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スキル『箱庭』で、私は『人』になる  作者: 春爛漫


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16/21

今日は雨

 今日は生憎の雨。


 どこで雨を避けているかと言うと……森の中。

 できるだけ大きな木の下にいる。

 普通に雨に濡れる。


 でもね、小さな頃から雨は汚れを洗い流してくれるから嫌いではないけれど……『じじい』から貰った服が汚れる汚れる。


 雨でぬかるんだ土で汚れるんじゃないよ?


 何故か雨粒が染み込むと、私についている汚れが髪から滴り落ちて茶色なのか灰色というヤツなのか? 黒色なのか? 汚れて、汚れて、スズが頭の中で「濡れネズミ」と呟いている。


 『じじい』ごめん。

 私には柔らかくてキレイなものは合わないらしい。


 ついでに私ほど汚れてはいないけれど、雨を避けようとして私のお腹にしがみついているノアの服も汚れている。


 『しあわせ』がナニカをわかっているつもりが、わからなくなりそうですよ。


 スズが頭の中で「傘をくれ! おおっ、神よ!」と叫んでいるが、何を言っているのか理解できない。


 私はノアが雨に濡れないように、きゅっと抱きしめるしかできないけどね。


 そしてスズがこの間からうるさくて時間が早く過ぎる気がする。

 「あまてらすおおみかみーや! お姿をお見せください。ははーっ!」とか言っている。

 誰の姿を見せろって?


 そういや『じじい』と別れた後にスズが『じじい』の難しかったお話を教えてくれた。

 私は見た事が無いのだけど、拳や足よりも強いモノを持っている人たちがたくさんいるから、見つからないようにしてと言っていたって。

 そして「山を登る」ように言っていたらしい。

 途中からは『道』が無くなるんだって。

 山で暮らしていた私よりもノアの方がツラいかもしれないって。

 スズが今、頭の中で叫んでいるみたいに「靴をくれー!」と叫んでいた。

 「くつ」は知っているよ。

 足を入れるやつ。

 私は山で必要なかったけど、ノアはもしかしたらいるかもしれない。


 『今』は足が「どろ」ってやつで汚れているけど。


 そして、雨で濡れている私だけれど『じじい』のスープと戦ってしまうかもしれない「やさい」が『箱庭』の畑で収穫できたよ! ただいま増産中です。


 その名も!


 『トマト』!


 私は初めて『あまい』を知りました。

 ノアも初めて『あまい』を知ったらしいよ!

 嬉しいねぇ。


 もうね、朝ね、トマトを食べると口の中が『しあわせ』でね、昼に食べても『しあわせ』でね、夜はスズが「お腹が冷えるからダメ」って言うからパンだけ食べるの。

 でも、パンは3番目に好きだから、やっぱり『しあわせ』ってなって「右目に治癒魔法かける!」とスズが言うから、右目に治癒魔法をかけたら、そのまま寝る(気絶)。


 それから、変わったことは、スズが「光るモノには注意せよ!」と歩いているとたまに頭の中で叫ぶ。


 太陽の光を「はんしゃ」してキラリと光るモノがあると『危険』らしい。

 誰かが隠れている、かもしれないそうだ。

 太陽の光でキラリと光ると大人の男の蹴りよりも怖いらしい。

 血が吹き出す! とスズが言っていた。


 地下強制労働を嫌がった子供が監視の男に蹴られて、口から大量の血を吐いていたけれど、アレぐらい痛いっ! そうだ。

 怖いね。


 スズが「山を見たらすぐに森に入る」と真剣な声で言っていた。

 マジらしい。


 え? 「マジ」ってなにって?

 『真剣』とか『本気』とか『真面目』って意味があるそうだよ。

 今回の場合は『本気』で森に入るから! って意味ね。

 スズがよく「マジで」とか「マジだから」って言うから覚えた。

 よく考えるとスズが不思議だよね。

 私が覚えている限りには、スズとずっと一緒にいるのが普通だから、やっと話し合えるノアができた時に「頭の中にスズがいる」って言ったら「わからない」って言われた。


 他の人の頭の中には『スズ』がいないのかな?

 私も「わからない」よ。


 あ、雨が止んだ。


 でもね、地面が濡れていてね、足が疲れても横になって眠れないの。

 川が近くにあると、泥まみれになってもすぐに洗えるんだけどね。


 え?

 雨が降った後の川は水が増えて危ないって?

 私もね、川の中に一度だけ流されてね、息ができなくて、頭の中でスズが叫んでいてうるさかったから「どうしよう?」と思っていたら、川に突き出していた木に服がブスッと刺さってね、腕が勝手に動いて木に捕まっていたら、服が破れたから、地面に足が届いて助かったんだよ。


 で、小屋にコソコソと新しい服を取りに行ったら、親らしき男に顔をボコボコにされて、今の私の顔になったのですよ。


 死ぬほど痛かったです。


 死ななかったけど。


 その後に女の人に「化け物!」と叫ばれた時の方が幼い心は傷つきました。

 多分、ずっと忘れないです。


 その後に水面を見て、自分で「あ、化け物だ」と思ったところまでがオチです。


 え? 『オチ』ってなに? って?

 なんだか話の終わらせ方がうまいそうです。


 全然、美味しくなそうだよね?


 ああ、足が疲れた。


 良さそうな気の根っこを探そうかな。


 え? なにするのって?


 座るんだよ。


 たまにね「座るのによさそう」な木の根っこがあるからね。

 見つけた時は『嬉しい』よね。

 食べられる草を見つけた時は『もっと嬉しかった』けどね。


 よしよし、スズとノアと森の中に入りましょうね。

 少しだけ奥に行くからね。

 ノアと手を繋いで……森の中だと繋げないね。


 私の経験だと『太い木』を探すと良い根っこがあるはず。


 ……。


 スズが頭の中で「大丈夫? いける?」と聞いてくる。


 た、たぶん、だい、だいじょうぶ? じゃない? かな?


 お、大きな、木が、無いね?


 ……。


 ごめんなさいー!

 迷いましたー!


 多分っ! 元の道に帰れるっ!

 多分っ! いけるっ!

 気がするなぁ。

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