奏2
櫻井奏の話 その2
「こいつら、飛べない鳥の半身を探すために」
はぐれ魔法使い、リートディクハルカヤト(略してリート)に家庭教師をしてもらうこととなって、早いもので3ヶ月が経とうとしていた。
3ヶ月。
たった3ヶ月の間に、俺は凄まじいほどの量の魔法を覚える事ができた。家庭教師リートに言わせると、「魔法の才能があったんちゃうかー?奏と魔法の波長が合っていた、ってぇー事やと思うでー」と、いう事らしい。
俺に魔法の才能があったとは……。
これは喜んでいいのだろうか?
最初にリートと会った時、俺には魔法など無理だ、というか魔法って何だよ?普通に勉強の方を教えてくれよ、と思っていたのに。
気がついたらこんなにも月日が経ち、俺は魔法という摩訶不思議なものを使えるようになっていた。
だがリートに言わせれば、俺を魔法使いと呼ぶにはまだまだらしいのだが。
そして、俺の日常は非日常に変わった。
ま、それなりに楽しんではいるんだけどな。
「奏!」
バサバサと羽音がして、誰かの俺を呼ぶ声がした。かと思うと、1羽のカラスが俺の背中にぶつかってくる。
俺はため息をつき、そのカラスと向かい合う。
「鴉、慌てすぎだぞ」
「ちょっと足が滑っただけだ。そんな事より、早く半身探しに行こう」
そのカラスはそう言うやいなや、部屋の外に続く扉に向かって猛然と足を動かして行ってしまった。
急く気持ちも解らないではないのだが、ちょっとは落ち着けよと思う。俺にだって用事があるんだからさ。
「奏君、リートディクハルカヤトさんは今日は用事があるってどこかへ出かけたわよ。雀君と一緒に」
急くカラスの背中を見ていた俺に、いつの間にか隣に来ていた1羽のツバメが優しげな声でそう言う。
「どこに行くって言ってた?燕」
「さぁ?そこまでは聞いてないわ。ごめんなさい」
1羽のツバメは申し訳なさそうに俺にそう言う。お前が気にするような事じゃないぞ?燕。
それにしても。
また、遊びにでも行ったのだろうか?あの人と雀は。俺に鴉を押し付けて。
俺はため息を吐いた。
「奏君、鴉が待ってるから早く行った方がいいかも」
その燕の言葉に見てみると、扉の前で鴉がこちらをじっと動く事なく凝視していた。
やばいな、早く行こう。
そう思い、奏は隣にいた燕に『変化』の魔法をかけ、扉近くで待っていた鴉にも同じ魔法をかける。
「よし」
いつも通り、うまく『変化』の魔法はかかったようだ。鴉も燕も人間の女の子にちゃんと見える。
そこにいるのは鳥ではなく人間の女の子。
「じゃ、行くか」
ぽんっ、ぽんっ、と二人の頭を交互に叩き、俺は扉を開けて外へと足を踏み出した。
こいつら、飛べない鳥の半身を探すために。




