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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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爺様のおかげ? 治った右目 1

 1人だけ放置されているアネッサが、これまた放置されているノアに「お腹は空いていないか?」と聞いたところ、大いに空いているノアは「すいてる」と返事をした事により、温かいスープと麦がゆにありつけるのだが、隊長も副官も「子供達をいじめるのはやめよう」と思っていたし、アネッサは命令も何もされていないので、ノアに食べものを与えたのは罪にならなかった。


 ノアとカミラに『罪の意識』を持っているアネッサは2人の子供が気になって仕方がないのである。


 ノアは爺様に診断してもらえなかったが、ノアも少しの腹水を抱えており栄養失調状態なので、カミラの横になっている寝床の横に大人しく横になって、カミラにぴっとりと引っ付いて寝た。


 ノアも半病人なので。


 爺様の治療のおかげで頬の中ごろからおでこまで綺麗な顔になり、顔色がわかるようになり血色が良くなると、爺様の補佐官はいそいそと爺様の寝ている部屋に看病に向かった。


 爺様には病気はないが、お年を召しているので、補佐官にとって大事な爺様の放置はしないのだ。


 『隊』に怪我人・病人がいない時の補佐官は爺様の身の回りの世話が仕事なので。


 爺様は戦争の時もずっと駐屯地で暮らしていて、多くの傷ついた兵士や軍人を自分が倒れるまで毎回毎回、ずっと治療してきたので、武力を持つ者達は爺様に感謝の念が絶えない。

 もちろん『治癒魔法師』は爺様だけではなく教会からも派遣されていたが、その多くの人達は怪我人の治療という名の『実験』と『経験値取得』をしに来ていたので、純粋に戦う人達の治療をしていたのが『爺様だけ』だと知っている。


 そして爺様は『権力に負けない』で下っぱの兵士が死にそうになっていれば『上級軍人の軽傷』よりも優先して治療をしていたので爺様の生き様を尊敬している者は大勢いるのだ。


 たまに『1人の権力者よりおおくの民意』が権力者に勝てる『ジルバルト王国』なので、表立って爺様を非難する者はいないが「目障りだ」と思っている「ヤバい奴」はいるので『元国境の駐屯地』は残り少ない爺様の命を繋いでいる場所でもある。


 ◇◇◇


 カミラは丸一日、目が覚めずに、翌日の昼間に目が覚めた。


 カミラは目を開けた瞬間に違和感に襲われた。


 『何故か視界が広い』

 そして、頭の中がクリアになった気がした。


 スズが歓声をカミラの頭の中で声を上げた!


 (カミラっ! カミラっ! おめでとう! 右目が治ったよ! 目が見えるようになったねぇ。良かったねぇ。嬉しいねぇ)


「え……? めが、みえる?」


 カミラの目覚めに隣で横になっていたノアが飛び起きた!

 凄い反射神経だ。


「カミラ、カミラ、からだ、いたい? おなか、すいた?」


 心配そうにカミラを見つめるノアは、いつのまにか自分を見ると「お腹は空いていますか?」と聞いてくる女兵士の口癖がうつっていた。


「ノア。……からだは、いたくないよ。おなかは、すいたかな?」


 部屋にいた、女兵士ことアネッサが部屋を飛び出していった。

 2人に食事をさせなかった前科があるので、女兵士・アネッサは、子供2人の空腹には敏感なのだ。


 そしてノアとカミラは2人きりになったので、カミラがジョウロを出して2人で思う存分に水分補給をした。

 昨日は自力で水分補給も許されなかったカミラは、清らかな水を飲んで、全身が生まれ変わったように体が潤いに満ちた。


 ノアも、女兵士の「食べものは勧めるが、水は持ってこない」態度に喉はカラカラで、地下から出てから1番体が乾いていた。

 カミラは寝ている時に水分補給をされたが、1日以上も寝ていたのでやはり喉が乾いていた。

 たくさん泣いたしね。


 カミラがジョウロを消して、何か食べるかな? と考えた瞬間に、唐突に昨日の恐怖を思い出した。

 無意識に体が震える。


「スズっ!? スズっ! スズっ! いるよね!?」


 スズはカミラの頭の中で瞬時に返事をした。


 (いるっ! ずっと一緒にいるからっ! 頭の中で会話して!)


 ホッと安堵で体の力を「ふーっ」と抜いたカミラにノアはカミラにナニが起きたのかを探る目をして見ていた。

 ノアには『すず』が意味不明なので。


 もちろん視線に敏感なカミラはノアに気がついて手を自然と繋いだ。


 そして2人でくっついて存在確認をするように名前を呼び合っていると、部屋の扉が「ばんっ!」と開いて2人とも部屋の入り口を見た!


 カミラは「怖い男達」が2人部屋へと入ってきて驚いて体を硬くした。


 (カミラの【箱庭】を知られると、みんな、欲しがるよね)


 スズの声が頭に蘇った。


 隊長は目覚めているカミラを見て「随分と顔が良くなった」と感心した。

 だって、ここにやってきた時からカミラの顔がわからないほどボコボコに膨らんで歪に歪んでいたのだから。

 それと同時に爺様の治療の腕前に感心した。


 カミラは骨が脳に接触していたために思考能力に問題がなくなり、丸坊主の頭が綺麗に丸くなり、右目の瞳の色が白濁した白色だったのが綺麗な薄ピンク色になっており、目の周りもついでに治療された事で見た目の印象が随分と変わっていた。


 隊長、副官が部屋へと入ってきてカミラに少し近づいたところで隊長と副官がカミラに謝った。


「カミラ、君には酷な事をした。すまない。許してくれ」


 隊長が腰からカミラに頭を下げて謝罪した。


「カミラ、体調が悪かったのに食事を与えずに、申し訳なかった」


 副官も頭を下げて赦しをこうた。


 カミラには何が起きたのか、理解できない。


 スズが頭の中で「許しますって言って」と伝えてきたので「ゆるします?」と口にすると、隊長と副官が頭を戻して顔を引き締めた。


 そこで、老いた衛生兵の爺様と補佐官が入室してきたので、隊長と副官は部屋の隅に移動した。


 カミラは初めて見る背の低いしわくちゃな顔をした人とそれを支えるように歩く男を見て動きを止めた。

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