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試験終了

 ユーマ機の直ぐ後ろを追い掛けていた正規ライダーが交差点に差し掛かった瞬間、正規ライダーの乗るハガネのコックピットに警告音が鳴り響いた。


「何だよ逃げたんじゃないのか!」


 交差点を曲がる直前、曲がり角にあるビルの影から正規ライダーのハガネに向かって、ユーマ機がブレードを振り被って現れた。

 咄嗟に正規ライダーは全力で後退して難を逃れるが、そこを逃がすユーマではない。


 振り被っていたブレードは左手に装備していた物だ。

 右手にはライフルを持ったまま。

 ユーマはライフルを後退しているハガネに向けて引き金を引く。

  

 だが、流石にやられっぱなしでは無い。

 正規ライダーのハガネも盾を構え、ユーマの射撃を防ぎつつ反撃のために自らもライフルを構えて、射撃を開始する。

 

 お互い機体への有効弾は無し。

 ユーマの射撃は正規ライダーのハガネのライフルに命中してライフルの使用不能判定が表示された。

 対して正規ライダーの射撃はユーマ機がビルを壁を蹴って側転で回避した為、全て外れてしまった。


「撃墜女王もお前もCFでなんでこんなに動けるんだよ」


 ライフルを使用不能にされてしまっては剣で戦うしかない。

 正規ライダーはライフルを捨て、盾を構えたま背部のマウントラッチからブレードを取り出して棒立ちのユーマ機に切っ先を向けて構えた。


 丁度その時だった。

 正規ライダーの視界に先程分かれたバディの1人がユーマ機の後ろに回り込んでライフルを構えるのが見えた。


「行くぞカザギリ候補生! いざ尋常に勝負だ!」


 わざとらしく叫んでユーマの気を引こうとする正規ライダー。

 ペダルを踏み込み、ユーマ機に突撃を掛けるそんな彼の視界の隅に映っていたライフルを構えた味方機体。

 

 しかし、その機体から射撃支援が放たれることは無かった。


 急に頭を垂れ、道路に両膝を付く同僚の機体。

 攻撃されたのだと理解するのには時間は掛からなかった。


「目標クリア」


「確認した、じゃあ次で……最後の1機だな」


 突撃してきた正規ライダーの刺突をスラスターを吹かして、側宙で避けながらライフルのトリガーを引き、正規ライダーの乗るハガネの頭部に模擬弾を当てつつ言うと、ユーマは一旦その場を離れた。


「合流するの?」


「……そうだな、最後の1機とは言え慢心は良くない。

 一度合流して同時に仕掛けよう」


 合流地点で再会したユーマとヒノカはそこで装備の点検と弾薬の補充を行い、機体の診断も行って万全の状態にしていく。


「機体の関節部の摩耗が激しいか。

 また整備長に叱られそうだなあ」


「初手壁蹴りでビルの屋上まで行けばそりゃあね。

 最後のプランは? このまま私は狙撃に徹する?」


「いや、最後はさっきも言った通り同時に行く。

 ……でもなあ、多分何だけど会敵する前に訓練終わりそうなんだよなあ」


「え? なんで?」


「あー、まあ。ちょっと待って――」


 と、ユーマが言い終わるに2人のハガネに通信が入る。

 指揮車にいるオペレーターからだ。


「試験官を努めた正規ライダーからの投降を通信で受け取りました。

 おめでとうございます、ユーマ・カザギリ候補生、ヒノカ・マシロ候補生。

 これにて訓練終了、あなた達は文句無しで合格です」


「了解、基地に帰投します」


 その通信にユーマは苦笑したが、ヒノカは何処か不満そうだ。

 6機いた味方のうち5機をものの10分足らずで仕留められたのだ、1機でどうにか出来るわけもない。

 投降は英断だと言えるだろう。


「ヒノカの初弾が効いた結果だな」


「むぅ、ちょっと消化不良かも」


「頼もしいねマシロの姫様は」


「あなた程じゃないわよ。

 ねえ、試験合格のお祝いに明日街に何か食べに行かない?」


「そうだな、司令も駄目とは言うまい。外出申請しとくよ」


 先輩達に完勝し、試験に合格した2人は基地に帰ると皆から拍手と賛辞の言葉で出迎えられた。

 この試験はドローンにより撮影されており、基地内で放映されていたのだ。


「コラァ、カザギリィ! お前またハガネで無茶な機動しやがって!! ヒヒイロカネじゃないんだぞ!!」

 

「やっぱり整備長怒ってるなあ」


「しょうがないわねえ、私も一緒に謝ってあげる」


「助かるよ、あの人マシロには優しいから」


「その代わり明日の食事奢ってね?」


「マシロ家のお嬢様の言葉とは思えんな。

 まあ、良いよ。明日は俺の奢りだ」


「やった」


 通信越しに笑いあう2人は機体を降りたあと仲良く整備長に怒られるのだった。

 

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