第3話 冒険者組合
こうして馬車に乗って俺はアイアンと冒険者組合に向かう。
道路事情はだいぶ改善したし、このキャラバン馬車にもサスペンションとかも積んでるんだけど、やっぱ結構揺れるんだよなあ。
前世の学校の遠足でも社会科見学でも、喘息持ちだしバス酔いしやすかったし、この中世アイランドの馬車移動に未だに慣れねえ。
それにこのアイアン、俺の隣で腕組んだまま座ってじっと前を見据えてて、何考えてるかわからねえし。
おしゃべりなタイプじゃねえ感じだな。
それに度胸もやべえ。
領主だの貴族だのって肩書出すと、普通の一般人だったら緊張の一つでもすんのに、まったくビビってねえ。
ていうかなんか気まずいし、なんでもいいから話しかけて来てくれよ。
空気が重いよ空気がよ。
女の子なら会話も弾むが、こんなガキ相手に話す話題なんざねえし困ったなあ。
それに肌の色、この辺のもんじゃねえ。
外人?
ま、まあ俺の港街じゃ珍しくもなんともねえ。
冒険者組合には俺みたいなヒューマン以外にも、エルフもいるし、ドワーフもいるし、ホビットもいるし、犬耳女や猫耳女や兎耳も、ああ……ぜひ俺の将来のハーレムにって……そんなことを考えてる時じゃねえ。
俺はこいつを冒険者にスカウトするんだ。
「ここから馬車で30分行けば、冒険者組合だ。謝礼金を出す代わりに、君の力を俺の冒険者組合に加入してくれないか?」
「あ?」
うげっ、こっちに振り返ってめっちゃガン飛ばしてきた。
こいつやっぱ只者じゃねえ。
いや、こんな一線級のやつをこのまま帰すのはもったいねえし、なんとか俺の組合に入ってもらおう。
「君の力が必要なんだ。それに冒険者になれば、名声も金も手に入る。冒険者身分を手に入れれば、依頼があればどんなところにだって行けるしさ。世界各地に組合あるから」
「ふーん、あっそう」
反応薄ッ!
いや、こいつは金目当てで盗賊を倒したんだから、もっと金の話をして……。
「どこにでも行けるんならよお、もしかしたらミッドランドにあるロンデンに行けるわけ?」
「え?」
ロンデンって確か……魔王アトムの封印の地。
聖王国でも禁足地って言われてて、そこに行けるのは王家の許可とったG級冒険者くれえしか入れねえけど……。
何が目的だこいつ?
とりあえず聞き出してみるため、話を振るか。
「えっと可能だ。ただし、トップのG級冒険者になれればの話だが」
「へーG級か。その冒険者ってのには、ランクみてえなのがあるんだな。面白えじゃん」
え?
冒険者組合って、世界中にあるのに知らねえのこいつ?
まあいいや、一から仕組みを説明するのも、冒険者組合長の役目ってやつだ。
「えーと、まず俺含めた冒険者ってのには上からG、S、A、B、Cまであるんだ。冒険者は依頼をこなすことでランクアップしてゆくわけで……」
「で、お前ランク的にどのあたりなの?」
こいつ!
俺、一応領主で貴族なんだけど?
なんでこんなガキに、お前呼ばわりされなきゃなんねえんだ!!
い、いやキレるな俺。
ガキなんか、みんなこんなもんだろ。
「俺か? よくぞ聞いてくれたぜ。俺はS級……」
「チッ、んだよGじゃねえのか? 使えねえな」
……このガキ! ぶっ飛ばしてや……。
「あ? んだよ今の目。やんのかコラ?」
「うっ!」
アイアンの右手が俺に伸びて来て、首を一気に締め上げて来た。
両手でアイアンの手首を掴んで跳ね除けようと力を込めても、こいつの方が力が強くて全然びくともしねえし……息が。
「お前よお、領主だからって調子乗るな。お前は俺が聞くことに答えればいいんだ。俺はどうしてもそこに行かなきゃなんねえんだ。俺の命を賭けても」
「ぐっ……うぐうううううう」
やべ……力がつええ……死ぬ、こいつ……やべえ。
意識が遠のきそうになった時、パッとアイアンが手を離す。
「ウゲェ、げっほ、げっほ! げほ、ゲホ!」
咳き込みながら涙目になってアイアンを見据えると、アイアンの手の甲をポコポコ叩いてる小人?
大きさ14センチくれえで、青いドレス着た透き通った蝶のような羽が背中に生えてて、金髪のポニーテールで青い目した可愛らしい美少女フィギュア? 妖精?
「チッ、わかったよティターニャ。悪かったよ」
……いや、まず謝るなら俺じゃね?
こいつやっぱやべえし、おかしい。
あ、妖精が瞬間移動みたくいなくなった。
やっぱ冒険者にするのやめて、謝礼金払った後で帰ってもらおう……なんかこいつ怖いし。
「いいぜ、入ってやるよ。その冒険者組合に」
「ゲホ、ゲホ、へ?」
「で、俺は何級からスタートなんだよ?」
いや……いやいや、俺はもう、ヤバめ全開なお前なんか冒険者にしたくねえんだけど……。
「ゲホ、ゲホ、さ、最初はC級のカッパーから」
「あ? 誰がCでカッパだコラ? 殺すぞ!」
「うっ!」
……怖えよ、こいつ。
なんなんだよ、見た目ガキだけど、まるでこいつヤクザみてえでおっかねえ……。
「い、いや貴族の俺だって最初はCからのスタートだから。ま、まあ盗賊退治の特例でBスタートなら」
「あ?」
だから……いちいち、圧かけてくるんじゃねえよ。
無理なんだよ制度的に最初からAは。
だが、頭ごなしに言うとマジでこいつに殺される。
ここはやんわりと。
「いやA以上は組合のクエストこなさなきゃだし、S級以上は国家からの承認とかねえとダメなんだって! これはこの制度作った伝説の勇者様が決めたんだし、しょうがねえべよ」
「え? ああそうなのか。じゃあB級からスタートするしかねえか」
なんかあっさり引き下がってくれた。
なんで? まあいいか。
「それで、組合への登録とやらが済んだら、俺は晴れてB級冒険者になるんだな? で、金も手に入ると。じゃあ登録したら、早速そのクエストとやらに出かけるとするか」
「そういうことだ。そろそろ着く頃だな、頼むぜアイアン」
「あ? 何で俺を呼び捨てしてんだコラ。お前やっぱ殺すか?」
……怖ええ、やっぱ帰ってくれねえかな。
「あ、よろしく頼みますアイアン君……」
「あ? 君?」
「…… すぅぅぅ、よろしくお願いしますアイアンさん」
「言えたじゃねえか。そっちこそ頼むぜショーン。お前が俺のリスペクトに叶う野郎だってわかったら、名前で呼んでくれていい」
完全に俺、こいつにマウント取られちまった。
俺、このベルンファーストの領主伯爵で冒険者組合長なんだけど……なんかすでにこいつに勝てる気しねえ。
そして馬車が冒険者組合の前というか、俺の居城ベルンファースト城の前に止まる。
アイアンは馬車のドアを開けて、城の門前に颯爽と飛び降りた。
「ほう? ここが組合か。いいとこじゃねえかショーン」
あたりめえだろ、ここ元々俺んちなんだから!
前世の俺が生まれた河原町団地よりも敷地広いし、ざっと東京ドーム3個分以上!
伯爵家が代々受け継いだパパの城だよアホが!
お前みたいな下々のガキなんざそもそも近寄れねえ、周辺貴族だってビビっちまう、大豪邸なんだからな!!
「おい、褒めてやってんだから何か言えよ」
うっ。
「き、気に入ってくれて嬉しいよ。で、でも俺にも一応体面もあるし、みんなの前では気を使ってくれると嬉しいかなって」
「そうだな、それくらいはわかってんよ」
従者がアイアンに怯えながら門を開けると、我ながらよく手入れされた芝生や季節の花とか咲く、自慢の庭園が広がる。
すると胸に赤いC級バッジつけた冒険者の一団4人とすれ違うが、どっかのクエストに行くんだろう。
駆け出しっぽい感じだが、リーダーは女の子か?
金髪をショートカットにして、皮製だけど、ちゃんと急所守るプロテクター的な防具もつけてるし。
年の感じじゃ、アイアンと変わらなそうだが顔立ちからして、多分デンランド人?
顔も可愛らしいが、なんだか抜け目なさそうな顔してやがるし、経験積めばすぐにBまで上がりそうだ。
あ、副リーダーっぽい僧侶の女の子も可愛い。
だめだ……聖女教会のシスターに手を出したら、あとが怖いからやめよう。
ヤるんなら教会と、修行させてる親に話をちゃんとつけてからだな、うん。
もう数年したら二人ともかなりの美人になりそうだし、今のうちに目をつけとこ。
「よう、早く進めよ領主様」
うぜえ、ここ組合だけど俺んちな。
なんで俺んちなのに、会ったばかりのガキにでかいツラされなきゃなんねえんだ。
俺は思いながら、先頭を歩いて場内の受付ロビーに通じる門を従者に開かせる。
中には壁に貼られた羊皮紙のクエスト見てるA級冒険者達や、クソの役にもたたねえC級に降格したアホ共が集まってやがる。
「ここがロビーで、あそこが受付だ。一緒に行こうか」
俺は受付嬢にした自慢の可愛い妹、歳が9個離れたアリスの座るデスクに赴く。
いうなら伯爵家令嬢ってやつで、俺もイケメンだしこいつもかなり可愛い。
こいつ目当てに、周辺の貧乏貴族連中や若い冒険者連中からラブレター山盛り届くが、俺の可愛い妹口説こうなんざ100万年早えってもんで、暖炉の薪代わりにしてやってる。
だがいつかはこいつも良家に嫁ぐのが慣わしだし、将来花嫁になる修行も兼ねて受付嬢にしちまおうって感じで、組合の事務だとか簿記を侍従達とやらせてる。
「おかえりなさいませ、お兄様」
「ただいまアリス。彼、アイアンの登録を頼むよ。ハロルド同様、こいつもB級スタートだ」
今の俺のB級スタートって言葉に、ロビーがざわめき立ち、C級共が一斉にアイアンをガン見する。
「eye、何見てんだあいつら? ムカつく顔しやがって」
ちょ、揉め事起こすんじゃねえよ組合内で。
俺は、一斉にアイアンをガン見してくるC級共に手でシッシっと振って、こっち見んな的にジェスチャーする。
「あと、こいつ俺が手配してクエストに出しといたギャリング盗賊団をぶっ潰したから、報酬も用意しといてくれ」
「かしこまりましたお兄様。それでは契約書面と登録書類の説明を。それが終わりましたらサインもよろしくお願いします」
「おう」
こうして手続きが順調に進む。
あとは侍従達に命じて金庫にある報奨金をこいつに支払えば……ん?
ロビー入り口に、ハロルドがいるが。
しかもバンツ一丁で。
えっと、なんでこいつパン一なの?
裸でクエスト行って来たの? なんで?
天才ハロルド、不思議の子すぎるんだが。
「ハッハー! おい俺らのハロルドがお帰りだ」
「さすが仕事熱心なB級スタートのエリート様!」
「恵まれない俺らにクエストの報酬恵んでくれや」
「こいつ俺らの言う通り、早朝クエストをパンツ一丁でこなしたのかよ、ウケるぜ」
チッ、そういうことか。
こいつらか、ハロルドをパン一でクエスト行かせたの。
しかもC級のロクでなし共にたかられてるぜ。
「うんいいよー、今日は農場主さんの依頼で、みんなに役立つ薬草採取をブラック山でしてきたんだ! みんなにもあげるよ薬草」
こいつも素直に馬鹿の相手するんじゃねえよ。
弟子のお前の世話を、あのバーベンフルトさんに頼まれてんだからよお。
こいつは今年15になるハロルド、苗字は知らねえけど。
特例でB級スタートにしたスーパールーキーだ。
14にしては背が高くて、身長もまたデカくなってて180近くくれえか?
細身に見えて、こいつメチャクチャ筋トレとかしてるから、お人好しの見かけによらずやべえ実力がある。
なぜならこいつは、あのG級冒険者のバーベンフルトさんの弟子で、槍持たせたら一流の冒険者でも勝てるかどうかの天才だ。
だがこいつ、槍の腕前以外は何をやらしても全然ダメだし、人がいいせいかこんなアホ共にたかられちまってるし。
なんか育ちがいいというか、発達障害的な気でもあるのか、ここまで行くと将来が心配になってくるなあ。
「薬草なんざいらねえよ。この前のクエストで得た報酬、ちょっと恵んでくれや。俺達金に困ってて……」
「おい、やめとけギルド長がいる。これはこれはショーン様、調子どうですか?」
お前らが調子良すぎだアホ共が!
全部お前らのやってること見させてもらった。
今日こそ、穀潰しのこいつら追い出して……。
「あ、新しい冒険者志望連れて来たんだショーン様。ねえ君、なんて言うの? 俺はハロルド! B級冒険者のハロルドって言うんだ」
ウゲッ、やべえってハロルドも。
目の前のこいつ、何しでかすかわからねえ、鬼やべえやつだから声かけんなつうの。
「誰こいつ?」
「あ、ああ。君と同じくB級スタートのハロルドだ。俺の裁量で、そろそろA級入りさせようと思ってる」
「ふーん、そうか」
するとハロルドがアイアンに右手を出す。
「君もB級スタートなんだね。名前は?」
おいいいいいいいいい、やめろハロルド!
こいつにタメ口聞いたらお前でも、多分腕とかへし折られちまいそうだからやめてえええええええ。
するとアイアンは、ハロルドの右手をがっしり握って握手した。
「俺の名はアイアンだ。俺、ちょっと力入れて握ってんのに、お前の握力まあまあすげえじゃん」
「うん、鍛えてんだ! お師匠様と!」
するとアイアンは握手した手を離すと、体当たりみてえに肩ぶつける。
「そうみてえだな。それに、なかなかいいガタイしてんじゃん」
あれ? えっとなんかいい感じだ。
アイアンもまんざらじゃあ無さそうな顔だし。
「お前、いいやつっぽいから、今度から俺とつるもうぜハロルド。あと、そこのクズ野郎共な。さっきから俺にガン飛ばしやがって。目障りだからどっか去れや」
「あぁ!?」
ちょおおおおおお!
おいおいおいおい、来てそうそう、仮にも先輩冒険者に喧嘩売るんじゃねえよ。
こいつら追い出すの、俺の役目だからっての!
「なんだお前ら? 格下の雑魚のくせしやがってムカつく顔してやがるな。気に食わねえなら表出ろや」
「なんだと! 俺たちのほうが年上で先輩なのに、なめやがって! おい、みんなでこいつやっちまおうぜ!!」
するとアホが次々ロビーから湧いて、アイアンを取り囲んだ。
「おい、やめろお前ら!! 組合長命令だ!!」
「うるせえ! こんな新人のガキになめられたら、冒険者なんざやってけねえんだよ!」
馬鹿が、一応止めたからな……。
こいつら、賞金首の盗賊ぶっ潰したアイアンのヤバさわかってねえみてえだ。
だいたい一目見てわかんだろ。
ワン●で言うと、覇王色まとってそうな威圧感とかあぶねえ目付きやオーラで。
まあ言っても気付かなそうだしもういいや。
こうして中庭に出たアイアンと、アホで不良のC級冒険者10人が集まる。
「ねえショーン様、先輩達とアイアンの喧嘩、止めなくていいの?」
心配そうな顔したハロルドが俺を見る。
だが俺にとっちゃ、どっちがやられてもいいし、C級のアホ共を追い出す口実ができるし、悪い話じゃねえ。
「ん? ああ、一応やめろって言ったのに組合長命令に従わねえから、どっちみち組合から破門にする。それよりアイアンの強さを直で見れるチャンスだな」
「あー、多分俺の予想だけど超強いよ。毎日槍の訓練してる俺より力強いと思う」
だよなあ、アイアンのヤバさなんて見ただけでわかるよなあハロルド。
そんなこともわかんねえから、こいつらギルド転々して万年三流冒険者やってるし、新人イジメなんざ無駄なことしてやがるんだ。
前世のホスト時代でもそうだが、先輩面したアホで無能な奴らに限って、ヘルプの新人いびりしやがるからな。
「おう、お前ら弱そうだから、道具使ってきていいぞ。俺は素手で相手してやるから」
「あ!?」
いや、さすがに武器使った喧嘩はまずい。
こいつらC級って言っても、元はB級でモンスター退治の経験もあるのもいるし、なめてかかるのはさすがに……ん?
すると中庭に、帽子かぶって口元にスカーフして弦楽器持って芝生に座ってる、顔がわかんねえし見たことねえ吟遊詩人がいる。
どこから来やがった?
それにアイアンがポケットからなんか出して……えっとこれはマイク?
なんでこの世界でマイク?
「おう、ビートくれや」
ちょ!? ビートっておま!
「オーケー兄弟」
いや、オーケーっておいまさか……。
するとアイアンが、肩でリズム取ってるし、これってアレだよな、俺も前世で知ってるアレだよな!?
すると謎の吟遊詩人が、前世で聞いたことあるレコード逆回しのバックスピンのスクラッチ音を奏でて……え!? マジでか!?
「B級冒険者になったらoh 先輩面したwackが、ワンワン! 負け犬の遠吠え Man♪ 後輩の俺にワンワンワンワン威嚇♪ まじ、ダセエぜ! 吠えるなら相手を選びな?」
いきなりラップ始まったし意味わかんねえ。
なんなのこいつ、なんでヒップホップ?
なんでフリースタイル!?
「なんだと!?」
あ、C級のアホ共がディスられてキレ始めた。
ていうか何これ?
英語混じってやがる。
まさかこいつも、俺と同様……。
するとアイアンが、左手で手招きしながらC級連中を挑発する。
「来いよlooseなパイセン共♪ Hurry up! おめえらも男だろ! 早く、かかって来いこの俺に!! パイセン、ツラするなら来いよ♪ 力尽くで俺を止めたらどうだい?」
「この野郎!」
うわぁ、こいつらディスられてロングソードやダガー持ち出して刃傷沙汰起こす気だ。
馬鹿だと思ってたがマジで馬鹿だなこいつら。
ていうかなんだこの吟遊詩人?
DJ?
なんでこの世界にDJ!?
すると最初に飛びかかったC級の名前も知らねえアホが、ロングソードをアイアンに振り下ろそうとした。
だがアイアンがマイク持ちながら、当たるスレスレであっさり天心ばりのバックスステップでかわすが、動きが鬼はええ。
しかも動体視力がハンパじゃねえぞ。
「殺気、まるで感じられねえ♪ ほれ、噛みついてみろや♪ 牙おっ立ててYo かかってくる奴は♪ 一人だけか!? losers!! Hurry up!!」
「この!」
今度は剣を突き立てながらアホ一人が体当たりするが、アイアンに足かけられて無様に転倒した。
「野郎、囲んでぶっ殺しちまえ!!」
「負け、犬共に言霊♪ 行くぜ! 痺れちまえ、俺の魔法に! お前らにくれてやるぜ、俺の“稲光“」
うん? 最後日本語!?
アイアンが左手で指鉄砲の形を作ったが、何をする気だこいつ。
「BANG」
ロングソードとダガー持った奴らが、一斉に飛び掛かるが、一瞬ピカッと光ったあとすげえ破裂音がして、C級のアホ共が吹っ飛ばされて気を失う。
「な!? 今、何をした!?」
「あ、ショーン様。アイアンの人差し指から青白い光が一瞬ピカってしたよ。まるで雷みたいだ」
雷? こいつ一体……。
「huh? さっき、までの威勢はどうしたよ? hey、どうだ俺の魔法♪ これでも最小限度だlosers!! 悔しいなら来いよ! かかって来い!」
魔法? こいつ魔法使い?
確か一部のドルイドエルフだとか、エラーム出身の魔術師なんかが魔法使えるけど。
こいつもしかしてエラーム出身で、俺と同様の転生者か?
ていうかディスりすぎだし、煽りすぎだし、このままじゃ行くところまで行っちまうっての!
「すげえ、アイアンすげえ。負けられない俺も」
ん? どしたのハロルド?
あ、ハロルドが俺の隣からダッシュでどっか行くけど、えっと……何?
「な、なめんじゃねえぞ。俺達だって伊達で冒険者やってねえんだ。お前こそかかってこいよ! 俺らの冒険者の意地見せてやる!! そうだろお前ら!!」
アイアンの魔法にぶっ飛ばされたC級共が立ち上がるが、無理だわ。
あいつ多分きっと地球出身の、妖精さんが呼んだ鬼つええなんかだ。
俺なんかと違って、マジで戦うために選ばれた魔法戦士かなんかだよ多分。
「へ、そうこなくちゃ面白くねえ♪ 今度は、ちょっと強めの刺激だ!! いくぜてめえら腰抜かすな、ぶっ飛ばすぜ”電光散弾“」
「ぐああああああ!」
アイアンが指鉄砲から、俺でも見えるくらいの青白いギザギザの閃光と破裂音を放って、C級共全員が吹っ飛んで戦闘不能にされちまった。
すると、今までこのいざこざに興味なさそうにしていた、俺もよく知るA級やS級の連中も集まってくる。
「ショーン様、あいつ見ない顔だけど新人?」
「揉め事途中しか見てないけどあいつ、ルーキーだろ?」
「ハンパじゃないわね、どこから見つけたのあの子?」
俺のギルドの連中も、やっぱアイアンの戦いを見てやべえって思ってるようだ。
「Yoこいよ、パイセン♪ 冒険者ってのはそんなもんか? 飼われるのに慣れちまったのか? Ahan、お前ら犬か狼か!?」
こいつ!
俺のギルド全体に喧嘩売ってやがる。
今この場で戦ってるC級だけじゃなく、ここにいる冒険者達にも、挑発してやがるしなんて野郎だ。
いやまさか……。
ここにいる連中ぶっ倒して、俺に掛け合って最短でA級狙いカマすつもりか?
いやありうる。
こいつ凶暴性ハンパじゃねえし。
「へへ、お待たせ!」
ん、ハロルドが戻って来たけど……え?
なんで槍とか持ってんのこいつ?
えーと、何考えてるのハロルド君?
異世界無双してる元ホストにして元スカウトのショーン君が意図しないところで運命力が及び始めてます。
ハロルドはこれから伸びていく伸び代しかない子で、物語のキーマンになっていくでしょう。
次回はそんなハロルドと主人公の危険な遊びです