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第54話 静かな朝

オニキス ダイニング


いつも通りの朝食の匂いが漂っている。


焼かれたベーコン。

目玉焼き。

湯気の立つスープ。


……世界が崩れかけているとは、

思えないほど静かな朝だった。


俺は椅子に座りながら、

ぼんやりとニュース画面を見つめる。


隣ではレイナが眠そうに目を擦っていた。


「……んぅ……まだ眠い……」


「昨日遅かったからな」


「誰のせいよ……」


レイナが軽く睨んでくる。


向かいでは、

アキラたちがニヤニヤしていた。


「朝からいちゃついとるわ〜」


「うるせぇよ」


「はいはい、ごちそうさま」


ミツルが笑いながらコーヒーを飲む。


そんな空気の中、

テレビのニュースキャスターが真剣な声を響かせていた。


〔昨日未明、

星条連合首都リバティアにて、

正体不明の存在が巨大恐竜を討伐……〕


画面には、

白い光翼を持つミカエルの姿。


その映像を見た瞬間、

ダイニングの空気が少しだけ変わった。


〔現地では天使と呼ばれており、

現在も星条連合政府による調査が……〕


画面が切り替わる。


今度は、

ルシファーの姿が映し出された。


〔極東連邦首都セーヴェルグラードでも、

同様に巨大恐竜が討伐され…〕

〔現場では悪魔のような存在が確認されており……〕


ナツが顔をしかめた。


「……普通に報道されてるな」


「そこなんだよな……」


マサキが腕を組む。


「情報規制されないのがおかしい」


サイが静かに呟いた。


「国家レベルなら隠蔽……」

「普通はパニック防止させる……」


ジュンも頷く。


「だよね…」

「天使とか悪魔とか、

どう考えても世界が混乱する内容なのに」


アキラがトーストを頬張りながら話す。


「逆に隠せんかったんやろ」

「世界中で目撃されすぎたとか?」


「それにしても妙だ……」


ミツルがニュース画面を見つめる。


「まるで…最初から存在を広めるつもりみたいだ」


その言葉に、

一瞬空気が止まった。


……確かにそうだ…。


隠すどころか、

世界に知らせているように見える。


俺は無意識に、

画面の中のミカエルを睨んでいた。


すると、

ニュースキャスターが話題を切り替える。


〔続いて日輪政府は本日、

新たな対魔物政策を発表しました〕


画面には、

日輪の記者会見映像。


そこには、

武装した覚醒者たちの姿が映っていた。


〔現在国内で確認されている覚醒者を、

政府公認の“冒険者”として登録〕

〔魔物討伐への報奨金制度を導入し、

国内防衛戦力として運用する方針です〕


「……冒険者、ねぇ」


ナツが苦笑する。


「ゲームみたいだな」


「でも…前よりはマシに見える」


レイナが静かに言った。


「少なくとも、

前みたいに兵器扱いはしてない感じするし……」


「表向きは、な」


ミツルが鼻で笑う。


「覚醒者が反発しないように、言い方変えただけだろ?」

「良くも悪くも、俺たちが引き金だろうがな」


マサキがため息を吐いた。


「とはいえ、

今のところはマシな方向に進んでるようには見えるな」


ニュース映像では、

覚醒者が魔物を倒し、

市民から歓声を受けていた。


だが……。


俺たちは知っている。


あの目を。


あの声を。


「お前らのせいでこうなったんだろ!」


「もっと早く来いよ!」


「何やってたんだよ!」


「お前ら、力持ってんだろ?」


「守るのが当然だろうが」


俺たちも、

向けられていたから…。


ジュンが苦笑する。


「……結局変わんないね」


サイが低く呟いた。


「うまく編集してるようだが」

「住民の目が語ってる」


アキラがテレビを睨みつける。


「こんなもん、長くは保たれへんやろ」


ミツルがカップを置いた。


「でも……」

「もし日輪が覚醒者たちを完全に統率できたら……」


空気が変わる。


誰も言葉を挟まない。


ミツルはそのまま続けた。


「次に討伐対象になるのは…」

「俺たちだろうな」


沈黙。


レイナの表情が強張る。


アキラが椅子へ深く座り直した。


「……十分ありえるな」


マサキも静かに頷く。


「魔物も、天使も悪魔もいる」

「そんな世界で、

国家が管理できない戦力を放置する理由はないからな」


ナツが俺を見る。


「ユウ、お前はどうする?」


全員の視線が集まった。


(毎回、俺の顔色見るのやめてくれねぇかなぁ…)


「……決まってるだろ?」


自然と、

魔力が漏れた。


空気が震える。


「一昨日、日輪の被害があれで済んだのは、

同じミスをして失わないようにしただけだ」

「こっちも防衛は万全にした…」


ゴォォォォ……


オニキス全体が、

低く唸る。


「もし、無謀にも攻めてくるなら…」


俺は立ち上がり、みんなに笑みを向ける。


「俺のストレス解消させてもらうだけだ」


みんなは俺の異常さに息を飲む。


少しの静寂のあとナツが笑った。


「あぁそうだな…」

「カナを傷つけた報い…思い知らせてやる」


俺とナツの顔を見ながらみんなは頭を抱えながらも、

否定する声は上がらなかった。

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