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32 天龍クエレブルの背に乗って、領主に会いに行くようです

天龍クエレブルの背に乗って、ミールニ領の領主に会いに行くようです。

街は大騒ぎにならないのでしょうか?


 明くる日、連絡の竜騎士によって、カズヤの元に招待状が届けられた。

皇国の最精鋭である竜騎士を、伝書鳩代わりに使っているのだから贅沢である。しかし、普通の使節ではたどり着けないので、仕方が無いのである。


「領主が俺たちに明日の昼前にお城に来て欲しいってさ。お迎えの飛龍を寄越すって書いてあるけれど、いらないよね。 念動力(サイコキネシス)で飛んでいってもいいし、クエレブルに乗せていってもらってもいいし・・・。」

「そうだな。我が皆を乗せていこう。 我も、主のために働けるのは喜びである。」

 連絡の竜騎士に、自分たちで城に行けるので迎えは必要ないと伝えた。


 数日後、カズヤたち一行は、ミールニ領領主アウレリアの待つ城へと向かった。

 移動方法は、天龍クエレブルの背に乗ってである。

 クエレブルが街の上を飛んだら大騒ぎになるのは目に見えているので、俺の念動力(サイコキネシス)でこっそり飛んでいこうと言ったのだが、どうしても俺たちを背に乗せて飛ぶというクエレブルに押し切られてしまった。先の会談で、お前は本当に龍なのか?と疑われたことも少々根に持っているようだ。

 

 案の定、大騒ぎが起こった城の中庭に、俺たちを背に乗せたクエレブル20mもの巨体が舞い降りる。

 騎士団の騎士たちには「俺たちは龍に乗って城に行く」と事前に伝えたのだが、皆、半信半疑だったらしい。 また、せいぜい小型の下級竜に乗って来ると思っていたようだ。 実際に見るのと聞くのとでは大違いである。巨大な龍への本能的な恐怖から腰を抜かし座り込む者や、剣を抜く者が多数いた。

「落ち着け馬鹿者! それでも栄えあるミールニ騎士か!!」

 騎士団長ライムントの一喝で、城は平静を取り戻した。


「満足に出迎えることもできず、面目ございません。」

「いえいえ、こちらこそお騒がせして申し訳ありません。 こうなるだろうとは半ば予想していましたので・・・。」

「皆様、ようこそミールニ城へいらっしゃいました。歓迎いたします。」


 俺たちは、豪華な会食場へと案内された。

 会場は所謂ビュッフェ形式だ。色とりどりの果物や様々な料理、デザートが所狭しと並んでいる。

 会場には、貴族や役人、商人など、数多くの人々が集まっている。女性の数が少ないのは、得体の知れない俺たちを警戒してのことだろう。


 俺たちが立っているのはひな壇である。

 そこで、領主が高らかに宣言した。

「我々ミールニの人々は、常にボダーラ山の魔獣の脅威にさらされてきた。しかし、もう、我々は<死の山>の恐怖におびえる必要は無くなった!

 なぜなら、<死の山>は世界樹の山へと姿を変え、【天樹の空島】として生まれ変わったからである。

 世界樹の庇護下に入った山の魔獣たちは、ここにいる、海賊討伐の英雄カズヤ・サクラザカ殿を主と定め、すべてが従属した。

ここにいるのが、ボダーラ山の守護神である伝説の龍クエレブルの背に乗って現れた、カズヤ・サクラザカ殿である!」


「おお~」というどよめきと共に、拍手が打ち鳴らされた。


「そして、こちらが、世界樹の妖精テンジュ殿である!」

 客人の目が、カズヤからテンジュへと切り替わる。テンジュは、ふわりと少し浮き上がり話し始めた。

「私は世界樹の妖精テンジュ。天樹の空島の魂よ。

〔天樹〕とは天の世界樹。天の世界樹の本来の居場所は大空なの。

だから、空に浮かんでいるこの状態が本来の姿であり、正しい姿なの。恐れる必要はないわ。 天樹の空島は、あなたたちミールニ領の人々と友好的な関係を結びたいと思っているから。」

 ここでも、大きな拍手がわき起こった。


「次に、この方を紹介する。この方はベティシア・ソプラ・マーリン海皇国第2皇女殿下である。 殿下は、国家反逆罪の嫌疑を掛けられ、我が国にも捕縛協力依頼が届いている。・・・・・・しかし、私は、殿下をお守りしようと考えている!

 我が、ミールニ領は、ベティシア殿下をお守りする! これは、決定事項である! このことは、すでにハイデルベルグ領領主ディートリヒ・ドラッチェとも協力を申し合わせている。 我が領民にも皇女保護の協力を依頼する!」

 大きな拍手がわき起こった。参加者の皆さんも協力してくれるという意思表示だ。これはありがたい。強力な協力者を得ることができた。


「次は、世界樹の巫女、エルフ族のエルミア・カラリス・レーベンターク殿である。

 世界樹の巫女は、世界樹を守り世界樹と我々をつなぐ大切な役目、敬意を払って接するように!」

 エルミアの説明は簡単だったが、ここでも拍手がわき起こった。

 ただでさえ、エルフ族は滅多に姿を現さないのに、そのエルフ族の中でもエルミアは高位の存在の巫女である。敬意を持って迎えられた。


「最後に紹介するのは、天龍のクエレブル〕殿だ。 ボダーラ山の伝説の守護龍である。今は、人族の青年の姿をしているが、先ほど、我が城に舞い降りた龍こそが、彼の本当の姿である。

 50年前、我ら皇国の騎士団は、クエレブル殿に挑み敗北している。 しかし、それは、我らが神の山に恐れもなく踏み込んだ報いを受けたのである。 従って、クエレブル殿を恨むのはお門違いである。

 今、我らミールニ領は伝説の龍と友好的な関係を結ぶことができた。 今まで、これを為し得たものがいただろうか? 龍と共に並び立つことができる日が来ることを想像できたものがいただろうか? 今日、この瞬間に立ち会えたことを私は誇りに思う! それは、今、ここにいる皆も、この栄えあるミールニ領に暮らすもの全員が同じである!」


「「「「「 バンザーイ!天龍クエレブル様、バンザーイ! 」」」」」

「「「「「 バンザーイ!アウレリア様、バンザーイ! 」」」」」

「「「「「 バンザーイ!ミールニ領、バンザーイ! 」」」」」

 会場に熱狂が渦巻いた。


 アウレリアが手を挙げると、熱狂は波が引くように引いていった。

「天龍クエレブル様、一言お願いします。」

「うむ。我は天龍クエレブル、天の世界樹である天樹の守護龍だ。

 今は、世界樹の主(あるじ)であるカズヤ・サクラザカ様を主と定めている。」


 盛大な紹介が終わり、立食パーティー形式の食事会が始まった。

 俺は、皆と食事を取りに行ったが、いつの間にか、客たちに囲まれてしまった。相手に悪意があるなら排除は簡単だが、好意で寄ってくる相手は邪険にもできず、全く飲み食いに集中することができなかった。

 ベティシアはさすが皇族、こういう場に慣れているのだろう。落ち着いて、笑顔で対応している。

 エルミアは、わたわたしている。話しかけてくる相手への対応に四苦八苦しているという感じだ。

 意外に落ち着いているのはテンジュである。何を話しているんだろう?

 クエレブルに話しかけるものは少ない。さすがに恐ろしいのだろう。当然である。また、話しかけても、「ああ」「うむ」ぐらいしか言葉を発さないため、客は挨拶だけして去っていくことが多いようだ。


 俺のところに、領主のアウレリアが騎士団長を伴ってやってきた。

「カズヤ殿、今日は、招待を受けてくれてほんとうによかった。礼を言う。」

「お礼を言うのは俺の方です。 ベティシアを守ると宣言してくださり、感謝します。 でも、いいんですか? 海皇国を敵に回すことになるのでは?」

「海皇国を敵に回すより、君たちを敵に回す方がよっぽど恐ろしいよ。」


 会食後は、城の貴賓室に宿泊した。

 すごく豪華な部屋だった。さすが城。


案外ウエルカムなミールニ領の人々でした。

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