第20話 待ち合わせ
窓から差す太陽の日が眩しくて私は自然と目を覚ました。
「朝?」
不意に起き上がろうと体を動かすも全身に鈍い痛みが走り、悲痛な声が漏れた。
「イタタ、やっぱり昨日の山登りがこたえてるなぁ」
腰をさすり痛がる私にお母さんが近付いてきた。
「エルヤおはよう。お昼ご飯食べる?ハムエッグあるけど」
「おはようお母さん、ご飯食べるよ」
もうお昼か、流石に昨日は眠るの遅かったしな。でもまぁ予定なんかないし特に困ることも……少し考えてからふと昨日の出来事を思い出した。
そういえばマユリちゃんと遊ぶ約束したんだっけか。
確か時間は3時だったような。待ち合わせ時間を思い出しながら、私は自宅の掛け時計に目を向ける時刻は2時48分を示していた。
「えーもうこんな時間なの!?お母さんったらなんでもっと早く起こしてくれなかったのよ」
私は飛び起きて、急いで寝癖を直して出掛ける支度をはじめた。
「だってエルヤ疲れてそうだったから。別に用事があるわけじゃないでしょ?」
「そ、そうだけど」
怪しまれないために同調してしまったが、これじゃ今から外出するのにどうやって理由をつけよう。
今回は諦めるべきか、大体まだ友達でもない人にそんな必死になって会いに行く必要なんてあるんだろうか。
でもこの機を逃したら私は一生一人ぼっちなような気がする。頭にリップの姿がちらついた。
確かにリップは私の友達ではあるけど、彼は竜だもの、私は同じ人間の友達が欲しい。
私は喉が乾き冷蔵庫を物色していると残り少ないボトルに入った水を見つけた。
これだ!!と思い、ボトルの水をコップに移しかえゴクリと一気に飲み干した。
「お母さん水減ってるから私が井戸まで汲んでくるよ」
私はバッグとその空になったボトルを手に玄関の扉を開いた。
「エルヤ水はお母さん今朝汲んできたばかりなのよ」
私はお母さんの言葉に耳を傾けることなく急いで外へと出た。初めて友達と遊ぶのに遅刻で第一印象を悪くはしたくない。
「エルヤちょっと待ちなさい」
お母さんが窓を開けて走り去る私に叫んだが、遅刻する訳にはいかない私は「お母さんごめんまた後で」と平謝りしてその場を走り去った。
お母さんは私の様子がおかしいと思い私の跡を急いで追いかけた。
それからすぐにマユリちゃんの自宅前に着いた。おそらく時間前には着いたろうけど、マユリちゃんは既に玄関前で私の到着を待っていた。
「ごめんなさい少し待った?」
私は膝に手をつけ上がった息を整えた。
「エルヤちゃん凄い息上がってるけど、大丈夫?」
「うん、これぐらい平気だよ。昨日に比べれば全然」
「昨日?昨日何かあったの?」
「あったけど、まぁ色々ね。あははは」
流石にリップの事は言えないし、私はマユリちゃんの質問を笑って誤魔化した。
跡を追ってきていたお母さんが私を見つけたが、止めに入るわけでもなく私達を見守るように見つめ、そして程無くて家路に戻っていった。
「私にはジョセのような心を許せる友人がいる。エルヤにもそれが必要よね。危険はつきまとうかもしれないけど、リップのいった通り、エルヤを殻に閉じ込めていては彼女がいつになっても幸せになれないわね」
上がった息も収まって、ようやくマユリちゃん向き合うと私は妙に緊張して何を喋っていいか分からなくなった。
ただただマユリちゃんの姿が可愛かった。
黒の髪を三つ編みに2つお下げにして、大きなピンク縁のメガネが印象的だ。大きな垂れ目も相まってとても可愛らしい。
こんなことなら私もこんな地味な服じゃなくちゃんとおめかししたかった。
マユリちゃんの服は鮮やかな黄色のワンピースで、そんな派手な色私は着たことがなく、それが羨ましく思えた。
「それじゃーどこに行きましょうか?」
マユリちゃんにそう言われ私は我に返った。
「そうだねマユリちゃんどこか行きたい所とかある?」
「そうねー……」
2人共考えても一向に答えは出てこない。私は苦笑いをしながらマユリちゃんに言った。
「考えてみれば付近で遊べる所なんて全然ないよね。ここら辺は公園すらないし」
「あっそうだ。お金があればリール村で美味しいお菓子が買えるけど」
「どこの店?」
「リリベル」
その名前を聞いて私はピンときた。
「そこ知ってるよ、この間そこでミルク買ったんだよ」
「あそこのミルク甘くて美味しいわよね」
「そうそう」
まさかマユリちゃんもあの牛乳のことを知ってるとは思わなかった。それからは会話がみるみる内に広がっていった。
「その店に置いてあるアイスクリームがとても美味しいのよ。これから行ってみない?」
マユリちゃんにそう言われ私は行きたい気持ちは山々だったが、手持ちのお金がないために上手く返事を返せないでいた。
「私今お金全くないんだ」
「エルヤちゃん気にしないで私が払ってあげるわよ」
「なんか悪いよ、まだ私達知り合ったばっかりだし」
「そう?ならどこがいいかしらね」
「今の時期なら沢山咲いてるし、お花畑でもいく?」
他に私が知ってる所と言えば花火だけくらいだ。
「お花畑?」
マユリちゃんはポカンとした顔で呟き私は恥ずかしそうに言った。
「やっぱり子供っぽいかな?」
「そんなことないよ、私行ってみたい」
マユリちゃん私の手を掴み目を輝かせて言った。
「良かった、なら行こう」
私達は仲のいい友達のように手を繋ぎながら、お花畑を目指した。




