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少年期編・特別回想3『12歳、初秋の胎動 〜13コマ目の不協和音〜』

初めての投稿です。

誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。

途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。

では、参ります!!

12歳になってから、2ヶ月が過ぎた。 暦の上では秋の入り口だが、僕らの暮らすオアシスには、まだ真夏の残り香のような熱い風が吹き荒れている。


「ハァ、ハァ、ハァ……! くそ、やっぱり、ここで線がブレる……!」


荒野のただ中で、僕は膝をついていた。 手元から放たれた光の弾丸は、空間を鋭く12回折れ曲がり、僕の意図した通りの「緩急タメ・ツメ」を描いて岩石を撃ち抜いた――が、僕が狙っていたのは、その先にある「13回目」の軌道変更だった。


現在の僕の限界値は、11歳の終わりにレイラと共に到達した【12フレーム(12コマ)】。 前世のアニメーションで言うなら、1秒間24フレームの映画における「2コマ打ち(1秒に12枚の絵)」の領域だ。これによって、僕の魔法はただの誘導弾ではなく、まるで生き物のように意思を持った軌道を描けるようになった。


だが、人間というのは欲深い。 12コマという「アニメの黄金比」を手に入れた途端、僕はその先にある【13コマ目】――すなわち、変則的な「1コマ打ち」や「中抜き」といった、より複雑で、より生々しい『神の領域の動き』にに手を伸ばしたくなっていた。


たった1コマ。 けれど、その1マスを開くための脳への負荷は、12コマまでの比ではなかった。13コマ目を意識した瞬間に、脳のタイムシートがバグを起こし、視界の「オニオンスキン(前後の残像表示)」が真っ赤に焼き切れるような激痛が走るのだ。


「イサナギ、無理しちゃダメ。ここ数ヶ月、あなたのマナの焦げ付き(オーバードライブ)、少し異常よ」


冷たい水魔法で濡らした布を、12歳になったレイラが僕の額に当ててくれた。 2ヶ月前に12歳を迎えた彼女は、ここ最近で驚くほど大人びていた。少し伸びた髪を後ろで緩く結び、神殿の聖女見習いとしての白い法衣を着こなしている。その佇まいには、かつて僕の後ろで泣いていた少女の面影はもうなかった。


「ありがとう、レイラ。でも、焦ってるわけじゃないんだ。ただ……世界の『ノイズ』が、この2〜3ヶ月で確実に太くなってる」


僕は布を受け取り、遠くの空を見つめた。 空の境界線、大河の上流にある中央都市の方向から、目に見えない「マナの悲鳴」が風に乗ってチリチリと響いてくる。都市の人間たちが進める『魔鉱技術』による環境汚染、そしてマナの過剰搾取。それが、この辺境のオアシスにまで確実に影響を及ぼし始めていた。


世界が、悲鳴を上げている。 だからこそ、僕の脳内のタイムシートも、外からのノイズに干渉されて13コマ目を拒絶してしまうのだ。


「都市の動きが不穏なのは、お父様たちハンター長も言ってたわ。最近、オアシスの外周に現れる魔物が、みんな一様にイライラして、凶暴化してるって」


レイラが心配そうに、胸元の治癒の触媒アミュレットを握りしめる。


「あぁ。だから、一刻も早く『13コマ目』を掴んで、魔法の解像度を上げたいんだ。12コマじゃ、世界のノイズに押し潰される未来が見える」


僕が立ち上がろうとした、その時だった。


――ズズズ、と。 地響きとも、生き物の唸り声ともつかない、不気味な振動が足の裏から伝わってきた。


「……! レイラ、下がれ!」


僕は即座にレイラを背中に庇い、右手を前に突き出した。 オアシスの美しい緑の境界線――そのすぐ外側の砂丘が、まるで沸騰したお湯のように激しく盛り上がっている。


ザザァッ!! と砂が爆発するように舞い上がり、そこから姿を現したのは、通常の倍以上の巨体を持った『大砂蠍グランド・スコーピオン』だった。 だが、その姿は異常だった。本来なら美しい琥珀色であるはずの外殻が、どす黒い紫色に変色し、その表面には、都市の魔鉱技術が暴走したかのような、赤黒い結晶(マナの膿)がいくつも突き刺さっていた。


「グルルゥ、アァァアア!」


蠍が、およそ昆虫とは思えない、獣のような狂乱の咆哮を上げる。


「ノイズに汚染された魔物……! 都市の排液が、ここまで回ってきてるのか!?」


「イサナギ、気をつけて! あの蠍、マナの波形が完全に壊れてる! 動きが読めない!」


レイラが叫ぶと同時に、大砂蠍の巨体が、信じられないスピードで突進してきた。 砂を切り裂き、その巨大なハサミが僕らの身体を真っ二つにせんと迫る。


起動セットアップ――【魔力追生アニメーション】!!」


僕は瞬時に脳内のタイムシートを展開した。 12コマのタイムライン。 1コマ目、右へ。 2コマ目、タメ。 3コマ目、ツメ(爆発的加速)。 4コマ目、奥行き(Z軸)へ回り込む。


僕の放った光の弾丸は、完璧な2コマ打ちのケレン味を以て、蠍の死角である真横へと回り込み、その柔らかい関節部へと吸い込まれていく――はずだった。


ガキィィン!!


「なっ……!?」


信じられないことが起きた。 大砂蠍は、僕の魔法を「見てかわした」のではなかった。 全身の結晶から不規則なマナのノイズを放出し、空間そのものを『処理落ち』させることで、僕が12コマの点を繋ごうとした「空間の座標」そのものを物理的に歪めたのだ。 結果、僕の魔法は関節を外れ、硬い外殻に当たって虚しく弾け飛んだ。


「魔法のタイムラインが……世界ごともみ消された!?」


「イサナギ、危ない!!」


標的を僕に変えた大砂蠍が、毒針のついた尾を凄まじい速度で振り下ろしてくる。 等速の物理攻撃ではない。ノイズによって歪んだ、カクカクとした「不自然なワープ」のような軌道。


「――【清流の拒絶アクア・ウォール】!!」


レイラが寸前で展開した水の防壁が、毒針を辛うじて受け止める。しかし、ノイズを纏った一撃は重く、バリバリと激しい音を立ててレイラの結界にヒビが入っていく。


「くっ……あぁぁっ!」


レイラの顔が苦痛に歪む。 世界のノイズに汚染された魔物の前では、これまでの僕らの「完璧な12コマ」も、レイラの「清らかな結界」も、力ずくで書き換えられてしまうのだ。


(だめだ……! 12コマ(2コマ打ち)のなめらかな法則じゃ、この『世界のバグ』には対応できない! 相手が世界をバグらせてくるなら、僕の魔法は――それを上回る圧倒的な『枚数(解像度)』で、空間を上書きするしかない!!)


脳の奥底が、沸騰するように熱くなる。 11歳までの経験、レイラと手を繋いで見たマナの景色、スナギツネの緩急、ロック・リザードの三次元。そのすべてを、さらに細かく、さらに緻密に。


12マスのタイムシートの、その隣。 引き裂かれそうな脳に、無理やり「13番目のマス」を爪で引っ掻くようにして、抉り開ける。


(世界のノイズなんて関係ない。僕のタイムラインは、僕が止めるまで、絶対に終わらない――!)


「レイラ、結界を解いて!!」


「えっ……!? でも……!」


「僕を信じて!!」


レイラが目を見開き、一瞬の躊躇の後、結界を霧散させた。 防壁が消えた瞬間、大砂蠍のハサミが、僕の喉笛目掛けて突き出される。


その瞬間、僕の視界オニオンスキンは、完全に13枚のレイヤーに分裂した。 12コマ目を超えた、未知の領域。 1秒間の静止した世界の中で、僕の手元に、かつてないほど濃密で、かつてないほど「滑らかな」光の奔流が渦巻く。


「13コマ目――【中抜き(オーバーラップ)】!!」


放たれた魔法は、もはや「曲がる弾丸」ではなかった。 空間のノイズを力ずくで無視し、まるで最初から「そこに存在していた」かのように、大砂蠍のハサミをすり抜けて、その眉間の結晶へと一直線に突き刺さった。 12コマのカクついた動きではない。あまりにも滑らかで、あまりにも速い、世界の法則を書き換える「13コマ目の直撃」。


ドガァァァン!!!


大砂蠍の脳天に突き刺さった結晶が、内側から大爆発を起こした。 狂乱の魔物は、悲鳴を上げる暇さえなく、大量の砂を撒き散らしながらその巨体を砂漠へと沈めた。後には、浄化された美しい琥珀色の殻だけが残される。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……!!」


僕はその場に両手をつき、激しく息を吐いた。鼻から、ぽたりと赤い血が砂に落ちる。 脳が、千切れそうだ。 だが、僕の右手には、確かに【13フレーム(13コマ)】へと拡張された、新しい魔力回路の感触が残っていた。


「イサナギ……!」


レイラが駆け寄り、僕の身体を抱きしめるようにして、すぐに治癒の魔法をかけてくれた。あたたかい緑の光が、僕の焦げ付いた脳を優しく癒していく。


「バカ、本当にバカ……! 13コマ目なんて、まだ練習でも成功してなかったのに……!」


レイラは怒っていたけれど、その瞳は、僕が無事だったことへの安堵で潤んでいた。


「ごめん、レイラ。でも、掴んだよ。13コマ目……。世界のノイズに勝つための、新しい鍵だ」


僕は血を拭い、静かに微笑んだ。


12歳になってわずか2ヶ月。初秋の荒野で、僕は世界の崩壊の兆し(ノイズ)と直面し、それを乗り越えるための「13コマ目」を手に入れた。


しかし、これはまだ始まりに過ぎなかった。 世界が狂い始めるスピードは、僕の成長速度を遥かに超えている。 この初秋の胎動が、やがてあの「12歳と半年の秋」――15コマへの覚醒と、オアシスを揺るがす最大の激戦へと、僕らを容赦なく巻き込んでいくのだ。


みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?

少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。

励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。

これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

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