで地面に降り立ち……何する気だ?
掴んだ槍を、アイアンが手前に回して引いて、槍の石突を石畳に立てる。
「え?」
今の衝撃で全身硬直したハロルドの槍を、両手で奪い取っちまった。
そのまま返すように、ハロルドの首に奪い取った槍の柄を当てながら、引き倒すようにして床にあっさりとアイアンが転がしちまう。
「へ? あれ?」
流れるような動きでアイアンが、尻餅ついて呆然とするハロルドの首に奪い取った槍の穂先を向ける。
「どうしたハロルド♪ 今一瞬躊躇しただろ? do or die! 一瞬の隙が命取り、本番ならお前の槍と命getだぜ」
……こいつ、鬼やべえ。
ハロルドから、あっさり槍を奪っちまったよ。
多分魔法以外にも、なんかやってる動きだ。
「やばいわねあの子、普通の魔術師じゃない。武道家や戦士の修行とかもしてる」
だよなあ、普通じゃねえ。
武道や剣術なんかの心得もあるかもしれねえし、あいつの魔法もやべえんだろうが、体の動きや身体能力そのものがマジで魔法みてえだ。
「すごいね、じゃあこれはどう?」
ハロルドが、左手で何か掴んでたのを投げつけたが、これは中庭の石粒か?
「Oops!」
アイアンがサッとかわしたところを、起き上がったハロルドが、さっきのアイアンの動き真似してバレエダンサーみたいにくるりと回って、槍を両手で奪おうとした時だった。
「アッッツ!」
なんかの力で弾かれちまったように、槍から吹っ飛ばされたハロルドがまた尻餅つく。
まさか、これも魔法か?
「お前すげえじゃん、ハロルド。今俺がやった無刀取り、練習もしねえで一発でマスターしたのか」
「手のひら痛い、めっちゃヒリヒリするし。体に力入らないけど、これも魔法?」
「そう、電撃を流し込んでた。大丈夫か?」
さっきC級共に使ってやがったアレだ。
まとった電気を槍に伝わせて、スタンガンみてえにしやがったって感じか。
魔法使いってこんなこともできんのかよ。
「うん、もしかしてアイアンも槍使えんの?」
アイアンはハロルドから離れて槍を持つと、中段に構える。
「うりやぁ!!」
捻りを加えて突きを放つが、すげえ突きだ。
ハロルドもポカーンと口開けてるし、アイアン見ながらベラベラやってた周りの冒険者達もシーンとしちまう。
こいつ、魔法以外にも使えるのかよと。
「要するに槍ってのは、突く、斬る、叩く。他に魔槍や神槍の類なら、槍からでも魔法を叩き込めるのよ。リーチ外の相手にも範囲攻撃もできるしやばいよな」
何それ、神槍とか魔槍とかって。
まるでこいつ、見てきたかのように言ってるけど、俺も転生してから、そんなの見たことも聞いたこともねえよ。
「ついでに言うと俺も一通り基本は習ったが、実戦じゃ相手をブッ刺すことくらいしかできねえ。専門的な分野だと日頃訓練してるお前の方が上手いよ」
「スッゲー、アイアン! どこでそんなの習ったの?」
「“学院”だ。そこで一通り学んだよ」
いやどんな学院だよ。
お前みたいな礼儀知らず量産する、ど底辺のヤンキー学院か?
「その学院ってどんなところ?」
「hey hey! 詮索するな、消されるぞ神と天使に」
……いやマジでどんな学院だよ、スケールでけえなおい。
てか、お前が話振っといてなんだそりゃ。
ま、まあどうせフカシかハッタリだろう。
あの年代の中坊にはよくある厨二病だ。
俺の右目には神が宿るとか、生まれついての殺し屋だとか夢想するような。
俺も前の世界で中学に上がる前、ワ●ピやヤンキー漫画読みすぎて、入学初日に神奈川中の不良を束ねるヤンキー王になるんだってクラスでイキったら、それ聞いてた先輩らから呼び出されて、秒でトイレでぶっ飛ばされて泣かされて……まあいいや。
あ、いつのまにかDJみてえな吟遊詩人がいなくなったけど、なんなんだったんだあれは。
「学院ね。聞いたことないけど、可愛いしなかなか強いじゃない。二人とも、食べちゃいたいわ」
うわぁ、ファーティーマが二人見てエロいこと考えてやがる。
マジでこの女エロいよな、それがいいんだが。
アイアンとハロルドも右手を出し、お互いがっしり握り合い、ハロルドの体を引き起こして槍を返した。
「よう、俺とバディ組もうやハロルド。一緒につるもうぜ」
「いいよー、またさっきみたいに遊ぼうよ」
「Hell yes,いつでもいいぜ。あと他のパイセン達の実力ってのも見てみたかったが、まあいい」
こいつらにとっちゃ、今のバトルは遊びの延長か。
まるで遊びって名目で、仲間内のスパーリングとかで盛り上がる、ヤンキーみてえだぜ。
本当はハロルドが、クソ生意気なアイアンのガキやっちまえばよかったが、うちの組合の戦力アップにもなるし結果オーライか。
それにこいつ……俺のベルンファーストの組合員達の実力を探ろうとしてやがったようだが、AやSクラスでお前みたいなガキに、わざわざ手の内バラすアホはうちにはいねえぜ。
いや、いたわ。
あの脳筋連中、特にトーマスとグスタフのうるせえ親父共が見てたら、アイアンとやらせろってうるせえこと言い出して収拾つかなくなるところだった。
ここにいるのファーティーマ以外は、戦闘専門の組合員じゃねえのが幸いだったな。
あ、アイアンがこっち見て寄ってきやがる。
「おい領主様よ、俺の組合登録終わったのかよ? さっさと盗賊討伐の報酬出せや」
……このガキ!
ハロルドにやられちまえばよかったのに。
「それともなんだ? S級冒険者さんが今度は俺と遊んでくれるのか?」
うっ!
「ショーン様、新人が調子乗らないうちにここはビシッと!」
「面白そうね、ショーン様も遊んであげたら?」
「ギルド長の、ちょっといいとこ見てみたい!」
「それギルド長、ギルド長、ギルド長〜〜〜」
こいつらッッ!
俺は戦闘専門の組合員じゃねえっての!!
しかも場末のホストクラブみてえなコールしやがって、ふざけんじゃねえよ!
俺はどっちかっていうと頭脳面の運営だとか、偵察専門だし、ハロルドを遊んじまうような化物に勝てるわけねえだろ!!
しょうがねえ、適当なこと言って受付にいるアリスに頼んでアイアンに金渡しちまおうか。
「あー、見事な戦いだった。それと冒険者アイアンには、ギルド長の俺から盗賊討伐の褒美を……」
「能書きはいいから、早く金くれね?」
クソガキがッッッ!!
「大変だあああああああ! ギルド長一大事いいいいいいいい!!」
え!?
ロングソード担いだC級の、名前もよくわかんねえ赤毛の新人が来やがったけど。
えっと何?
すげえ嫌な予感しかしねえんだけど。
語り部のショーン君はこの日を境に今までうまく行ってた異世界ライフが一変し、激動の渦へと巻き込まれていきます。




