33 追っ手の暗殺者がベティに迫るようです
トビアス目線です。
*** side ベティシア捕縛部隊 *****
ベティシア捕縛部隊の主力が、空に浮く山【天樹の空島】の見張りを続ける諜報部隊〔千の影〕と合流した。
「あれがベティシア隠れ住んでいるボダーラ山か? 本当に宙に浮いているんだな。 非常識きわまりない。」
ぼやいているのは、親衛隊副隊長トビアスである。
「あの山に向かう手段はあるのか?」
「・・・ありません。我々には、どうしようもありません・・・。」
「そうか・・・。これは、想像以上に手強いな。」
「ベティシアが、山から下りてくる兆候はあるか?」
「ベティシア様の動向は不明ですが、ミールニ領の竜騎士小隊が山頂に向かい、その後、また帰って行ったようです。」
「領主の遣いが、ベティシアに会いに行った可能性があるか・・・。厄介だな。 ここの領主は親ベティシア派だ。我らが、この地で活動することを妨害される恐れがある。 今は動けないか・・・。このまま見張りを続ける。動きがあったらすぐに知らせろ。」
「はっ。」
「コルネリア、お前の魔法で、ベティシアの様子を探れないか?」
「無理ね。色々と試したけれど、世界樹の結界に阻まれて、山まで魔力が届かないのよ・・・。」
「お前ほどの魔法使いでもダメか?」
「残念ながら・・・。」
数日後、龍騎士数騎に先導される形で、天樹の空島が動き出した。
「なっ! あのデカ物が動くのか?」
「ミールニ領の領主の街に向かって動いています。」
「俺たちも追跡するぞ!」
天樹の空島は、領主が住むミールニ領の中心都市ネルトリンゲの外輪部、広大な山林の上空で停止した。
「山から龍が飛び立ちました!」
「何だと! 本当に龍か? 見間違いではないのか?」
「間違いありません。 あの大きさは、間違いなく龍です。 龍は、街に向かって飛び立ったようです。」
これは、チャンス到来だ・・・!
ネルトリンゲの街が龍の襲撃で混乱している隙を狙って、竜騎士の飛竜を奪い、飛竜で空島に向かうことができるのではないか?
しかし、我らの願いとは裏腹に、街で龍による混乱は起きなかった。
しかも、悪いことに、あろうことか龍の背に乗って領主の居城を訪れたベティシアが、友好的に迎えられたと言うではないか・・・・・・。 最悪だ!まさか、ベティシアのヤツ、龍と領主まで味方につけるとは・・・・・・。
俺たちは、どうしたらいい?
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カズヤたち一行は、ネルトリンゲの街で買い出しを行った。
先の会に、多くの商店主が参加していたことと、領主からの通達によって、カズヤたちに対して街は歓迎ムード一色だった。
カズヤたちは、この街の名産品や様々な食材を手に入れることができた。
カズヤの服を借りていたクエレブルの服も、手に入れた。
妖精を含めた女性3人も、一番のお目当ては服や靴だ。……妖精も服を買うんだな……。
そんな彼らを監視するものの姿があった。そう、海皇国の諜報部隊〔千の影〕の偵察である。
ベティシア捕縛部隊は、街に姿を現したベティシアに色めきだった。
「これは、千載一遇のチャンスである! 今こそ、反逆者ベティシアを捉える好機!」
と、考えたのは至極当然のことである。
追っ手の追跡に最初に気付いたのは、青年に姿を変えているクエレブルだ。
「カズヤ様、何者かに後をつけられています。」
「海皇国からの追手だね。 こんなところまで、ご苦労なことだよ…。」
「排除いたしますか?」
「待て、こんな繁華街で戦闘になるのはまずい。人気のない場所に行こう。」
「わかりました。」
人気のない場所まで行くと、案の定周囲を20人ほどに囲まれた。
「俺は、この隊を率いている第1皇子スラニム様の親衛隊副隊長トビアスだ。用があるのは、そこにいる国家反逆罪の罪人ベティシアのみ、おとなしく引き渡してもらいたい。ベティシアさえ引き渡してくれれば、その他の者には一切危害を加えないことを誓おう。 何なら、協力金として白金貨を渡しても良いぞ。」
「断る!ベティシアは渡さない!」
「なぜだ!よそ者のお前には関係のない話だろう! ベティシアを渡すだけで、大金が手に入るのだ! 悪い話では無かろう・・・。 偉大なる海の皇国に逆らって、ただで済むと思っているのか!」
「関係あるね。ベティシアは俺の大切な人だ!決して渡さない!」
「そうか、残念だ…。捕らえるのが無理なら殺しても構わない、やれ!」
千の影は、精鋭の諜報部隊であると共に、暗殺部隊でもある。
20人もの暗殺者が、ベティシアに迫った。
「念動力!!」
俺の念動力が、即座に暗殺者全員の動きを止めた。そして、そのまま空へと持ち上げる。反撃は許さない。
当然、口を含めて全身を拘束しているので、うめき声すら聞こえない。
「お前ら、海皇国から来たんだから人魚族だよな。じゃあ、海は大丈夫だな? 今からお前らがやるのは、1500km空の旅だ! では、よい旅を!」
俺は、念動力で、捕らえた暗殺者たちを、海に向かって飛ばした。
リーベの港からここまで1000km、おまけに500kmを足して放り出したのだ。
すさまじいスピードで飛んでいく暗殺者たち。達者でな……。もちろん、トビアスもコルネリアも一緒である。
カズヤに飛ばされたトビアスたちは、5時間ほど空を飛んでから落水した。
「「「「「「 ジャッバ―――ン! 」」」」」
「何たる屈辱……手も足も出ないとは……。」
「でも、よかったじゃありませんかトビアス様。生きて戻れました。」
「コルネリア……お前というやつは……。」
「だって、死んじゃったら元も子もないじゃないですか。生きていてこそ…ですよ。あんな化け物たちを相手にして、生きて帰れただけで儲けものです。私たちにどうにかできる相手ではなかったのです。 成果もなく逃げ帰る私たちには罰が待っているかもしれませんが、私たちが今するべきなのは、正確な報告です。 急いで皇宮に帰りましょう。」
「ぐっ……わかった……。」
トビアスたちは人魚族である。
カズヤに大海原に落とされても、全く問題はなかった。
人魚形態に変化して、泳いで故郷に帰るだけである。
その時、影の一人が、海の彼方に異変を見つけた。
「トビアス様……あれは何でしょう?」
遠くの海がざわめいている。なんだ?あれは?
「あれは、魔獣の大群か? いや、違う! 魔大陸の軍勢だ!!」
そう、それは、数万にも及ぶ魔大陸の軍勢だった。
海に放り出されたおかげで、とんでもないものを見つけてしまう一行
この発見で、捕縛失敗がチャラになるかも・・・




