いきなり転送だそうですよ ~白いです~
初めての投稿です。
誤字脱字が多くなると思いますが、よろしくお願いいたします。
途中で、脱線することもあると思いますが、ゆっくりと見守ってください。
作品の内容が前後することが多々あると思いますが、大目に見て頂ければ、うれしく存じます。
では、参ります!!
強制ログアウトと不揃いなフェードイン
「――全員、しっかり僕の手を握っていて! タイムラインの同期を絶対に切らさないで!」
フルカラーに完全レンダリングされたセピア大陸の最果て。 次元転移の光のゲート(マスター・リンク)の真ん中で、13歳の調律師イサナギは声を張り上げた。 彼の右手にはレイラ、左手にはルミエル。そしてゴルドン、ノワール、さらには新しく仲間に加わった月の真祖ドラキュラ、暴風の女王シルフィア、焔の機神プロメテウスという、世界を揺るがす規格外のハイエンド・キャラクターたちが、一本のタイムシート(パーティ・レイヤー)に重なり合っていた。
(これで、ようやく懐かしい元の大陸……要塞都市グラン・ガルダへ帰れる!)
ゲートの純白の輝きが、僕たちの視界を100%の不透明度で埋め尽くした――その瞬間だった。
『――警告。システム・レギュレーションの一致しない外部アセットの大量進入を検知。……セキュリティ・プロトコル、緊急起動。全接続オブジェクトの強制分離(パーティ・バグ解散)および、個別セクターへの強制ランダム転移を実行します』
脳裏に、天幻卿ヴァルガの冷徹なシステム・ボイスがバグ混じりのノイズとなって直接割り込んできた。
「なっ……ヴァルガのクソ野郎、世界線の入口に『自動検疫』を仕掛けてやがったな……!?」 シルフィアが鋭い鉤爪を光らせ、暴風の翼を広げようとする。
「クク、不遜なセキュリティだ。我が月の引力をもってしても、この空間の強制引き剥がし(強制シャットダウン)には――」 ドラキュラが黄金の瞳を細めるが、彼の足元からデータがパチパチと四角いドットとなって崩壊していく。
「お、お兄ちゃん! 手が、手が離れちゃうよ……!」 ルミエルがダイヤモンドの瞳に涙をためて僕の左手を必死に握り返そうとするが、僕たちの指先は、透明なシステムのエラー・グリッドによって無慈悲に分断されていった。
「みんな――っ!!! 大丈夫、世界の色はもう戻っている! 座標がバラバラになっても、僕の【魔力感知】で必ずみんなをインポート(探し出し)してみせるから!!」
僕が叫び終えるより早く、世界は完全にフリーズ(クラッシュ)し、僕の意識は真っ暗なタイムラインの底へと強制ログアウトさせられたのだった。
第1章:要塞都市グラン・ガルダ『バージョン2.0』
「……う、く……。リブート……完了」
顔に当たる冷たい感触に、僕はゆっくりと目を開けた。 15コマの感覚が脳内に戻ってくる。周囲を見渡すと、僕は見覚えのある石畳の路地裏に倒れていた。 身体を動かしてみる。幸い、カゴの容量を司る【収納1】も、僕の愛用する鉄剣も失われていない。
「みんな……いない。やっぱり、完全にバラバラのセクターに飛ばされちゃったんだ」
僕は立ち上がり、衣服についた煤を払いながら、路地裏から大通りへと歩み出た。 かつて僕が旅立った場所であり、この大陸の中心であるはずの要塞都市『グラン・ガルダ』。しかし、大通りに出た瞬間、僕は自分の目がバグを起こしたのかと疑い、息を呑んで立ち尽くしてしまった。
(……何だ、この街並み(レイアウト)は……!? 僕の知っているグラン・ガルダじゃない!!)
僕の記憶にある『グラン・ガルダ バージョン1.0』は、ドワーフの重厚な石造りと、人間の無骨な鉄骨が入り混じった、活気と熱気に溢れる「職人の要塞都市」だった。煤煙が空に舞い、職人たちの怒号と槌の音が心地よいBGMとして24時間鳴り響く、泥臭くも愛おしい画面(世界)だったのだ。
しかし、目の前に広がる『グラン・ガルダ バージョン2.0(アップデート後)』は――あまりにも、冷酷で、人工的で、洗練されすぎていた。
画面構成転移前の街並み(Ver 1.0)
建築素材 歪だが温かみのある巨石、黒鉄の骨組
色彩設計 煤けた茶、鉄の黒、生活感のある混色
環境音(BGM) 槌の音、露店の呼び込み、活気ある怒号
空間グリッド 迷路のように入り組んだ路地、職人区画
画面構成転移後の街並み(Ver 2.0)
建築素材 均一で滑らかな白磁、鏡面仕上げのガラス
色彩設計 眩しい白、蛍光ブルーのLED風魔力ライン
環境音(BGM) 無機質な機械の駆動音、静寂な風のハミング
空間グリッド 1センチの狂いもない、冷徹な直線的区画整理
すべての建物が、まるで定規で引いた線と完璧な3Dモデル(プリセット・アセット)をそのままコピペしたかのように配置されている。壁には一切の傷や汚れ(煤)がなく、道路の境界線には、不気味な蛍光ブルーの魔力ラインが脈打つように流れていた。
何より異常なのは、行き交う人々だった。 かつてのようにボロを纏った冒険者や、腕を捲り上げた頑固な職人たちの姿はどこにもない。誰もがヴァルガの紋章(白い天秤)が刺繍された、寸分の狂いもない「純白の制服」を着せられ、まるで精密なモーション・データを再生されているかのように、全く同じ歩幅、同じ速度で、無表情に歩いているのだ。
「これ……街全体が、ヴァルガの独善的なデザインで『一括クリーンアップ(最適化)』されちゃってるんだ。美しくて機能的だけど……最低につまらない画面(世界)だ」
僕が静かに拳を握りしめていると、向こうから見覚えのある大きな体躯が歩いてくるのが見えた。
「あ……! バルカンさん! 市場のバルカンさんじゃないか!」
僕は駆け出した。オアシスを出る時に、僕にあの最高の『濃縮ヒール・リンゴのエッセンス』をくれた、大柄で人情味の塊のような市場の顔役だ。
「バルカンさん! 無事だったんだね! 良かった、僕だよ、イサナギだよ! セピア大陸から、最高の仲間を連れて戻ってきたんだ!」
僕が彼の分厚い肩を掴むと、バルカンはゆっくりと足を止め、その四角い顔を僕へと向けた。 しかし、その瞳には、かつて僕を「坊主!」と呼んで豪快に笑った時の熱い輝きは一切なかった。ただ冷たい、システム・ログを読み取るような視線が、僕の顔をスキャンする。
「……イサナギ? いえ、当『第一商業セクター』の登録住民に、そのような名前の個体は存在しません。少年、私は天幻卿ヴァルガ様より『一級流通管理者』のタスクを付与されたバルカンです。許可なき接触は、街の処理速度の低下を招きます。速やかに退去してください」
「バルカンさん……? 嘘だろ、僕のことを……忘れてる……?」
僕の指先から力が抜ける。 バルカンはそれ以上僕を見ることもなく、機械的な正確さで再び歩き出し、純白の制服の群れの中へとフェードアウトしていった。
(記憶の一括上書き(仕様変更バグ)……! ヴァルガのやつ、僕たちがいない間に、この大陸のすべての住民の脳内データを『バージョン2.0』に強制アプデしやがったんだ……!)
強烈な怒りと、冷たい孤独感が僕の胸を刺す。 だけど、僕はすぐに鉄剣の柄を叩いて、自分の脳内の15コマをシャキッと引き締めた。
(落ち込んでいる暇はない。僕のことを忘れているなら、もう一度ディレクション(関係性の構築)し直すまでだ。……それに、僕にはセピア大陸で命をかけて一緒に戦ってくれた、最高の仲間たちがいる。まずは、この広い2.0の世界から、バラバラにされた僕のパーティメンバーを一人ずつ探し出す(インポートする)んだ!)
僕は目を閉じ、新しく解像度の上がった【魔力感知】を最大出力で起動した。 街全体を覆う無機質なブルーの魔力ラインの隙間を縫うように、僕の感知グリッドが数キロ先までワイヤーフレームとなって広がっていく。
(誰か……僕の作った料理の味、僕がビルドしたスタビライザーの残光、僕と繋いだ手の温もりを覚えている、大切な『仲間(固有アセット)』の信号はどこだ……!?)
その時、要塞都市の中央に聳え立つ、ヴァルガの「白磁の支配塔」の地下深くから、微かだけれど、間違いなく知っている【水】の清らかな魔力波動が、僕の脳裏のタイムシートにポツンとフェードインしてきた。
(この、どこまでも優しくて強い、治癒のグリッドは――レイラだ!!!)
「待っていて、レイラ! 今すぐ僕が、その最悪のバグエリアから救い出してあげるからね!」
僕は13歳の小さな身体に闘志をみなぎらせ、白磁に変わったグラン・ガルダの街を、風のような速度で駆け出した。
第2章:白磁の監獄と『バージョン2.0』の警備オブジェクト
レイラの信号が発せられているのは、中央支配塔の直下に作られた、完全にグリッド化された『地下アセット管理収容所(白磁の監獄)』だった。 かつてはドワーフたちの古い炭鉱跡だった場所だが、今や壁一面が滑らかな白いタイルで覆われ、天井からは等間隔で不気味な監視の赤レーザーが照射されている。
「起動――【魔力感知】」
僕は通路の曲がり角に背を預け、15コマの残像を使って前方の通路をスキャンした。 通路の中央には、ヴァルガが新しく配置したと思わしき、バージョン2.0仕様の警備オブジェクトが直立不動で立っていた。
それは、これまでの生ぬるい兵士とは一線を画していた。 全身が純白のセラミック装甲で覆われた、人間の形を模した機械兵――『天秤の執行者』。手には、空間そのものを切り裂きそうな、蛍光ブルーのレーザー・ハルバード(長柄斧)を握っている。
(あいつ、ただの雑魚オブジェクトじゃない。データの密度(解像度)がめちゃくちゃ高い。僕たちがセピア大陸で強キャラになりすぎたから、ヴァルガのやつ、元の世界側のエネミーのレベル(難易度)を、セカンド・シーズン用に大幅に引き上げ(アプデ)やがったんだ!)
『――警告。登録のない未認証アセット(迷子のバグ)の接近を検知。これより、当該オブジェクトの『強制初期化』を実行する』
リブラ・ガーディアンの頭部のスリットがピカッと光った瞬間、奴の巨体が、15コマのフレームを何コマもすっ飛ばすような、とんでもない「フレーム・スキップ(超高速移動)」で僕の目の前へと瞬間移動してきた!
ガギィィィィィン!!!!!
「く……っ! 速い、なんてフレームレートだ……っ!」
僕は寸前のところで鉄剣を引き抜き、正面からレーザー・ハルバードを受け止めた。 火花が散る。いや、散っているのは火花ではなく、僕の鉄剣の耐久データ(ポリゴン)が削られる四角い粒子だ。力比べ(ウエイト勝負)では、13歳の僕の肉体は圧倒的に不利。
『排除、排除、排除』 リブラ・ガーディアンがさらにハルバードを押し込んでくる。背後の壁からも、警備を知らせる赤いアラート・ライトが激しく点滅し始めた。
(ここでモタモタしていたら、街中の警備オブジェクトが一斉に読み込まれて(ポップして)囲まれちゃう……! だったら、新しく手に入れた僕の『進化アプデ』を、ここで試させてもらうぞ!)
「特殊派生スキル――【剣スキル3:コマ飛ばし(タイム・スキップ)】、起動!!!」
ドクン!!! 世界が僕の脳内で15枚の明確な『キーフレーム(絵コンテ)』に分解される。
リブラ・ガーディアンのハルバードが、僕の首を右から左へと切断しようと、1コマ目、2コマ目、3コマ目と、無機質にフレームを刻んで迫ってくる。 普通の【中割りの極意】なら、その隙間に剣を割り込ませる。だけど、今の僕は違う。
(4コマ目から6コマ目までの、奴の攻撃の『攻撃判定』が発生している時間軸そのものを――僕のタイムラインから、完全に『カット(削除)』する!!!)
カチッ。
僕の精神のハサミが、世界のタイムシートの4、5、6コマ目をパチンと切り取った。 次の瞬間、世界は3コマ目から、一瞬で7コマ目へと「ジャンプ(不連続フェード)」した。
『――ッ!? ターゲットの消失を検知……っ!?』
リブラ・ガーディアンのハルバードは、僕の肉体を通り過ぎた後の「振り抜いた状態(7コマ目)」へと強制的に移行させられ、大きな隙を晒して前方にのめり込んだ。 その間、僕は奴の真後ろの座標へと、何の時間も消費せずに、最初からそこにいたかのように回り込んでいたのだ。
「これで終わりだ! ――【収納1(買い物カゴ)】、拡張起動!!!」
僕はカゴの口をリブラ・ガーディアンの頭部へと叩きつけた。 ただ収納するんじゃない。僕のカゴの内部には、今やセピア大陸の最果てでプロメテウスがレンダリングした、あの「触れると一瞬で炭化する永久熔岩の超高熱レイヤー」が、そのままの熱量でパッキング(保存)されているのだ。
「カゴの底のファイルを――一括展開!!!」
ボォォォォォォォォォォォンッッッッッ!!!!!
カゴの口から、プロメテウスの『深紅の烈火』が、高圧レーザーのようにピンポイントでリブラ・ガーディアンの頭部へと射出された。 いくらバージョン2.0の頑丈なセラミック装甲といえど、世界最高純度の火の幻素の超高熱には耐えられない。奴の頭部OSは一瞬でドロドロに溶け落ち、火花を散らしながら、床へと崩れ落ちて消滅した。
「ふぅ……。危なかった。【タイム・スキップ】と、カゴの【熱量保存】のコンポーズ(組み合わせ)が上手くいかなかったら、こっちのフレームが削られるところだったよ」
僕は鉄剣をシャキッと引き締め、煙の上がる通路の奥、レイラの信号が最も強く発せられている『最深部の白い扉』へと、一歩を踏み出した。
第3章:忘却の聖女と『思い出の味』
バァン!!!
僕が鉄剣で扉のロック(データ・キー)を叩き切って中へと突入すると、そこは、四方を白い光の障壁で囲まれた、冷酷な実験室のような空間だった。
その中央、宙に浮かぶ光の檻の中に、彼女はいた。
「レイラ……!」
長い金髪を優しくなびかせ、蒼海石のバングルを腕につけた僕の大切な幼馴染。 けれど、僕の声を聞いても、彼女は檻の中から、ただぼんやりとした、感情のレイヤーが完全に抜け落ちたような瞳で僕を見つめるだけだった。
「……あなたは、誰ですか? 私は……天幻卿ヴァルガ様に仕える、この世界の『マナ循環機能』のコアアセット。……私のタイムシートに、あなたのデータは記録されていません」
レイラの声は、透き通っているけれど、どこか機械的で、あの結晶村で僕を心配して涙を流してくれた、人間らしい温かみはカケラも残っていなかった。
「レイラ……君まで、ヴァルガに記憶を上書き(初期化)されちゃったんだね……」
僕は唇を噛み締め、光の檻の制御パネルへと近づいた。 力任せに壊せば、中のレイラのデータまで傷つけてしまう。ヴァルガのセキュリティは、本当に容赦がない。
(どうすればいい? 彼女の脳内の深い階層に眠っているはずの、僕たちとの『バージョン1.0の思い出』を、どうやって強制起動させればいいんだ……!?)
その時、僕の【収納1】の片隅で、ポツンと輝く『あるアセット(素材)』が目に入った。 それは、セピア大陸を出る前に、あのフルカラーに戻った結晶村の畑で、ルミエルと一緒に収穫し、僕の【料理レベル3】で完璧にパッキングしておいた、最後の『フルカラーの完熟ヒール・リンゴ』だった。
(そうだ……! 脳内のデータが書き換えられていても、肉体の『五感(舌の記憶)』は、ヴァルガのシステムコード(仕様書)よりも深い、生物の根本的なレイヤーに刻まれているはずだ。……僕の料理で、レイラの心をデバッグする!)
「レイラ、待っていて。今、君の大好きな『味(演出)』を作ってあげるから!」
私は瞬時にカゴからリンゴを取り出し、鉄剣の刃を包丁代わりに使って、15コマの限界速度で皮を剥き始めた。
(ただのリンゴじゃない。これは僕たちが世界の色を取り戻した『奇跡の結晶』だ。ゴルドンさんの地の熱、シルフィアさんの風のキレ、ドラキュラさんの月の引力、そしてルミエルの光……あの世界で僕たちが紡いだすべてのフレーム(想い)が、この一切れにコンポジットされている!)
「起動――【料理レベル3:タイムライン編集】!!」
僕は15コマのタイムシートの中に、リンゴを最も美しく、最も甘みが引き立つ『ウサギ型』にカットするキーフレームを高速で描き込んだ。 1コマ目で芯を正確にくり抜き、3コマ目で皮にV字のカットを入れ、6コマ目でレイラの【水】の治癒マナと最も同調しやすいように、表面の分子構造を『最適化』する。
「書き出し(エクスポート)――完了!!」
光の檻のわずかな隙間(中割りの空間)に、私はカットしたばかりのみずみずしいウサギ型のリンゴの一片を、そっと滑り込ませた。
「レイラ、これを受け取って。……僕たちの、旅の味だ!」
レイラは不思議そうに、宙に浮くその美しい紅色のリンゴを見つめた。 そして、何かに導かれるように、白い小さな指先でそれを掴み、小さな唇へと運んだ。
サクッ……。
静かな実験室に、リンゴを噛じる清らかな音が響く。
その瞬間――。
パリンッ!!!!! と、レイラを囲んでいた白い光の檻が、内側から溢れ出した圧倒的な『青いマナ』の爆発によって、粉々に砕け散った。
「――っっっ!? あ、ああ……っっ!!」
レイラが両手で自分の頭を抱え、その場に崩れ落ちる。 彼女の蒼海石のバングルから、濁りのない純粋な【水】の幻素が溢れ出し、白い部屋の壁を次々と、かつてのような温かみのある古いレンダリング(元の質感)へと書き換えていく。
「イサナギ……! イサナギなのね……っ! ごめんなさい、私、あなたとの大切な思い出のタイムシートを、あのヴァルガに完全にロック(封印)されそうになっていたの……っ!」
レイラが涙をボロボロとこぼしながら、檻の残骸を飛び越えて、僕の胸へと飛び込んできた。 その温かい体温と、僕の服をぎゅっと掴む手の強さ。間違いない、僕の知っている、バージョン1.0の本物のレイラだ。
「良かった……! おかえり、レイラ。僕のディレクション(料理)、ちゃんと届いたんだね」
私は彼女の背中を優しく叩き、それから力強く頷いた。
「ええ! あのリンゴを口にした瞬間、セピア大陸でみんなと笑い合ったすべてのフレームが、脳裏に一瞬で『全画面表示』されたわ。……ヴァルガのクソアプデ(改悪)なんて、私たちの絆の前には、ただのバグに過ぎないわ!」
レイラが力強く杖を握り直し、その瞳にいつもの頼もしい聖女の輝きを取り戻した。
第4章:隠された『バージョン1.0のバックアップ』
「――パチ、パチ、パチ。……見事なデバッグだな、調律師の雛たちよ」
部屋の隅の影から、不敵な笑みと共に、漆黒のマントを纏った銀髪の男がフェードインするように現れた。
「ドラキュラさん……!」
「フン、我が【月】の幻素を、そのような安っぽい白磁の箱(監獄)に閉じ込められると思ったか。我は転移の直後、自らの質量を月の影へと透過させ、この街のシステムログを裏側から覗き見させてもらっていたのだ」
ドラキュラが優雅に指先を鳴らすと、彼の背後から数万匹の影の蝙蝠が霧のように晴れ、彼がこれまで独自にハッキングして集めていた、バージョン2.0の世界の『裏コード(内部データ)』が、空中へホログラムのようにレンダリングされた。
「ドラキュラさん、他のメンバーの座標(居場所)は分かりますか?」
「ああ。鳥女は、この都市の最上空にある『気流制御タルト(風の塔)』のコアとして、ヴァルガのシステムに強制同期させられそうになっている。……そしてあの巨大な鉄屑は、都市の最下層にある『動力炉』のエネルギー源として、鎖でコードを縛り付けられているな」
「やっぱり……みんな、ヴァルガの新しい世界バージョン2.0の『都合のいい部品』として、無理やり利用されちゃっているんだ」 私は怒りで奥歯を噛み締めた。
「それだけではないぞ、イサナギ。我の調べによれば、この街の住人たちの元の記憶、そして街の本来の姿である『バージョン1.0』の全データは、消去されたわけではない。……ヴァルガの奴め、それらをすべて一つの『バックアップ・ファイル』としてパッキングし、この都市の地下のさらに奥深くにある、未踏の隠しセクター――『旧データ廃棄迷宮』の最深部に封印しおった」
ドラキュラが空中の一点を指差すと、ホログラムの地図の底に、ドクロのマークがついた不気味な暗黒のダンジョンの座標がピカピカと赤く点滅した。
「旧データ廃棄迷宮……。そこに眠るバックアップデータを僕たちの【収納1】で回収して、世界全体へ『上書きエクスポート(復元)』できれば――」
『ええ、マスター。世界は完全にバージョン1.0のフルカラーに戻り、バルカンさんたち住民の記憶も、100%元通りにリブートされるわね』
私の影からノワールが人間の美女の姿となってフェードインし、妖艶に微笑んだ。
「よし、タイムライン(作戦)は決まったよ! ――ドラキュラさん、レイラ、まずはこのまま最上空の『風の塔』へ行ってシルフィアさんを救出し、その足で地下の動力炉のプロメテウス、そしてルミエル、ゴルドンさんを全員インポート(救出)する! 最高のフルメンバー(最強アセット)をもう一度揃えてから、ヴァルガの喉元――『旧データ廃棄迷宮』を完全ディレクション(攻略)しにいくよ!」
「うん! 私たちの本当のセカンド・シーズン、ここから大逆転劇の始まりね、イサナギ!」 レイラが杖を天に掲げ、青いマナの光を眩しく放つ。
「クク、面白くなってきた。あの天幻卿とやらのふざけた絵コンテ(世界)、我らの手で跡形もなくスクラップにしてやろうぞ」 ドラキュラが漆黒のマントを激しく羽ばたかせ、黄金の満月のオーラを地下室全体にレンダリングした。
13歳の春、世界バージョン2.0。 大切な人々から記憶を消され、街を改悪された絶望のフレームの中から、僕たちの『本当の反撃の第1コマ』が、今、最高に熱いフレームレートで力強く動き出した。バラバラにされた最強の仲間たちを再び繋ぎ止め、ヴァルガの欺瞞に満ちたアップデートをすべてデバッグするための、僕たちの果てしない新章の冒険が、ここに堂々と幕を開けたのだ!
みなさま、どんな風に感じてもらったのでしょうか?
少しでも面白いかもと思って頂けましたら幸いです。
励みになりますので、☆☆☆☆☆をチェックしてもらえると嬉しく存じます。
これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。
表を挿入する方法がわからなかった???
長くなってすみません




