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その人を初めて見た日。

アリア視点です。

 その日はたまたま散歩をしたい気分で、たまたま友人の所に行こうと思った日だった。

『吸血姫』である私は、悪魔の中でも少し特殊な個体だ。

 食事は必ず生き血を摂取しなければならない代わりに、普通の悪魔では使えない精神系の魔術などが使え、戦闘力が並の悪魔と桁違いなのだ。

 もちろん弱点もあるが、それをものともしない能力を生まれ持つ『吸血姫』は、ほかの悪魔と一線を画す存在とされている。


(さて、と。そろそろ行かなくちゃ。しばらく会ってないけど、アルベール元気かな?)


 友人のアルベールは悪魔達の中で一番強い個体だ。

 悪魔に国や王といったものはないけれど、もし人間達のように国を作っていたら絶対王になっていただろう。悪魔は完全実力主義だし。

 一度だけアルベールと試しに戦ってみたことがあったが、これまで勝てなかった悪魔など一人もいなかった私がアルベールにだけは勝てなかった。その試合からアルベールは一層悪魔達から恐れられるようになった気がする。


「あ、いたいた。アルベー……ル?」


 空を飛んでアルベールが住んでいる森に行ったら、彼と、知らない人間の女の人がいた。空から声をかけようとしたら家から二人が出てきたので、慌てて地上に降りて陰から観察していた。


(……もしかして、アルベールの番? 人間だったの?)


 アルベールはあまり人に興味を示さない。悪魔に対してもそうなのだから、人間なんて普通は眼中にも全く入っていないのだろう。

 そんな彼が、人間の女の人を家に連れてきて、一緒に散歩をして、一緒に話している。

 これはもうほぼ確実に番だな、と思った私は、少しイタズラをしてみることにした。

 上空に戻ってから勢いよく地面に着地する。アルベールはさほど驚いていなかったけれど、女の人は……


(っておいおい無視しないでよー)


 驚いた女の人を私から守るために、アルベールが女の人を抱きしめていた。しかもなでなで付きで。

 しばらくしたら終わるかと思い放置していたら、一向に終わる気配が見えなかった。


「……あのー、無視しないでー」


 ……なんで私が二人に気づいてもらうように言ってるんだろ。っと、そうだ。いいこと思い付いた。

 私は女の人に『魅了』をかけてみることにした。もちろん弱めで。

『魅了』をかけると、女の人の目がわずかにぼんやりとして私のほうに近づいてきた。そして、女の人の手が私の頬に伸びてきた。


(あれ? この人すごく可愛い……)


 どこがと聞かれたら説明するのは難しいけれど、とても可愛い人だな……と、『魅了』をかけてるのは私なのにぼんやりと思っていた。


「……! シェリル!」

「え……?」


 ……あ、アルベール来ちゃった。って、隙あらばすぐ抱き着くんだなあ。

 女の人にかけた『魅了』をアルベールがあっという間に解いていく。それも普通の悪魔はできないけど。アルベールは色々と規格外だ。


「……お前、何しに来た?」


 ……あ、これは、やばいかも。目がマジのやつだ。


「お前、僕のに『魅了』かけるってどういうことだよ?」

「どうもこうも、ちょっと気になっただけ……って、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!」


 アルベールからものすごい殺気を向けられたので慌てて土下座するぐらいの勢いで謝り倒した。女の人の観察とか今はしてる場合じゃないとにかく謝ろう。


「アル、あんまりいじめちゃダメだよ」


 ふと声の主を見てみると、不思議そうな表情の女の人がアルベールをなだめていた。


(うん、やっぱり可愛い。というか、なんだかあったかい……なんだろ……?)


 あのアルベールが番を得たというのも驚いたけれど、今の私はそれ以上のとても暖かい感情に包まれていた。






読んでくださりありがとうございました。

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