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狼シェフと愉快なレストラン  作者: ただっち
第1部:水無月編
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回想禄~【冷血の狩狗その5】~

 兵士たちによる俺の凌辱は続く。

 打たれた媚薬の効果が早く切れるように祈るばかりなのだが、まだまだ切れそうにない。

 あれから何時間も……何時間も……。

それを水無月は夢中になってみていた。

 そして兵士たちも……。

 だからこそ、気がつかなかったのだろう。

 楓が自身の腕につけられた枷を静かに取り外していたことに。 


「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 俺はまるで身体を引き裂かれるような激痛に襲われていた。

 だが、激痛はすぐに快楽へと変わっていった。

 水無月に打たれた媚薬の効果……一体どれほどまでに持続し、強力なものなのかは定かではない。

 が、少なくとも言えるのは俺がこうしている限り、誰も楓に関心を持たないということだ。

 楓から目線を外せているのなら、水無月によってこれ以上楓が酷い目に合わずに済む。

 さすがに俺ほど頑丈ではない楓が、こんな兵士たちの拷問を受けてしまったら、きっと身体も心も壊れてしまう。

 

 「そろそろ……検体01号きゅんに、みんなとどめを与えてあげなよ♪」

 「「承知致しました」」

 

 俺は水無月をギロリと睨み付ける。

 が、水無月は臆することなく笑みを浮かべていた。

 

 「ふふっ……睨み付けても無駄ですよ。 今の君は完全に奴隷。 というより、前みたいに検体ですか。 そんなやつに睨まれてもなんら恐怖など微塵も感じませんねぇ……むしろ、いとおしい感情がより強くなりますねぇ」

 「水無月……お前は……お前は……」

 「はっはっはっ……さあ、兵士ども!! 検体01号きゅ……ん……!?」

 

 水無月はそう言いかけて言葉をやめた。

 何せ今はそれどころではないからな。

 兵士たちが脱ぎ捨てた武装の1つであるドスを思い切り後ろから刺され、腹を貫通していたのだから。

 

 「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!痛い痛い痛いぃぃぃぃぃ!!」

 

 水無月のその言葉に動揺した兵士たちの視線は、水無月の方へと向く。

 だが、彼らにも敵の姿は見えなかった。

 なぜならば、その敵は自分達が先程脱ぎ捨てた光学迷彩で姿を消していたのだからな。

 だから、彼らが見えたのは何もない空間から刺された水無月が苦しんでいる姿だった。

 

 「ぐぅぅぅ……だ、誰だぁ!!」

 

 水無月は虚空に向かって叫ぶが、光学迷彩の主は喋らなかった。

 だが俺には分かっていた。

 だって、この場から消えている人物が1人いたからな。

 それに見ていた。

 手枷を外し、打たれていた薬を解毒し、光学迷彩の装備をつけている一部始終をな。

 そして既にその光学迷彩の主は、その場にはいない。

 兵士たちが水無月の元に駆け寄っている間に、入れ替わるようにこちらに来て

俺に解毒薬を打ってくれたからな。

 

 「さぁ、ナイト……反撃開始だよ」

 「悪いな……助けに来たのに、みっともない姿を見せた」

 「いや、そうでもなかったよ。 なんというか、あんなナイトの1面もあるんだなって……」

 「え、い、いや……」

 「えへへ。 そんなナイトも好きだよ……」

 

 俺の耳元で楓はそう囁いた。

 やめろよ、照れるだろ。

 

 「さあて、殺りますかな」

 

 脱がされ放置されていた自身の服を着直し、俺は堂々と立ち上がる。

 そして、兵士が脱ぎ捨てた武装の拳銃の弾を手に取り俺はにこりと笑いながら兵士たちの頭に向かって投げた。

 兵士たちは何があったのか分からなかっただろう。

 水無月に集中しすぎてて、こちらなんて見ていなかったんだから。

 いや、そもそも考えることなんて出来ないんだった。

 だって、さっき投げた弾で頭が吹っ飛んでるんだからな。

 

 「おっと……軽く投げたつもりだったんだが……」

 「検体01号きゅん!!? いつの間に服を……」

 

 そこかよ、水無月。

 目の前でお前が生み出した兵士たちが無惨に死んだんだから、そっちを気にしろ。

 

 「痛いな……それにしても、痛いな……誰かな……このドスを刺したのはさ!!」

 

 水無月はズボッと自身に刺さっていたドスを乱暴に引き抜き、俺のとなりの空間へと投げつける。

 おそらく見えない楓を狙ったのだろうが、そんなもの俺が見逃すわけないだろう。

 ドスの刃をつかみ取り、俺は水無月の足へ投げ返す。

 当然のこと、水無月は人間であり獣人のような素早さも反射神経も有していない。

 だからこそ、彼は両足をバッサリと切り落とされる事になったのだ。

 

 「あぁぁぁぁぁぁぁんん!!」

 

 まるで喘ぎ声のような悲鳴を上げ、水無月は崩れ落ちていった。

 足からはこれでもかというほどの血があふれでている。

 正直言って、なんだか呆気ないような気もする。

 あの憎くて憎くて追い求めていた怨敵がこうもあっさりと傷を負う光景が、少しだけ信じられなかった。

 

 「あぁぁぁぁぁ、足ぃぃぃぃ足ぃぃぃぃ」

 

 まるで羽のもがれた昆虫のように、バタバタと暴れまわり、血を撒き散らす水無月。

 あの様子だと放っておいても、死ぬはずだろう。

 そんな事を考えていると、光学迷彩装備を外した楓が現れた。

 まあ、ずっと居たんだがな。

 

 「ふぅ……暑い暑い……あの兵士さんたち、よくこんな装備で平気だったな……」

 「楓、怪我はどうだ?痛むか?」

 「あー、首筋の注射器の痕なら大丈夫!! ほら、もう瘡蓋出来始めてるよ」

 

 そう言って楓は俺に首筋を見せるのだった。

 確かに、もう血液は凝血している。

 この分なら、数日中には完治するだろう。

 

 「それにしても水無月博士には驚いたよ。 光学迷彩で拐うなり、いきなり薬で身体の自由を奪うとは……」

 「まあ、声上げた瞬間に師匠と俺が気づくからな……」

 「いやぁ……それにしても……ここまでうまくいくとは思わなかったよ……ナイト」

 「ん?何がだ?」

 「何って……ほら、ナイト……あそこで倒れてる水無月を見てごらん」

 

 そう言って俺は血を撒き散らしていた水無月の方へと目をやった。

 だが、俺はその光景を疑った。

 嘘だと言ってほしかった。

 だって、そこで血を撒き散らしていた足の無い存在は……楓だったのだから。

 

 

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