第0084撃「メタ氏、祭りのテキ屋のバイトを始める!?」の巻
平成4年1992年、8月、高校1年の夏休み。
夏休みが始まって、ほどなくのことでした。
カケル(仮名)の部屋に、甲村(仮名)も集まり、
毎度おなじみの夏休み作戦会議が始まりました。
ところが、その日の甲村は様子が違います。
何やら国家機密でも握ってきたような顔つきで、
もったいぶって口を開きました。
「なあ、みんなでバイトせえへんか?
お金になる、おもろい話を仕入れてきてん」
聞けば、夏祭りの屋台を出すテキ屋が、
手伝いを募集しているというのです。
詳しい話は、
その世界の”元締め”と会ってから。
そういうことらしく、
小生もカケルも、何が何だか分からないまま、
とりあえず会ってみることになりました。
待ち合わせ場所は、
カケルの住む市営住宅の近く。
電気機関車が展示されている、
東泡嶋南公園(仮名)のそばの蕎麦屋でした。
店へ入ると、
「おう、こっちや」
そう言って、
小太りの中年のオッチャンが、
手を振っています。
どことなく、
祭りの熱気を一年中まとっているような人でした。
「好きなもん、なんでも頼んでや」
ありがたいお言葉に甘えて、
小生たちはざる蕎麦を注文しました。
真夏のざる蕎麦ほど、
気持ちいいものはありません。
冷たい麺を夢中で啜っていると、
「よっしゃ!
おまえら、明後日から手伝い入ってくれっか?」
あまりに唐突で、
危うく鼻から蕎麦を噴き出しかけました。
どうやらこれは、
合否を決める面接ではありませんでした。
すでに採用された者に対する、
顔合わせだったようです。
しかも日当は、九千円。
夏休みだけでも、
十日ほど祭りがあるそうで、
やる気さえあれば、
さらに一か月ほど延長も出来ると言います。
学校などしばらく忘れて働けば、
二十万円近い大金になる計算でした。
その瞬間、
小生の脳内では、盛大な皮算用が始まりました。
引っ込み思案なくせに、
人前で笑いを取るのは好きな小生です。
フーテンの寅さんよろしく、
威勢よく客寄せをしている自分の姿まで、
勝手に頭の中で上映されていました。
ところがです。
そこで、たいへんなことを思い出したのです。
小生は二、三時間以上、緊張した状態が続くと、
トゥレット症候群の薬の副作用で、
眼球が勝手に上を向いてしまう、
あの「THE 眼球上転」が起きるのでした。
正直に事情を話し、
辞退したいと伝えました。
するとオッチャンは、
少しだけ寂しそうな顔をして言いました。
「この三人の中で、
一番真面目そうで、
一番アテにしてたんやけどなぁ……」
そう言われると、辞退した小生まで、
惜しいことをした気分になります。
「それやったら、
将来クルマの運転も出来ひんかもしれんなぁ。
そや! せっかくやし、今からうち来ぉへんか。
ええもん見せたるで」
その一言に、
小生たちはすっかり少年探検隊です。
わくわくしながら、あとをついて行きました。
オッチャンの家は、
長屋造りの平屋でした。
畳に腰を下ろし、出された麦茶を飲んでいると、
ふいに。
小生たちの背後から、
銀色に冷たく光るものが、
ぬうっと姿を現しました。
日本刀でした。
しかも、抜き身です。
「本物やで」
オッチャンは、にこにこしていました。
小生も模擬刀なら、
自宅の押し入れに一本持っていました。
しかし、
真剣を目の前で見るのは、
生まれて初めてです。
白鞘に収まった日本刀など、
ヤクザ映画の世界だけのものだと思っていました。
夏休みが始まって、
わずか数日の出来事とは思えないほど、
濃い一日でした。
そして二日後。
甲村はイカ焼き。
カケルはザリガニ釣り。
それぞれ露店を任され、
晴れてテキ屋デビューを飾ったのでした。
一方の小生はというと。
部屋で、買ったばかりの吉川晃司の新しいシングル、
『ジェラシーを微笑みにかえて』を繰り返し聴きながら、
「もし眼球上転さえなければ……」
などと、
少しだけ祭りの喧騒を想像していたのでした。
吉川晃司「ジェラシーを微笑みにかえて」(1992年)
YouTubeで視聴する https://youtu.be/2YrYpmcpBk4?si=ciH9yeCYNU257Uou
続く。果てしなく続く……。
(まだまだ続くよーっ!お楽しみに〜!)
いつもお読みくださり、
無限の無限のありがとうございまする☆
ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。
では、ご氣元よう‼️
( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾
↓過去の自叙伝も、
読んでいただけますと幸いです。




