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狼シェフと愉快なレストラン  作者: ただっち
第1部:怪盗&侍編
36/48

そして少年は思い出した

「お待たせ!!」

 

 そう言って紅葉は優しく俺を抱き寄せ笑っていた。

 

 「良かった……無事で……」

 「紅葉? なんで、ここに……」

 

 先程から言っているが、ここは夢の世界。

 俺の、俺だけの世界。

 何者にも立ち入ることが出来ないはずの空間だ。

 とはいっても、もうすでにレオに侵入されている時点でその説明の信憑性は皆無だろう。

 

 「その説明は後で……それよりも……」

 

 と、紅葉はギロリと小さいライオンを睨み付ける。

 ライオンも負けじと、睨みを聞かせ唸り声を上げている。

 

 「貴様……俺様の迅雷(もの)に触ってるんじゃねーよ」

 「俺様の迅雷(もの)? 違うね、迅雷は僕のものだ。 何を勝手に拐ってんだこの泥棒猫……」

 

 ギリギリと歯軋りを立てながら、レオはマントから拳銃を取り出す。

 

 「魔銃レグルス……」

 「そうさ!! お前は白魔導師がいなけりゃ、こいつの攻撃は防げねぇんだよ!!」

 

 その銃の性能について俺は知らない。

 だが、紅葉たちと何らかのやり取りがあったことから、あれは危険なものだということは分かる。

 

 「紅葉!!」

 「心配しないで迅雷……僕が君を守って見せるから」

 

 そう笑顔で言うと、紅葉は深く息を吐き、駆け出すのだった。

 

 「生意気な!! 消えろ!!」

 

 レオは銃を鞭のように変形させ、紅葉に向かって振り下ろす。

 

 「甘い!」

 

 と、紅葉は横にくるりと回転して攻撃を避ける。

 そして地面を蹴りあげ、直ぐ様レオの懐まで詰め寄った。

 流石のレオもあそこまで近寄られては即座に対応できなかったようで、ぎょっとしたような表情を浮かべた。

 

 「目覚めな!! クソガキ!!」

 

 素早く、そして重い拳はレオの腹をめり込ませ、彼を彼方へと吹き飛ばすのだった。

 そういえば忘れていた。

 紅葉って、迅凱仙メンバーで一番の戦闘能力の持ち主だったことを。

 紅葉の登場……それは、レオにとっては誤算だったようで、苛立ちが顔に顕著に現れている。

 ギリッと歯を食い縛り、手にしている銃を強く握りしめている。

 

 「くそがきがぁ……!!」

 「さあて、迅雷は返してもらうよ」

 「ふん……そいつはどうかな……」

 

 レオがギロリと俺の方を見つめると、黒い空間から植物の蔓のような物が伸び、俺を捕縛する。

 

 「迅雷!!」

 「動くな狼……動けば、迅雷はどんどん苦しむ」

 「くっ……」

 

 首がギリギリ絞まらない程度に拘束されてはいるが、確かにこれじゃあ身動きが取れない。

 

 「さあて、狼……どうする?」

 「……せ……」

 「はぁ?聞こえねぇな」

 「……な……せ」

 「はぁ??」

 「迅雷を離せぇぇぇ!!!!」

 

 紅葉の怒号は空間中に響き渡る。

 大気が震え、声の衝撃は骨にまで響き渡るほどだ。

 

 「ふん、結局は威勢だけか……さあて、どうなぶってやろうかな……」

 

 レオの笑みはどんどん凶悪になっていく。

 くそ、くそ……どうすれば。

 

 「やれやれ……どんどん事態は悪化しているようだね」

 

 暗闇から頭を抱えてスッと現れたのは、先ほどレオによって排除されてしまっていた楓だった。

 

 「楓!! お前……」

 「頭痛いよ……今もひどいし……でも、今の彼は紅葉を倒すことにしか集中してないようでどうにか出てこれたよ」

 「じゃあ……!!」

 「いいや、僕では君の拘束を外すことは愚か、あのレオを倒すことは出来ない」

 「そ、そうか……」

 「でも、君が忘れている記憶は持ってこれた」

 

 そう言って白衣のポケットを翻し、取り出したのは1つの光の球体だった。

 美しく輝くが、どこか悲しいと感じてしまう。

 

 「これは君が封じていた悲しみの記憶……人間はあまりにもショックな出来事があると記憶を忘れてしまうというが、真実はその記憶を分離しているだけ……心にはしっかりとこうして保管されているのさ」

 「そうなのか?」

 「うん。 そら……思い出せ。 子供の頃に忘れていた記憶を……」

 

 楓は光の球体を俺の身体に無理矢理押し付けた。

 その直後、俺の意識は過去へと誘われたのだった。

 


【迅雷5歳時代】

 

 研究室。

 そうだ、ここは研究室だ。

 俺は昔、お父さんの研究室に居たんだ。

 お父さんの研究を見学に……そういう目的もあったが、単にお母さんが仕事で海外に飛び回るほど忙しかったからずっとここに預けられていたんだ。

 

 「お父さん、お父さん♪」

 「なんだい、迅雷」

 「えへへ♪ 呼んでみただけ♪」

 「ははっ♪ 迅雷は可愛いな♪」

 

 お父さん……天野教授は、よくそう言って俺を抱き抱えていたな。

 たまに首筋にキスをするんだけど、くすぐったかったな。

 

 「おう、迅雷。 また来てたんだな」

 「あっ♪ ライオンさん♪」

 

 そう言って幼い俺は、研究室に入ってきた獅子の獣人に抱きついていた。

 俺は昔、獣人に会ってたんだな。

 まあそうか。

 なんせお父さんは、有名な研究者だったし雷オーナーとも知り合いだったみたいだから……忘れていただけか。

 

 「やあ、レオくん」

 「師匠、どうもです」

 

 レオって……もしかして、あのレオ?

 でも、全然容姿が違う。

 俺の知るレオは、もっと小さいのに。

 このレオは、大人でかなりゴツい体型だ。

 

 「やれやれ、いつもみたいに【おじ様】と呼んでもいいのに」

 「いえいえ。 俺もいい加減いいおっさんですから。 その辺は……」

 「レオおじちゃん♪」

 「おお、迅雷♪ 今日もほら、たてがみ触っていいぞ」

 「わーい♪」

 

 俺はこうしてレオと仲良くしていた?

 

 「大きくなったらレオおじちゃんと結婚するんだ♪」

 「えへへ♪」

 「えー、お父さんと結婚しようよ迅雷」

 「やだ!! レオおじちゃんのたてがみにくるまれて生活するの!」

 「結婚目的がたてがみかよ!」

 

 そう言えばこんなこと言ってたな。

 

 でもなんで忘れていたんだ。

 なんで……。

 

 くっ……。

 

 頭が……痛い……。


それに合わせてか、映像も一気に飛んでいる。

 ここは、どこかの広場?

 

 「レオおじちゃんとデート♪ デート♪……」

 

 幼い頃の俺は、噴水の前にあるベンチに座っていた。

 そうだ……そうだ。

 この日、レオと遊びにいくんだったっけ。

 確か、遊園地に行くとかなんとか。

 

 「えへへ♪ おじちゃんのために、おお父さんに教えてもらって、ストラップ作ったんだぞっと。 喜んでくれるかな?」

 

 幼い俺の手に握られていたのは、赤いクリスタルのようなストラップだった。

 そうだ……お父さんに、無理矢理お願いして結晶を作って貰ったんだっけ。

 

 「あ、レオおじちゃん♪」

 

 そう言って走り行く先には、こちらに向かって手を振るレオの姿が。

 しかし、直後……。

 

 バン!

 

 と、大きな銃声が鳴り響く。

 

 「えっ……」

 

 その音の直後、レオの胸からは血が出ていた。

 そして彼は地面に崩れ落ちてしまった。

 

 「レ、レオおじちゃ……!!」

 「はいはーい、そこまで。 ここから先はダメだよ少年くん」

 

 黒い服を着た男たちは、倒れたレオを取り囲んだ。

 その一人が俺を押し退けている。

 

 「で、でも……レオおじちゃん……」

 「大丈夫大丈夫……ちょーっと、このおじさんは連れてくだけだから」

 「で、でも……」

 「うるさい子供ですね……何事ですか?」

 

 黒服の男たちを掻き分けて、白衣を着た紫色の髪をした男が俺の目の前に現れる。

 えっ……水無月。

 

 「おや? 君は天野教授の……」

 「レオおじちゃんは!! レオおじちゃんは!!」

 「あー、あの獅子の獣人なら……」

 

 と、水無月は懐から赤く滴るなにかを取り出し俺に見せた。

 そして彼は不気味に笑いこう言った。

 

 「殺したよ♪」

 

 それは、取り出したばかりの心臓だった。

 そして俺はふらっとして倒れたんだ。

 

 「やれやれ、ジョークも通じないとは……おい、お前ら。 早くそいつを施設まで運べ。 新薬の検体として実験をするぞ……それから……」

 

 水無月がなにか喋っているのを薄れ行く意識の中聞いていたが。

 そのあとの記憶はなかった。

 つまり、これが……俺が忘れていた記憶だったんだな。

 そして再び俺は戻るのだった。


「紅葉……」

 「お兄ちゃん……」

 

 目が覚めると、黒い蔦に捕らわれボロボロになっている紅葉と楓の姿が直ぐに目に入った。

 

 「へぇ……君たち、兄弟だったんだね……あはは♪ んじゃ、仲良く葬ってあげるよ」

 

 そう言ってレオは、魔銃レグルスを構える。

 その魔銃の1つに取り付けられているあの赤い結晶って……。

 

 「死ね……」

 「レオおじちゃん!!」

 

 引き金を引きかけた指をピタリと止め、レオは目を見開いてこちらを見る。

 

 「じ、迅雷……?」

 「もうやめて、レオおじちゃん!!」

 「ま、まさかお前……記憶が……」

 「思い出した……あの日のことも……遊園地に行こうとして噴水の前で待っててその後に起こったことも……なにもかも……」

 

 ガチャン、とレオは持っていた銃を落とし、ふらっと床に倒れ混んでしまう。

 そして、黒々と覆われていた空間は元の白い空間へと戻り、俺たちを拘束していた蔦はボロボロと崩れ去ったのだった。

 

 「レオおじちゃん……」

 「笑えるだろ? こんな姿になっちまって……」

 「……あの男になにをされたの?」

 「……実験だ。 検体01号と呼ばれる個体と同じ研究成果を欲したあの男は、当時の有名な獣人たちを拐い、研究していた。 表向きはあの男は生きていることになっていた。 しかし裏では既にその検体01号に殺され死んでいた。 だから、陰陽師の肉体に憑依して顔もなにもかも陰陽術で変装していたらしい」

 「水無月……」

 

 楓と紅葉は俺の口から出たその言葉に耳をピクリと反応させる。

 そうさ……この二人にとっては忘れることの出来ない……あの男の名だ。

 

 「そして、実験の副作用で俺様も死んでしまったのさ」

 「え? じゃあなんで……」

 「どっかの天才が完成させたクローン技術と天野教授の力で、生み出した俺様のクローンに生まれ変わる事で、新たな人生と肉体を取り戻したってわけさ。 まあ、代償に……」

 

 と、レオは右目を見せる。

 俺の知るレオの瞳と違い、右目は赤いばつ印が浮き上がっている瞳だった。

 

 「これは生まれ変わる前に受けた呪術……言うならば【呪い】だ」

 「呪い……」

 「水無月が俺様が生まれ変わりを利用して逃げようとしていることに気づいたらしくてな……この呪いは【愛する者から拒絶する度に命を削られ、愛する者から愛される度に命を与えられる】というもの。 だからこそ、俺様はお前を……」

 

 そう言ってレオは俺にキスをした。

 ん???

 

 「こら貴様ぁ!! むぐぅ!!」

 「紅葉、ストップ」

 

 じたばた暴れまわる紅葉を抑え、楓はその光景を見守っていた。

 レオの身体から、みるみると光が溢れ、生気がみなぎっていく。

 

 「ははっ……やっぱりだ……やっぱり、俺様はお前を……」

 「ん?? え? どういうこと?」

 「はぁ……相変わらず鈍いやつだ。 お前はそう言うところは昔から……いやいいや。 つまりは、お前が俺様にとっての命綱……ってことだ」


こうして迅凱仙を騒がせた俺の誘拐事件は幕を下ろした。

 その代わり……。

 

 「はい、今日から食料調達係で働く俺様はレオだぜ」

 

 レオくんが迅凱仙で働くことになったこと。

 そして……。

 

 「迅雷、命が尽きそうだからセック○して愛を……」

 「やめろ、変態泥棒猫!!」

 

 紅葉と毎日俺を取り合って喧嘩していることが俺の日常に追加された。

 雨宮刑事は「急な事件が入ったから、その男を監視しといてください」と、別事件を追って海外へと飛んでいった。

 全く、このレストランは騒がしいな。

 だけど、嫌いじゃないよ。

 だって、ここはいつだって楽しいレストランだからね。

 

 「迅雷~たてがみをブラッシングしてくれぇ~」

 「だめ!! 僕の尻尾が先なの!!」

 「「なんだとぉぉ!!やんのか!!」」

 

 事件解決?かな。

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