「嘘」
「嘘」がテーマの話です。
学校からの帰り道。
何て寒いんだろう…隣を歩く親友の口からは、白い息が漏れる。
「俺、隣のクラスに居る田仲さん、好きなんだよね…。」
まるで子供の様に、嬉しそうに俺へ教えてくれる一沙。
鼻の頭が赤くて…、まるで酔っぱらいみたいだなぁ。なんて思う。
「…そっか、…俺も好き。」
そう返すと、笑顔で細まってた一沙の瞳が、段々大きく開く。
「えっ?!…世人も…?そ、そっか、俺らって…仲良いな。ははっ…!世人相手じゃ、俺に勝ち目は無いなぁ…。」
困惑の入り交じった笑顔。空笑いで引き下がる一沙。
いつもそうだ。俺が好きだと言うと引き下がる。
その度に訪れる沈黙。
何て可愛い横顔。
簡単に引き下がれる様な想いなら、初めから諦めるといい。
――お前が好きなものは、俺も好き。
一番好きなのは、一沙だけどね…。
俺は、嘘と真実を交ぜて返事をする。
「そんな事ない。告白、すれば良いじゃないか…?」
一沙と一緒に共有してもいい。あの子なら、俺がコントロール出来る。
俺の問いかけには返事をせず、
「…なぁ、何で俺の好きなものは、全部お前に行っちゃうのかな?」
一沙が、ぽつりと呟いた。
俺を責めたりはしないんだね。優しいな…優しくて、そこに付け入りたくなるよ。
「…じゃあ、俺と付き合う?」
一沙の顔を覗き込み、真剣に見つめた。
「えっ?!」
「一沙の好きなもの、俺に集まるって言うなら、一沙は俺と付き合えばいい。きっと好きになる。」
真ん丸い目。
惚けた口。
俺を見ながら固まってる。
困ってるんだろうなぁ…。長年の友達に突然告白されたんだから。
それに、一沙は失恋の痛みを知ってる。だから俺を無下に出来ない事も分かってるよ。
「ふふっ…。嘘じゃないよ?本気だから。」
可愛いくて、無償に触れたくて、少し屈んで一沙の赤い鼻先に唇を落とした。
「っ!!」
慌てて自分の鼻を両手で隠す一沙の顔はみるみる赤くなっていく。
「これからも、宜しくね。」
俺は柔らかく微笑みかけた。
「せ、世人なんか…嫌いだ…。」
消え入りそうな声。
俯きながら、マフラーで鼻と口を隠す一沙は、俺と並んで歩いてくれる。
――嘘つき。




