ムロに総攻撃
ムロは、ゼオとアギトによって、何度も転がされ、もがいていた。そのもがきが功を奏して、ゼオに最後の樋爪の破壊させないでいたので、よけい暴れるような格好になった。負傷者どころか、戦死者が出だしたので、後ろの守りをサラマンダー将軍に任せて先方隊を後退させ、バロン本隊も突撃していた。
ナマズクラゲは駆逐した。龍王が、ゼオに報告する。
「親父、ナマズクラゲを駆逐した。護岸の憂いは、ない」
「いい知らせだ。こっちは、まだだ。ムロの奴、突撃は、できなくなったが、替りにもがくように暴れる」
「仕方ない。動けなくして貰わないと、集中攻撃の意味もない」
「ピピッ」
ラヴィが、また、警告音を発した。これで、10度目だ。
「すまん、残った牙に、また、誰かやられた。もう少し待ってくれ」
「吉報を待つ」
ラヴィは、先読みして警告できる分、戦死者を感じてしまう。
「おじいちゃん、アリーシャに戻ってもらおうよ」
「だめだ、アリーシャが居ないと、シャーンは、戦えない。見ろ、赤目を逃がすことになるぞ」
赤目が、東のハガラ将軍の足止めに死に物狂いで暴れていた。上空から何匹ものワイバーン達が落ちて行く。それをアリーシャが、コウ・フウ〈抗風〉で支え、救護に間に合わせていた。
「ごめんなさい」
ラヴィは、アリーシャも手いっぱいだと思う。たった3匹の召喚獣で、全員を救うのは無理だ。
・ノーマ、直接、ムロの足を凍らせられないの
・さっき試したわ。ムロは、火を吐くのよ。足を凍らせる時間より早く回復してる
ヒロは、飛びムカデと対峙している。飛びムカデは、飛行ができるため、逃がす確率が高い。ヒロをこちらに呼ぶことはできない。
ラヴィが、決死の覚悟を決めた。
「おじいちゃん、私のプロテクトアタック見てたでしょ」
「どうした、ラヴィ」
「ヒロとしかやったことないんだけど、おじいちゃんを、この、プロテクトフィールドで包んで見せる。だから、右の後ろ脚に突っ込もう」
「やるか!」
ゼオがニヤッと笑う。ゼオは、ヒロの二倍の大きさ。ラヴィは、プロテクトフィールドを広げることに集中した。ちょっとでも、フィールドに穴があれば、そこに打撃が通ってしまう。
「お願い、おじいちゃん。リフレクションプロテクトアタック」
ラヴィが、プロテクトの効果範囲を広げた。ゼオの全身も、このフィールドに包まれる。いまでは、ゼオもラヴィも白く光彩がにじむように光っていた。ヒロの方は、赤目への追撃の手が止まりガクッとする。ヒロのMPが、急激に減っていく。アリーシャが、これを補った。
「任せろ」
ゼオは、両手の拳をガシンと合わせ、電撃を最大にした。ゼオのカイザーナックルに電撃が溜まっていく。
二人は、とんでもないスピードで、戦場を駆け抜けた。
「雷撃掌」
そう言って両手に電撃をまとった。
「剛龍撃」
ゼオとラヴィは、雷の塊になってムロの右後ろ足に直撃した。
ガゴン、バリバリバリ
最初に蹄が砕ける音がした。続いて、特大の電撃の玉が、そこを中心に広がった。その傷跡に突っ込んでいく雷竜兵たち。その中にバロンもいた。
ファーーーーーーー、ウーーーーーーーン
ノーマを追って仰け反っていたムロが、悲鳴を上げた。
ムロが倒れる。
その辺りにいる兵士たちが、必死になって逃げる。
ドオーーーン
とんでもない土煙が上がる。全員ムロの下敷きには、ならなかったものの、その土煙に巻き込まれて大地にたたきつけられた。
「ラヴィ?」
「大丈夫、今度は、誰も死んでいないよ」
急におとなしくなったラヴィをゼオが心配した。ゼオは、もう、光彩をにじませていない。しかし、ラヴィは、まだ薄く光っていた。
その時、ヒロには、ラヴィの召喚獣ゲージが溜まった音が聞こえていた。パパパパーーーーンとホルンが鳴る。
「ラヴィ、シャイニングバースト。後ろ足を狙え。ムロを動けなくするんだ」
これを聞いたノーマと、アリーシャが、緊急通達する。
「全員、この場から退避」
バロンを始め、各々の場所で、緊急退避命令が出された。全員が、必死でその場を離れる。動けない者は、各々の場所で、動けるものが拾っていく。その中にホップとミリアの姿を見ることが出来た。二人は、何人も負傷兵を救っていた。
「おじいちゃん、下がってて」
ゼオが、上空に逃げる。
ギャーーーーーーーーーーーー
ラヴィが吠える。ラヴィから特大の炎が舞い上がった。
ラヴィが、体長30メートルものワイバーンのような姿になった。これは、父親の体長を超える。その姿は、絶対的な力の象徴だ。空に、聖絶の炎を吐く怪物が現れた。
バハムートだ。
龍族でも、一部の者しか見たことがない伝説の龍。
ドギャオーーーーーーン
ラヴィの前身が光り、口とも羽ともなく、全身から、シャイニングバーストが発射された。
「ゴギャガ、ゴォオーーーーーーーン」
もう、ラヴィの姿を見ることが出来る者はいない。シャイニングバーストは、超高温の炎で、遠目には、レーザー光線のように見える。すでにラヴィは、光点のようにしか見えなくなっていた。なのに、ゼオとサイモンは、必死になって、その光点を目に焼き付ける。
ムロの後ろ足辺りに光の柱が立つ。ガゴ、ガゴン、ガゴンと、その光の柱は、ムロの足を焼き切るまで止まらない。
ファウーーーーーゥアーーーーーーー
右後ろ足が蒸発するように、切断された。ムロが意識を失う。ムロの弱点が火だったせいもあるが、ラヴィは、レベル100を超え、召喚獣攻撃が特段強くなっていた。
サイモンが、父親の顔から、龍王の顔に戻る。
「火流連弾」
それを側にいる千竜隊のコウ軍師が、復唱した。飛びムカデと戦っているバーダ兄弟は、コウ軍師の息子たち。
「火流連弾」
タオ平原の四方から、ワイバーン飛翔隊が前進。火流弾の雨が、ムロに降り注ぐ。ムロから、白い蒸気の雲が、永遠と上がった。
「よし」と、アギトが手の平を拳でたたいた。




